「自分らしさ」が大切!オーセンティック・リーダーシップとは?

「自分らしさ」が大切!オーセンティック・リーダーシップとは?

ライフスタイルの多様化は、多様なタイプのリーダーを生み出しました。「リーダーシップ スタイル」とネットで検索すれば、様々なリーダーシップスタイルとノウハウが紹介されています。

そんな中、「オーセンティック・リーダーシップ」つまり「自分らしい」リーダーシップの在り方に今注目が集まっています。何かのスタイルに自分を当てはめる前に、まず「自分らしさ」を知ってさらけ出し、はっきりした指針を持つことが重要である、という考えです。

今回はこの「オーセンティック・リーダーシップ」についてご紹介します。

1.自分を知る

リーダーシップのスタイルは、スポーツでいう「戦術」です。ディフェンス型のプレイヤーがオフェンス型の戦術を取っても、自分の力や技術を発揮することはできません。これは当たり前のことなのですが、リーダーシップの分野では長らくリーダーシップのスタイルそのものやノウハウに焦点が置かれ、個性や自分を見い出すことが置き去りにされてきました。そのため、「リーダーとはこうあるべき」という姿が提示されると、その形に自分自身を作ろうとしてきたのです。
 
「本当の自分」はどういう人間なのか。何が好きで、何に影響を受け、どんな成功体験と失敗体験があるのか。自分の価値観の根本はどこから作られているのか。

自分の内面を探るのはタフな作業ですが、自己認識が高まるほど私たちは深い充足感と多くの気付きを得ます。自分自身の取り扱い方を自分がよく知っておくことで、困難な状況にも柔軟に対応できるようになる効果もあります。

2.自分をさらけ出す

「自分らしさ」を見せることのメリットはなんでしょうか?

チームスポーツでは味方の動きが分かるほど自分が動きやすく、良いプレーをすることができます。積極的にお互いの思っていることを話すことで信頼感が生まれ、良いチームワークに繋がります。

それと同じように、リーダーが自分を分かりやすく見せれば、チームのメンバーは自分の立ち位置とフォローすべきところがはっきりと分かります。

私たちは日常の中で表面的に取り繕って接してくる人と、自然体で接してくる人を直感的に見分けています。そして、自然体でいる人、自分の弱みも見せる人の方により信頼と親近感を抱きます。自分をさらけ出すことがチームの絆とパフォーマンスの向上をもたらすのです。

3.自分の指針を作る

もう一つお伝えしたいことは自分の指針を作ることについてです。

私たちを取り巻く時代と環境は絶えず変化しています。スマートフォンの台頭によりコミュニケーションの在り方やライフスタイルまでもが一変しました。私たちは大きな環境と時代の変化に対して、自分を適応させていこうとします。しかし、この時自分自身の指針があやふやなままだと、その大きな変化についていけないか、状況に飲み込まれてしまうのです。

オーセンティック・リーダーシップの提唱者であるビル・ジョージ氏は、本物のリーダーになるためには「内なる指針(=羅針盤)」を持つことであると説いて、それを「True North(羅針盤上の真の北)」と表現しています。そして等身大の自分を認めつつ、失敗や苦痛も経験し、学びや気付きを得て、自分をより良く変化させていく学習能力とそのプロセスを大切にしていくことが自分らしさに繋がるとしています。

4.オーセンティック・リーダーシップの事例

オーセンティック・リーダーシップの事例を2つご紹介します。

スターバックスの立役者ハワード・シュルツ氏は、「父が誇りを持って働ける会社」を作ることを目指し、従業員を大切にし健康保険を提供できる会社を作りました。トラック運転手だったハワード・シュルツ氏の父親は、仕事中の怪我で職を失い、健康保険の権利も喪失しました。その後も30以上の職を転々とし不安定な生活しか送れませんでした。父親が生きていた頃は、親を失敗者と捉えて衝突することが多かったそうですが、父親の死後、家族に対して正直であり責任感を持っていた父親を受け入れ、父親のような人が一人でも人生を豊かに生きられる会社を目指しました。それが従業員が尊重され、出身地・肌の色・教育のレベルを問わないスターバックスの文化や価値の形成になっていきました。

聖書は意外にもバラエティ豊かなオーセンティック・リーダーシップを発揮した人物たちの宝庫です。例えば、ダビデ王は8人兄弟の末っ子で、大預言者サムエルが家に訪問した時には紹介もされませんでした。体も小さく、羊ばかり追いかけていて、到底預言者様に見せられる者ではないと親が思っていたからです。しかし、サムエルはダビデを神の選んだ王だと言いました。羊の世話で人の管理を学び、狼を追い払うことで勇敢さが培われていたのです。信仰者としての神への絶対的な愛と忠誠に加え、管理能力と勇敢さという個性を備えたダビデは、イスラエルという小国が大国に勝利していく原動力になったのです。実は恋愛関係で失敗もあり、真摯に反省する姿まで聖書に描かれています。

まとめ

「自分らしさ」は誰かが定義するものではなく、自分しか築き上げていくことのできない自分だけのものです。

私自身3年前に大きな挫折をしましたが、実はそれが今の自分を前に進んでいかせる原動力になっています。空気を読み過ぎて息苦しかった自分に気付き、思考パターンを研究していくことで「人は人、自分は自分」と線を引けるようになり、ずいぶん楽になりました。(少しドライになったかもしれませんけれど…)

人はいくつになっても変化し、磨いていくことができますし、それを実感できた時は嬉しいものです。世界に一つだけの「自分らしさ」が、よりあなたを輝かせていくことを願います。

【参考文献】
オーセンティック・リーダーシップ(2019年,ハーバード・ビジネスレビュー編集部編 ダイヤモンド社)
会議の生産性を高める実践パワーファシリテーション(2019年,楠本和矢著,株式会社すばる舎)
スタバCEOが”惨めな父”を受け入れるまで ハワード・シュルツと父親の物語(Bill George著,PRESIDENT,2017年12月4日号)
True North リーダーたちの羅針盤 ―自分らしさを「つらぬき」結果を出す―(2017年,Bill George著,監訳:小川 孔輔,訳:林麻矢,生産性出版)


※本記事は2019年12月2日に投稿された記事のリメイク版になります。