ビジネスマナーは何のため?「損をしないため」の処世術

ビジネスマナーは何のため?「損をしないため」の処世術

はじめに

突然ですが、皆さんはビジネスマナーは何のために習得すると思われますか?

ビジネスマナーに関する書籍を見てみると、「職場の人間関係を円滑にするため」もしくは「相手から信頼してもらうため」等と書かれていますが、本当にビジネスマナーをマスターすることでそのような効果が期待できるのでしょうか?

今回は、長年企業や職業訓練校でビジネスマナーの講義を担当してきた経験から、ビジネスマナーを習得する実質的な効果とその必要性について考察したいと思います。

ビジネスマナーを習得することによるメリットはあまりない

先に結論をお伝えすると、ビジネスマナーを習得することによるメリットは、実はあまりありません。ビジネスマナーが完璧だから人間関係が良くなる、相手から信頼されるというプラスの効果は期待できないということです。

反対に、ビジネスマナーを習得しないことによるデメリットはとても大きいです。ビジネスマナーが欠如していることでより人間関係がギクシャクする、より信頼されなくなるということは決して珍しくなく、しかもそれらの原因をなかなか自覚できません。

つまり、習得しても大きなプラスはない。しかし、習得しないと大きなマイナスを被ってしまう、それがビジネスマナーなのです。

ビジネスマナーでは何が見られるのか?どう評価されるか?

ビジネスマナーは多岐にわたりますが、多くのビジネスパーソンが「言葉遣い(敬語)」「 挨拶 」「 身だしなみ 」を重視しています。※1

これら3つは、「社会人として信頼に足る人物なのか」を推し量る上で必ずチェックする項目と言っても過言ではないでしょう。

リーダーシップドック マナー

また、ビジネスマナーに関する質問とその回答は次の通りです。(複数回答可)

・(営業の)仕事はできてもビジネスマナーができていないとだめだと思う⇒68%
・上司のマナーを見て、尊敬できる上司かどうかの判断が変わる⇒75%
・ビジネスマナーを疎かにする企業・団体はいつか信用を失うと思う⇒90%
・ビジネスマナーができていない部下・後輩は育てる気にならない⇒53%(40代以上)

このようにビジネスマナーを習得していないことは、想像以上のマイナス効果があることをご理解いただけると思います。「損をしないため」というのは消極的な目標のように思えますが、ビジネスマナーはいわば損をしないための”保険”のようなものだと考えることをお勧めしたいです。

洞察力のない上司ほどマナーを重視する

ビジネスマナーを習得する必要性を、別の角度からも考えてみましょう。

実際に仕事をしてみると、単にビジネスマナーを習得しているだけでは良い人間関係を築くことは難しいことが分かりますし、社内外の人たちからの信頼を勝ち取るためには性格を磨き人格を向上させる努力が不可欠です。しかし、そのような内面的な特徴というのは、他者が洞察したり評価したりすることが難しいという側面があります。

例えば、「ビジネスマナーが完璧だけど性格が悪いAさん」と「ビジネスマナーに難はあるけど性格が磨かれているBさん」がいる場合、Aさんの能力や人柄を実際以上に高く評価し、Bさんの能力や人柄を実際より低く評価するマネジャーが意外なほど多いのです。これは1つの評価項目が高いことで他の評価項目まで高くなるハロー効果※2による影響が考えられますが、洞察力が低い人ほど外見、言葉遣い、挨拶の声の大きさなどの表面的な事柄によって”人となり”まで把握しようとする傾向があることを表していると言えます。

「性格が良い人をマナーの良し悪しだけで低く評価するなんてひどい」と感じられるかもしれますが、逆に言うと、マナーさえ習得してしまえばどんな上司からも実際以上に高く評価してもらえる可能性もあるということですので、早速、言葉遣いを直し、身なりを整え、大きな声で挨拶をすることを心がけ、習慣にすることが知恵だと言えるでしょう。

まとめ

今回はビジネスマナーを習得する効果と必要性についてお伝えしました。
一時期「人は見た目が9割」という書籍が話題を集め物議を醸したことがありましたが、性格、人格、考え方などの内面を変えるより、服装、髪型、表情、言葉遣いなどの外面を変える方が、より簡単で手っ取り早いことも事実です。

ビジネスマナーは関連する書籍や動画が豊富にありますし、さほど複雑な内容でもありませんので、私たちが損を被ったり個性や人格の素晴らしさを過小評価されたりしないためにも、ぜひビジネスマナーの習得を目指してみてください。

 

※1【調査概要】
・調査タイトル:ビジネスマナーに関する調査
・調査対象:特定非営利活動法人セールスコーチング協会(現セールスキャリア開発機構)会員を母集団とする20〜59歳のビジネスパーソン(会社員、個人事業主、個人)
・調査期間:2021年2月1日〜2021年2月28日
・調査方法:インターネット調査
・調査地域:全国
・有効回答数:225サンプル(20代・30代・40代・50代の各年代が概ね均等になるように抽出)

※2 ハロー効果:人物や物事を評価するとき、目立ってすぐれた、あるいは劣った特徴があると、その人物や物事のすべてをすぐれている、あるいは劣っている、と見なす傾向。後光効果。光背効果。(デジタル大辞泉より)