「ウェット」な日本社会で「ドライ」な人がリーダーになる方法

「ウェット」な日本社会で「ドライ」な人がリーダーになる方法

 日本人同士の人間関係について、「ウェット」と表現されることがあります。この場合のウェットは「情にもろい」「義理人情に厚い」という意味です。ウェットの反対は「ドライ」です。ドライな人間関係と言えば「冷淡」「割り切っている」関係ということになります。もちろん、日本人全員がウェットな人間関係を望んでいるわけではないと思いますが、もし読者の皆様が

「干渉が強くて居心地がわるい?!」

「人間関係の距離感が近すぎてしんどい!」

と色々なコミュニティーで感じるとしたら、相対的に「ドライ」な方なのかもしれません。今回は、ウェットと言われる日本社会の中で、どうしたらドライな人が活躍し指導力を発揮できるか、考えてみたいと思います。

1)ドライな人は少数派?

 下の図は、日本、韓国、英国人の営業人材を対象に、気質の分析調査をした結果をグラフに表したものです。平均値で差が認められる指標の一つが、「親愛性」です。(セールスアセスメントテストより)

 親愛性は「平和にすごしたい」「嫌われたくない」という気持ちが強く働く気質で、高い人ほど人間関係がウェットになりがちです。他人の目を必要以上に気にするのも特徴の1つでしょう。

 日本にも親愛性が低い方々がいらっしゃいますが、数値から見ても少数派です。そういうドライな人たちは、周りの人たちと仲良くしたくないわけではないけど周囲からの評価が気にならないので、結果としてマイペースになります。それが「冷たい」「割り切っている」という風に評価されたりしますが、近すぎる人間関係に馴染めないので、ますます距離を置いてしまうのです。

2)ドライな人が生活しやすい環境

 そんなドライな人は地方都市よりも、総じて他人に無関心な都会の方が馴染みやすいと思います。また、感覚が日本人離れしていることが多いので、日系企業より外資系企業の方が居心地が良かったりします。自分が伸び伸びできる環境を自由に選べるように、計画的に能力、スキル、知識を向上させることも、ドライな人にとっては必要なことなのかもしれません。

3)ドライな人が組織のリーダーになった場合

 ドライな人が日本の組織でリーダーに抜擢された場合は、「ウェットな関係に馴染めない!」と言って自ら距離を置くことはできません。なぜかというと、日本の組織ではフォロワー(従う人)の中に親愛性が高い人が多いことが予想されるからです。「リーダーからどう思われているのか?」をすごく気にするフォロワー達をリーダーが避けていたら、人間関係がギクシャクして仕事にならないことは必至です。

 ではどうしたらよいでしょうか?

 ポイントになるのは、疎外感を感じさせない「声掛け」、そして「気が利くあなたは素晴らしい」という「承認」です。

 親愛性が高い人は、「他人に喜んでもらうことが自分の幸せ」と感じることが多いので、例えば「この仕事を片付けてくれて助かったよ。」「難しい仕事を黙々とやってくれて本当にありがとう。」などの労いの言葉を聞くだけで、仕事に対するモチベーションも組織への忠誠心も上がったりします。反対に、リーダーからの声掛けがないと、「自分の頑張りや努力を分かってくれてない?」と疎外感を持ちやすいです。ドライな人からすると「え?!そんなことで疎外感を持つ?」と思うようなポイントで疎外感を持つため、本当に注意が必要です。

 そして、配慮と気遣いがよくできるフォロワーに対しては、そのことを承認し感謝することが大切です。親愛性が高い人は総じて気が利きますが、同時に「この人は気が利かない」ということもすぐに見破ってしまいます。そのため、ドライなリーダーのことも「この人は冷たいな」と見破られ、失望されてしまう可能性もあります。しかし、「自分は気が利かないけどあなたは気が利くからすごい」と認めてもらえると、「自分がリーダーの足りない部分をカバーしよう」という心でついてきてくれるようになったりします。

 一見、業務に関係なさそうな声掛けや承認が、想像以上に意味を持つのがウェットな人間関係で成り立つ組織です。まずは、フォロワーたちの支持を得ることが肝心です。一度、よい人間関係が築けると、ドライな人が得意なこと、例えば業務の線引きや効率化への試みにも協力してくれるようになると思います。

4)最後に

 少数派であるドライな人がウェットな組織を導くのは、一見難しそうに思えるかもしれません。しかし、ドライであるということは、情に流されず物事を判断できる強みを有していることでもあるので、ウェットな組織が発展するために必要な存在にも成り得るのです。上に挙げた声掛けや承認を実践し、心情的な行き違いやトラブルを起こすことなく、リーダーシップを発揮されることを願っております。


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