転職はより良く生きるための決断~仕事を辞めたい、転職をしたいと思った時の処方箋~
- 2021.09.02
- キャリア 生き方
- #より健康になる選択, #出会いと縁, #自分をつくる
終身雇用という言葉も最近ではほとんど聞かなくなりましたが、人材の流動性が高まっている現代では、転職はもはや誰にでも身近なものとなりました。
私も最近は、若年層だけではなく、中高年の方の転職相談などを受ける機会も増えました。健康長寿の時代だからこそ、働くということに対して多様性が出てきている、選択肢が増えることはとても良いことだと思います。
一方で転職にはエネルギーや時間も必要ですし、リスクが伴うことも事実です。今日は誰にでも起こりうる、「仕事を辞めたい」「転職をしたい」と思った時に、どう判断し行動すべきかをお伝えしていきます。
辞めたいという感情で判断しない
まず大切なことは「感情」で判断しないということです。人間は喜怒哀楽といった感情で生きる生き物ですが、感情は天気のようにコロコロ変わります。天気に合わせて予定を決めていたら、到底計画的に物事を進められないように、感情や気分で大事な進路を判断することはとても危険です。感情を治めるものが、知性であり理性ですから、「辞めたい」と思った時、立ち止まって考えてみましょう。
少し休む(休職など)
休むことも大事な仕事です。会社にとってもせっかく採用した人が辞めてしまうということは大きな損失でありリスクになりますから、話の通じる人に思い切ってしばしの休養をとる相談をすることも必要です。
会社内の部署異動などで環境を変える
休んで回復するなら良いのですが、そもそも職種が合わない場合や、人間関係で休んでも解決しない場合もあると思います。その時にすぐに辞めてしまうのではなく、比較的大きな会社ならば、同じ会社やグループ内での異動を検討してみましょう。同じ会社内でも、職種や部署が違うだけで、全く違った環境、心理状態で働くことができる場合も十分にあります。
まずはこの2つの選択肢をしっかりと検討してみることが大切かと思います。
「感情」が落ち着くことを待ってからもう一度考えた方が、より良い判断ができます。今「嫌だ」「辞めたい」と思ったとしても、何かの縁があってその組織に属するようになった訳ですから、そこで得られるべきものを得る最善の努力をしてから、外部へと環境を変えてみるのも良いと思います。
生き方のイメージを描く
転職をしたいと思うことは、自分の人生を見つめ直す機会が来たということです。自分が作ってきた土台、揃えてきた材料で再設計をするチャンスです。夢や目標を持つことは自由ですから、この際一切のしがらみを捨てて、子供の頃に戻った気持ちで、残りの人生を「どのように生きたいのか」をイメージしてみましょう。
この時、自分の設定年齢は12歳頃(笑)、不要なものは、目先の生活、職種、収入、経験などで、未練なく横に置いておきましょう。イメージは、漠然とでも良いですが、なるべく大きなものが良いでしょう。具体例を挙げてみます。
- 食に関わる仕事を通して、人々の健康に貢献したい。
- 未来の子どもたちのために、地球環境を守る生き方をしたい。
- 好きな「ものづくり」に思い切り没頭し、後世に残る作品を残したい。
- 教育分野で次世代のために、人を生かし育てるための教育を追求したい。
- 平和を作るために生きたい。
- すべての人を幸せにするために、誰も傷つかない「笑い」を研究する。
他にも枚挙にいとまがないと思いますが、社会や人類の未来が良くなるために自分が存在するような、大きなイメージを持つことが大事です。まず自分の理想とする、自分が憧れを持てるような生き方を考え、それに向かって具体的にどうしていこうかと考える順番が大切です。
大体転職を考えているときは、負の考え、マイナスのような考えにある場合が多いですから、自分の中から湧き上がってくるプラスのイメージ、モチベーションを膨らませてみることです。そうするとそれが充満し、爆発することで次の行動へと繋がるようになります。
欲張りすぎないこと
モチベーションが湧いてくると、どうしても「転職」一直線に感情が高まり、また周りが見えなくなります。この時大事なことは、現実逃避をしないこと、欲張りすぎないことです。
子供の頃に海でヤドカリを捕まえたことがある方もいらっしゃると思います。ヤドカリは脱皮を繰り返しながら成長していくのですが、脱皮が終わると体が一回り大きくなるので、すみかにしていた貝殻を引っ越します。引っ越すときは敵に狙われるリスクがありますから、大きさが自分にあっているか、壊れていないかなどをチェックし、それなりに相応しいものが見つかると、中を掃除して素早く引っ越します。体に小さすぎると成長が阻害されたり、外敵に狙われるので、貝殻選びはすごく重要なのですが、ピッタリ自分の体に合う貝殻を見つけられるのは30%程度と言われているようです。
ヤドカリは一生続けて貝殻を変えていくようですが、私たちをやどかりに例えるなら、今所属している環境で成長したら昇進したりより大きな任務に移るということも貝殻を引っ越すことですし、外の環境に移ることも貝殻を引っ越すことです。
転職は、成長し次元を上げるためにするべきですが、その時の身の丈にあった仕事を選ぶことが大切です。「人生最後の転職」「一生の運命を左右するかもしれない」と気負いすぎると、かえって判断を鈍らせてしまったり、機会を失ってしまうかもしれません。完全に満足する転職先、仕事が見つかるということはほとんど難しいと思いますので、ある程度の妥協は必要ですし、転職後に「こんなはずじゃなかった」と失望しないためにも、期待し過ぎない方が良いです。
また、背伸びをし過ぎて転職をしても、自分も採用する会社も苦しいだけですから、長い目で見ても欲を出し過ぎない方が良いでしょう。
自分の身の丈にあった与えられた場所でベストを尽くし、成長するならば、その後の道は必ず繋がっていくのです。
自分を作りながら時を待つ
能力向上や資格取得なども準備としては必要になりますが、ここでお伝えする準備は「感謝する」ことです。転職をする際に現実逃避をしてしまい、今の現実から目を逸らしてしまうことは良いことではありません。急いで今の仕事を辞めなければ、自分の生命の危機にある場合は別ですが、今任されている仕事を最後まで全うすることは自分の成長に繋がりますし、少なくとも今与えられていることに感謝することはとても大切です。
当然ですが、世の中は需要と供給で成り立っていますから、採用して欲しい側と採用したい側があります。自分が「辞めたい」「転職したい」と思うことの次に意識するべきことは、「採りたい」と思われるように備え、準備することです。
同じような能力の人が2人いる場合、「現実に文句を言い不満を持つ人」と「現実には感謝しているがもっと成長したいと思う人」のどちらを取りたいと思うでしょうか。前者の場合、「この人はもしかしたら当社が採用しても、しばらくすると同じように思うのかもしれないな」と思うでしょうから、後者を採用する可能性が高いでしょう。
自分を作るということは、何も難しく新しいことをすることだけではありません。今の現実に感謝し、そこでできる最善を尽くすことです。そうすると「嫌だという感情に負けないで最後までできる自分」「どんな状況でもコツコツと進められる自分」を得ることができます。この自分を手に入れてから転職活動をすることは、小さな資格を取って転職活動をすることよりも大切な事かもしれません。
出会いや縁を大切にする
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があります。あくまでも自分のできることはすることが前提ですが、最後は運や縁という、人間の考えを超えた大きな力が自分を動かすということを、認めることも大切です。
季節や時間の流れを止めることができないように、人にはどうしようもできないことがありますが、その1つが「出会い」です。
人がどんなものに憧れを持ち、目標を定めるのかも、様々な「出会い」が重なって決まっていきます。皆さんは子供の頃、どんな夢を持ちましたか?私が幼稚園の頃、最初になりたかった夢は「おすもうさん」でした。祖父母が好きだった相撲を一緒に見ていて、千代の富士という小柄な力士が大きな相手を打ち負かす姿がとても格好良かったからです。身の周りにあるもの、親や身近な人たちを通して通して自然と自分も接するようになり、夢や憧れを抱いた経験は皆さんもあるのではないでしょうか。
今は長寿の時代を迎えています。今触れるもの、接するものを大切にすると、残りの人生が大きく変わる可能性は高いです。
受験や就職の際に「お参り」「お祈り」をしたことがある人も多いと思いますが、私は人生の転機に「お祈り」をすることはとても大事だと思います。祈るというのは真心を込め、運命を信じることに繋がります。お祈りは自分で、移動せずに無料でできます(笑)。ではどう祈ったら良いかというと、転職をする際にエージェントを利用することも多いと思いますが、「自分にとって良い担当者に出会えるように」とお祈りしてからエージェントにコンタクトを取ってみることなどもオススメです。
「お祈り」の時に注意した方が良いことがありますが、「絶対にA社に入れるようにしてください」というお祈りはオススメしません。結局のところどんな会社も入ってみなければ分かりませんし、業務も実際に行なってみたらイメージと全然違ったということがほとんどです。「私はA社で働けたら良いなと思うんですけど、もしかしたら自分の考えと実際は違うかもしれないので、私にとって一番良いところに行けますように」というのが良い祈りだと思います。
また、もし結果が思う通りではなく、今の職業よりもレベルが下がる(ような気が自分にはする)転職先になったとしても、失望せずに感謝することです。どんな仕事でも、仕事があること自体が幸せなことです。そこでまた新しく頑張れば、一時的には祈りが聞かれなかったように思えても、結局更にそこからまた転機があり、長い目で見ると大きく次元が上がっているということは、十分にありえることだからです。
最後に
人生を大きく変えるものが転職ですが、何より「健康」であってこそ幸せに生きることができます。転職を考えたタイミングで、心も体も「健康で長く生きられるように」自分を見つめ直し、より改善することを心がけてみましょう。
その中で運命があれば、転職をすることになるでしょう。転職するにしても、考えて行動した結果今の環境に残ることになったとしても、これまでお話したプロセスを経たならば絶対に自分にとって無駄ではありません。
自分で決めたことに自信を持ち、「より良く生きるための決断だ」と信じることこそ、新しい自分への第一歩になるのです。
<ヨブ記8章5~7節>
あなたがもし神に求め、全能者に祈るならば、
あなたがもし清く、正しくあるならば、
彼は必ずあなたのために立って、
あなたの正しいすみかを栄えさせられる。
あなたの初めは小さくあっても、
あなたの終りは非常に大きくなるであろう。
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