あなたの「誠実さ」が狙われている。組織の理不尽と搾取から身を守るための処方箋
- 2025.11.21
- 自分の価値
組織を実質的に支える人の価値
リーダーシップドックを読んでくださる読者の方々の中には、高い向上心を持ち、「どうしたら組織も、自分も良くなるか」を日々考え、泥臭い努力を続けている方が多いのではないでしょうか。
「仕事で成果を上げたい」「評価されたい」という気持ちは誰しも持つものですが、皆さんの中には、そうした損得勘定の枠を超えて動いている方もいらっしゃるはずです。
「残業代がつかなくても、今これをやっておいた方がチームのためになるから」
「プロジェクトを円滑に進めるために、自分が泥をかぶろう」
誰が見ていなくても、組織のために、仲間のために汗をかく。 なぜ、自分の損得を超えて仕事ができるのでしょうか?
その原動力は、人一倍強い責任感であったり、プロとしての倫理観、あるいは組織に対する深いエンゲージメント(忠誠心)でしょう。「ここで学べることは全て学びたい」という成長意欲や、「困っている人を助けたい」という純粋な善良さが、あなたを突き動かしているのかもしれません。
こういった「言われた以上のこと(+α)」ができる人材は、組織にとって本来「宝」です。もしあなたがそうであるなら、ご自身のその気質を、どうか誇りに思ってください。
しかし、ここで警鐘を鳴らさせてください。 あなたのその向上心、忠誠心、善良さを「利用」し、必要以上の負担を強いて使い潰そうとする人が現れたら、要注意です。
悲しいことですが、あなたの「仕事熱心さ」や「誠実さ」につけ込み、本来あなたが負う必要のない業務や責任を、さも当然のように押し付けてくる人間は確かに存在します。
「聖域」でも起こる理不尽の構造
実は、私(編集部員)が所属する「教会」という場所でも、これと全く同じ現象が起こります。むしろ、「奉仕」「愛」という言葉がある分、会社よりも厄介かもしれません。
教会や仲間のために善い行いをしようとする人がいると、周囲は無意識に甘え始めます。「あの人はやってくれるから」「あの人に任せておけば安心だ」と。そして、「本当に助かります!神様が共にされていますね!感謝します!」という“感謝の呪縛”で縛りつけ、本来その人が担う必要のない役割まで雪だるま式に押し付けていくのです。
そこにあるのは、悪意ばかりではありません。「自信がないから出来る人にやってほしい」という依存心の場合もあります。しかし中には、熱心に頑張る人を見て、「自分の利益のために、あの人の情熱を利用してやろう」という身勝手な計算をする人も、想像以上に多いのです。
私自身、過去に唖然とする経験をしました。ある信徒の方から、真顔でこう言われたのです。 「私はこれから、神様のために芸術活動を極めます。つきましては、生活の糧を得るために健康食品のビジネスを始めます。あなたは私の傘下の販売員になって、私の代わりに頑張ってくれませんか?」
……耳を疑いました。「私が芸術で神の栄光を現す間、あなたは私のために稼いでくれ」という、あまりに身勝手な人生計画に、私が都合よく組み込まれていたのです。もちろん丁重にお断りしましたが、頑張る人、断らなさそうな人ほど、こうした「謎の思惑」の標的にされやすいのだと痛感しました。
あなたの「忠誠心」は誰に向けられたものか?
会社であっても教会であっても、構造は同じです。 本来、あなたの忠誠心や情熱は、その先にある「高い理念」や「目標」に向けられているはずです。
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会社の図式: あなたは「会社の理念・ビジョン(▲)」を見て頑張っている。 しかし、その中間にいる上司や同僚(◎)が、あたかも自分が▲であるかのように振る舞い、あなたを私物化する。

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教会の図式: あなたは「神様・御心(▲)」を見て奉仕している。 しかし、中間にいる人間(◎)が、「神のため」という言葉を使いながら、あなたを自分の都合のために利用する。

あなたが本来ささげるべき相手(会社ならビジョン、教会なら神)とあなたの間に割り込んで、そのエネルギーを横取り(ピンハネ)する人たちがいるのです。
「違和感」は正しいアラートである
聖書には、人間一人ひとりは極めて尊く、価値のある存在であり、「私たちの所有者は、人間ではなく神様である」と書かれています。 これはビジネス的に言い換えるなら、あなたの才能、時間、エネルギーという「リソース」の真のオーナー(株主)は、あなたの上司でも、依存してくる同僚でもない、ということです。
もし今、「頑張っているのになぜか苦しい」「いいように使われている気がする」という違和感があるのなら、一度立ち止まって考えてみてください。
「私の貴重なリソースは、誰のために、何のために使われるべきなのか?」
あなたを不当に利用しようとする人のために、あなたの命(時間)をすり減らすことは、真のオーナー(神様、あるいはあなた自身の良心)に対する「誠実」ではありません。むしろ、不当な要求には「No」と言うことこそが、あなたに与えられた価値を守るための、正しい管理責任なのです。
搾取しようとする人は、あなたが断ると「冷たい」「無責任だ」と言って罪悪感を刺激してくるかもしれません。しかし、その罪悪感は偽物です。
聖書にはこうあります。 「隠れたところで行なう義を、父(神)は見ておられる」
あなたが誰かの評価のためではなく、純粋な良心に従って行った努力や、逆に「これ以上は安売りしない」と決めた勇気ある決断。 誰も見ていなくても、天はそれを見ています。
あなたの誠実さは、それを搾取する人のためのものではありません。 あなたの忠誠心が、正しく価値あるもののために用いられるよう、勇気を持って「線」を引いてください。天は、そんなあなたの味方であり、最強の後ろ盾なのですから。
【チェックリスト】あなたの忠誠心は「搾取」されていませんか?
以下の項目のうち、3つ以上当てはまる場合、あなたの誠実さが「組織」や「特定の人」に都合よく利用されている可能性が高いです。一度立ち止まって、現状を見つめ直してみてください。
- □ 「君にしか頼めない」の罠 本来は上司や他の同僚がやるべき仕事を、「君ならできる」「信頼している」という言葉と共に任され、常態化している。
- □ 「報酬」が「感謝」のみ 成果を出しても、待遇や給与、具体的な評価には反映されず、「ありがとう」「素晴らしい」「期待している」という精神的な報酬だけで済まされている。
- □ 罪悪感のマネジメント 無理な要求を断ろうとすると、「冷たい」「がっかりした」「チーム(仲間)だと思っていたのに」と、罪悪感を刺激するような態度を取られる。
- □ 一方通行の献身 あなたが相手のために無理をすることはあっても、あなたが困っている時に、相手が同じ熱量で助けてくれることはない。
- □ 大義名分による思考停止 「会社(組織)のため」「お客様のため」「ビジョン実現(あるいは宣教)のため」という大きな目標が、個人の犠牲や長時間労働を正当化する「免罪符」になっている。
- □ プライベートの浸食 休日や業務時間外でも連絡が来るのが当たり前で、即レスしないと「やる気がない」とみなされる空気がある。
- □ 成長という名の労働 「勉強になるから」「将来のためになるから」と言われ、本来対価が支払われるべき業務を無償(または不当に低い対価)で引き受けている。
いくつ当てはまりましたか?
もし多く当てはまるなら、それはあなたの能力が不足しているからではありません。むしろ、あなたの「善良さ」が大きすぎるがゆえに、ターゲットにされているのです。
「No」と言うことは、ワガママではありません。それは、神様から預かったあなた自身の尊厳とリソースを、守るべき境界線(バウンダリー)なのです。
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