第四週 HSPが自信を失わずにリーダーシップを発揮する方法<後半>

第四週 HSPが自信を失わずにリーダーシップを発揮する方法<後半>

8月のテーマ「自信」
自信とは「自分の価値・能力を信ずること。自己を信頼する心」です。皆さんは自分の価値・能力をどれくらい信じていますか?今月は、自信についての記事をお送りします。

はじめに

前半では、HSPの特徴とHSPがリーダーになった時に起こりうることについてご紹介しました。

後半は、繊細なHSPだからこそ担える役割、HSPが自信を失いやすい環境について、そしてHSPがリーダーとして活躍する上でのポイントをお伝えしたいと思います。

HSPは「気質」であり「役割」

前半でも触れた通り、HSPは生まれ持った「気質」です。先天的に脳内の「扁桃体」という部位が非HSPに比べて反応しやすく、より不安や警戒心を生させるホルモンが分泌されやすいのがHSPですので、その脳の働きに起因する気質は変わらないと思っていただくのが良いでしょう。つまり「繊細で傷つきやすい自分を変えて、鈍感になる」ことを目指して努力しても、現実的には難しいのです。むしろ、HSPという気質を活かして社会のために何ができるか、どんな役割を担えるかを考えることの方が、HSPにとってずっと有益だと思います。

アーロン博士の考察「HSPの役割」

「HSPの役割」とは何でしょうか。HSPの提唱者アーロン博士が興味深い考察をしています。

昔から社会の中で一定数存在していたHSPは、より未開の時代には部族同士、村同士、国同士の戦が起こった時、裏で支える参謀的な役割を果たしていたそうです。

非HSPは剣と剣、槍と槍とがぶつかり合うような肉弾戦に強く、戦地で勇敢に戦う軍人となりました。一方、HSPは現地戦には参加せず軍事戦略を練り、神事を司り、戦地への物資の供給や医療、利害の調整、教育などの分野で役割を果たしてきたと言うのです。戦では最前線で戦う軍人も後方部隊も両方必要なため、非HSPとHSPが上手く役割を分担できていたと言えます。

この考察は、今の時代を生きる私たちにも参考になるのではないでしょうか。

私自身の事例を紹介します。私は20代で保険の営業職を経験しました。それは、ちょうどビジネスという「戦」の世界に出かけたようなものだと思いますが、ノルマに追われるビジネスの最前線での戦いは、強度のHSPの私にとっては刺激が強すぎて辛いものがありました。営業の仕事を選んだ理由が「(HSP的な)自分を変えて成長するため」だったので、最大限の研究と努力をして何とか部門のトップセールスを記録したものの、精神的な消耗が激しすぎて3年未満で退社してしまいました。

しかし、その後、営業職時代の研究の結果を書籍にまとめて出版する機会をいただいたり、セールスに関する細かいスキル・ノウハウのコンテンツをまとめて教育研修をさせていただいたり、ビジネスという戦を支える立場、より参謀的な「裏方」に回ってからは、劇的にストレスが減り楽に仕事ができるようになりました。

つまり、HSPは非HSPの世界で上を目指すよりも、HSPにしかできない役割をどう担うかが大切になってくる思います。具体的には、裏方として支える、全体を俯瞰して戦略を立てる、仕組みを作る、センスを生かす、調整するなどの役割を担うことがお勧めです。ここでご注意いただきたいのは、お勧めできる「役割」は「業界」そのものではないので、戦略を考えるためにコンサルティング業界に入るとか、センスを生かすためにデザイン業界に転職するなど勤務先の業界を変えるということではなく、自分の貢献の仕方として好ましい方法としてご理解ください。

合わない環境がHSPの自信を失わせる

HSPは環境選びも大切です。HSPに合わない環境を一言で表現すると、「軍隊的」な環境です。この時代に当てはめて具体的に考えてみると、
・怒鳴り声が鳴り響くような殺伐とした環境
・年功序列や上下関係が厳しい体育会的な環境
・長時間労働や残業が当たり前のブラックな環境
・理不尽なことがまかり通るルールと秩序のない環境
・派閥争い、学歴争いなどの力関係が働く環境

などが挙げられます。もちろんこれらはHSPに限らず、「無理」と思う人が多いかもしれませんが、特にHSPはこのような環境で心身が疲れて潰れてしまう可能性があるので注意が必要です。

さらに、こういった環境でHSPがリーダーになると、軍隊の長のような役割を担うことへの負担、部下に仕事を任せることの負担、部下からなめられたり逆にパワハラと訴えられることへの負担、忙しすぎて精神的に余裕がなくなっている自分への嫌悪感、などが重なる可能性が高く、結果的に自信を失ってしまうことになりかねません。

HSPは自分に合う環境に行けることが何よりですが、まずは合わない環境を避けるところから始めることも良いでしょう。自信を失った状態ではリーダーシップはおろか通常の業務をこなすことも難しいからです。

HSPがリーダーとして活躍するポイント

上記のことも踏まえてHSPがリーダーになった時に意識してほしいポイントを挙げてみます。

必ず「1人の時間」「休める時間」を確保する

前半でもお伝えした通り、HSPは能力的な限界よりも精神的な限界を先に迎えることが多いです。刺激過多によって高ぶった精神を鎮めて気力を回復するには、自己対話し、十分な睡眠をとり、リラックスもして充電するより他にありません。HSPは自分のための時間を持つことが仕事、義務だと思ってこそ高い生産性を維持できるのです。

一緒に仕事をするメンバーを選ぶ(選べる環境を選ぶ)

こちらは企業にお勤めの方はなかなか難しいかもしれませんが、一緒にプロジェクトを進めるメンバーや組織の中に、「消耗する誰かがいないこと」も重要なポイントになります。

特に人との距離感が変な人、マウンティングする人、依存的な人、卑屈な人、マイペース過ぎる人と接すると、HSPは相当のエネルギーを吸い取られる結果になります。こういった人たちと組まないことができればそれに越したことはありませんが、そうできない場合は、チーム全体の人材のバランスを考慮して自分がリーダーという役割を引き受けられるかどうか検討することも必要でしょう。その点、フリーランスや独立自営業の方は、プロの業者さんとお付き合いすることが多いので、人間関係によるストレスは軽減されます。

精神的な満足感を重視する

アーロン博士の調査によると、HSPとして活躍するリーダーには、物質的な報酬より精神的な報酬を重視する傾向があるそうです。自分がやっていることに社会的意義があるし、自分以外の人たちの幸せに役立てていると思えることが、HSPが繊細さを乗り越えてでもリーダーシップを発揮したいと思える原動力になるのです。

まとめ

2回に分けてHSPついてお伝えしてきました。HSPがHSPの強みを発揮して生きていくためには、自分についてよく知り自分の扱い方について研究することが不可欠です。「私は繊細だから気を遣って」と周りに期待するよりも、お伝えしたポイントを心に留めていただいて、決して自信を失わずにHSPらしく活躍される方々が増えることを願っています。

<参考>
エレイン・アーロン博士のウェブサイト【The Highly Sensitive Person】:http://hspjk.life.coocan.jp/index.html