リーダーシップは『現場力』で決まる

リーダーシップは『現場力』で決まる

はじめに

今日は経営の3大要素の1つと言われる「現場力」についてお話させていただきます。

まず、経営の3大要素ですが下記の3点になります。
要素①:なぜこの会社が存在するのかという「ビジョン」
要素②:どのような価値を生み出すかという「戦略」
要素③:価値をどのように生むかという「オペレーション」

とりわけ大事なのが③のオペレーションの層、つまり、「現場力」になります。

戦略はある意味、容易に他社の成功を真似することができるかもしれませんが、戦略は寿命が短く、市場はすぐに変容していきます。様々な日本の企業・組織が中期経営計画を策定しなくなってきているのもこの市場の変化のスピードが起因しているかもしれません。戦略は陳腐化しやすいのです。

しかし、現場力は「(組織の)能力」であり、簡単には真似できません。現場力こそがその会社のコアであり、コアに投資をしない組織がその企業価値を上げていくことは困難です。

現場力の有名な例として「富士フィルム」の事例があるので見ていきましょう。

富士フイルムの事例

昔の写真は写真フィルムで撮られており、デジタルカメラが普及するとフィルムの需要は激減していきました。富士フィルムは写真フィルムのコア商品の需要縮小という創業以来の危機に瀕したわけです。

そこで着目したのが『コラーゲン』。写真フィルムの主成分は実はコラーゲンであり、この技術と開発における組織の現場力を化粧品開発に活かして起死回生を狙いました。

他にもフィルムの色褪せを防ぐ抗酸化技術や、写真用粒子の細かな機能や安定性を高めるナノテクノジーが化粧品開発に応用できることが分かりました。

現場力があったからこそ、市場の変容がある中でも新規ビジネスへのコア技術・組織の転用がかなった事例です。

逆に言えば、いくら新規ビジネスを始めようともオペレーション、つまり現場力がなければオペレーションが滞り、サービス提供の際、オペレーション棄損により顧客からの信頼を失う可能性があり、アイディアだけで終わってしまう危険性があります。労働集約型のモデルである場合は特にです。

では、現場力の中身を見ていきましょう。

現場力の条件

現場力の条件は3点です。
条件①:自ら問題を発見し、解決する力。
条件②:全員参加の組織能力であり、点ではなく面の力。
条件③:経済的価値を生むことのできる独自の優位性。

さらに、キーワードとして「問題」と「改善」が挙げられます。

問題のない会社は存在しません。その問題を隠すことなく向き合い、改善して成長の『てこ』にすることが部門運営や経営上、とても重要になります。陳腐化された言葉ですが、改善の積み重ねが重要ですね。積み重ねれば積み重ねるほど他社が容易に真似できない独自の強みの創出になります。

では、この問題解決に求められるものは何でしょうか。

問題解決に求められるもの

解決のためには、問題の情報共有だけではなく共通認識まで高めなければなりません。

そのためには対話が求められ、コミュニケーションを重ね、組織密度を上げる必要があります。そうすることによって情報の認識の温度差はなくしていかなければいけません。

しかし、定期的な会議での情報共有だけでは共通認識を持つことは困難です。

業務執行に関わる人(執行に関わる責任者クラスからメンバーまで)は双方向で対話を通して、状況を把握していく必要があります。報告形式など一方通行で情報を待っていて、報告に対して些末な指摘を繰り返すだけでは問題解決には繋がりません。

そのうち、報告する側の課題提起に関わる負荷から、情報が出づらい組織へとなっていきます(対処を諦める組織への変容)。

ビジネスのブレイクスルーの答えは泥臭い現場にこそあります。事業執行の責任者は部下の報告を受け身で待つのではなく、また、部下は上司が何かをしてくれるのを受け身で待つのではなく、自ら能動的に部下の現場を知る努力、上司の状況を知る努力、共通認識を高める努力を上司・部下の双方向で取る必要があります。

共通認識がないと論点ズレが起こり、意味のない些末な指摘の応酬となってしまいます。現状の改善は一見地味に見えますし、「時間がかかる」「投資対効果」が不明という考えも持たれやすいですが、新規ビジネスを構築する際もオペレーションの「現場力」が成功の可否の大きなファクターとなります。特に労働集約型のモデルにおいては。

だからこそ、共通認識としての「現場力」を知る必要があるのです。

組織の革新

改善による進化を3年続ければ組織の”くせ”になります。そして、いつかブレークスルーが生まれ、組織が革新されます。いきなり革新を求めてもできるものではありません。複数年にも渡る継続した進化の延長上にあるのです。

いくつもの問題解決の現場にいて分かったことは、職位職責に関係なく、現場力を高めるためのアプローチが上位職者、メンバーの双方に必要であり、その点を分かって解決に動いた組織がビジネスの現場において勝つということです。この点を軽視した時点で組織の衰退が始まってしまいます。

現場の皆さんの仕事こそが、その組織のコアであり、「現場力」になります。いかなる事業環境であろうとも「現場力」を高める改善のエンジンを緩めず、最後まで行なうことが、先行き不透明な市場環境における事業継続の最善のアプローチであることは多くの事例からも学ぶべきところだと考えています。

 

※本記事は、2021年7月22日に投稿された記事のリメイク版です。