リーダーに必要なネガティブな思考や感情との付き合い方
- 2022.05.12
- リーダーシップ 生き方
- # 二次感情, #ポジティブすぎる人, #感情を認める
はじめに
リーダーになると、チームで発生する様々な問題の解決や人間関係の軋轢、葛藤の調整をしなければいけない立場となり、各メンバーへの配慮など、人の心に気を遣う一方で自分自身の感情やストレスについても悩むことが出てくると思います。
問題が重なる中で自身の感情と向き合いながら、様々悩まれている方も多いのではないでしょうか。
今回はネガティブな思考や感情について考えていきたいと思います。
ネガティブ思考・感情は悪いもの?
思考や感情について様々調べたり、人と話をすると、「ネガティブ思考は良くない。ポジティブ思考にならないと。」といった情報・考え方に出くわすことがあります。
しかしながら、自分自身の思考の状態を思い起こすと、ポジティブな感情・思考の状態もあれば、ネガティブな感情・思考の状態となる時もあります。このネガティブ・ポジティブを行ったり来たりすることが自然な状態と言えます。ネガティブな思考の状態は辛く苦しい感情が伴うので、できれば味わいたくないものです。
一方で、ネガティブな思考を意志の力の原動力として捉えることが有効だとも言われています。
自分は難しい課題も克服できると楽観的にポジティブに捉え過ぎている人は諦めが早い上に失敗する可能性も高いという研究結果があり、このような人は自分の挫折にショックを受けてしまう傾向が高いことが要因であると考えられています。
ポジティブ思考であるあまりに、自分がやろうと思っていることに対して楽観的な予測を立ててしまいがちで、結局予定を後回しにしてしまい、後回し癖が様々な仕事や生活で支障をきたすことがあります。
自分の将来の行動について想像するだけで、人は今取る行動を変えられる可能性が高まります。明日も今日と同じくらい、誘惑に負けそうになるかもしれない、忙しいかもしれない、イライラするかもしれない、と意識するだけで今日意志力を発揮する原動力になりえます。
目標を設定する際もポジティブ過ぎる人は理想高く、大きな成功目標を立てますが、小さな中間目標を立てようとはしない人もいます。そうすると当然ながら、目標に向かう過程で問題が起こります。
その際、まず大切なことは期待値を調整すること、そしてどのようなプロセスで失敗が起きているのか分析することです。しかし、楽観的でポジティブ過ぎる人の中には理想にしがみついたまま何も変えようとしない人もいます。
いつ、どこで、どのような理由や要因で失敗する可能性があり、失敗を防ぐために、事前にできる準備は何か、また、実際に失敗が起きたらどうするのか等、どのようなときに目標を達成できなくなるのか、失敗してしまうのか等、ネガティブに捉えながら事前に対策を打つことにより、目標達成に導いていくことができます。
ネガティブ思考が有効に働くことにより、目標に対して意志を持って現状を打開する原動力となり得ます。
このことから、ネガティブな想定や感情を元に現状を打開する意志を持つことが可能であり、ネガティブな思考そのものが悪いものではないことが分かります。
負の感情との付き合い方
ネガティブな思考や感情が有効であることは分かりましたが、組織で働く上では、「怒りの感情」や「失敗したときの感情」に翻弄されることが多くあり、この負の感情と上手く付き合っていくことが求められるようになります。
特に怒りといった感情はコントロールが必要であり、感情をそのまま表に出したりすると人間関係に支障をきたしたり、また、ただ我慢しているだけでは自分自身の心の健康に支障をきたしてしまうためです。
感情を出してもいけない、とはいえ我慢を続けるだけだと自身の心が辛いといったような袋小路の感情状態になってしまいます。湧き上がってしまった怒りの感情をただ忘れようとするのはなかなか難しいですね。
しかし、感情の仕組みを理解することにより、この感情、気持ちを切り替えることができます。
心理学では「怒り」は「二次感情」と言われています。二次感情とは「ある感情(一次感情)が発生した後に発生する感情」のことです。
その気持ちの裏には必ず、本当の気持ちである「一次感情」があります。「怒り」の裏にある一次感情の代表的なものは、「期待」「心配」「悲しみ」です。「このくらいはやってくれるだろう」といったような相手への期待や「この案件、上手くいくかな」という心配、「失敗したら初めからやり直しだ。。。」といった悲しみ等です。
とても真面目な人はこの感情自体を悪いものとして捉えてしまい、怒りを押さえようとしたり、自分自身の感情を否定してしまったりします。ここで我慢してしまうと、気持ちが押さえきれなくなり、突然爆発して相手に怒りをぶつけたり、自身の感情を押し殺すあまりに心理的に病んでいってしまいます。
怒りなどの感情の裏側には一次感情が潜んでいるので、怒り自体を抑えるのではなく、その裏で湧き上がった感情を丁寧に扱う必要があります。
例としては部下や後輩に対してイライラしてしまった時に、自身の感情について、否定的に捉えるのではなく、その背景にある自分の気持ちに目を向けてください。
「私はこのメンバーに期待しているんだな」「頼られないことが悲しいんだな」といったように、怒りの裏にある自分自身の感情に気付き、味わうことが大切になります。そして、その感情を認めて受け入れてあげてください。
これができるようになると、相手に「怒りをぶつける」のではなく、「本当の気持ちを伝える」ことが可能になります。
ここで大切なのは相手の言動や自分の中で湧き上がった感情に対して、「良い」や「悪い」と裁くのではなく、まずは「そうなんだ。」と受け入れることです。
自分の中でネガティブな感情が出てくることを感じたら、まずその感情の存在を意識して、自分の中にその感情の居場所を作り認めること。
不安や怒りを感じた時、「今ネガティブな感情が生まれてきているな。そのまましばらくその感情を感じよう」と深呼吸しながら心の中でその感情を味わいます。
否定的に感情を押さえつけようとすると、いつまでもその負の感情から抜けられなくなることがありますが、認め受け入れることによって、怒りや不安の感情は徐々に消えていきます。
感じていることを意識する、そして逃げたり押さえつけたりするのではなく寄り添うことは心理学の研究によっても有効であることが確認されています。
心が感情を認めることによって、自身の感情を理解し、怒りや不安による負の感情から冷静になり、具体的な対処や本当の気持ちを元に相手と調整をしていくことが可能になります。
最後に
コンサルタントとして様々な組織に関わる中で、真面目な人であればあるほど、ネガティブな思考・感情について我慢をしてしまい、自身の感情を押さえつけて苦しんでおられる管理職の方の姿を見たり、お悩みを聞く機会が多々あります。
そのような方の中には「ポジティブでなければいけない」というような思い込みや決めつけをしてしまい、自身を苦しくされているご状況であることがありました。
厳しい現実への対処や様々な問題解決を任されているリーダーこそ、まずは自身にとって優しくあること、自身の感情をあるがままに受け入れることが大切であり、そのことによって適切に負の感情もコントロールでき、かつ有効にこの感情や思考を活かしていけるのではないかと思います。
ぜひ、ネガティブな思考や感情が出てきた時はチャンスと捉えていただき、受け入れて味わいながら、現状を打開するために活かしてみてください。
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