HSPが自信を失わずにリーダーシップを発揮する方法<前半>

HSPが自信を失わずにリーダーシップを発揮する方法<前半>

はじめに

HSPという言葉が広く世に知られるようになりました。HSPとはHighly Sensitive Personの略で、アメリカのエイリン・アーロン博士が研究した「繊細な気質の持ち主」のことです。HSPは病気や障害ではなく先天的な気質で、国籍や世代を問わず全人口の15〜20%が該当すると言われています。2008年にアーロン博士の著書(「ささいなことでもすぐに『動揺』してしまうあなたへ」 SB文庫)が日本で翻訳出版された頃から少しずつ認知度が上がってきて、最近ではHSPに関する動画や情報もインターネット上で多く見られるようになりました。

皆さんの周りにも一定数存在するはずのHSPについて、またHSPがリーダー的な立場になった時どのようにするのが良いかを、2回に分けてご紹介したいと思います。

ご自身がHSPかどうか気になる方は、簡単な診断テストがありますので受けてみてください。
https://hsptest.jp

HSPの特徴

アーロン博士によると、HSPは次の4つの特徴を持ち合わせています。

1) Depth of Processing:何事も深く考えて行う
2) Over Stimulation:五感が敏感で刺激過多になりやすい
3) Emotional Responsiveness & Empathy:感受性が強く共感性も高い
4) Sensitive to Subtleties:些細な情報もすべて受け止める。「気にしない」ことができない

このようなHSPの持つ感覚の鋭さは、人や状況への深い洞察、非言語的なコミュニケーション能力の発揮に繋がりやすく、強力な強みになります。

反面、HSPが特有の「生きづらさ」を感じる要因にもなります。

例えばHSPが些細なことで動揺したり傷ついたりすることを、全人口の80%以上を占める非HSPの人たちは「気にしすぎ」「メンタルが弱い」「甘えている」と見なす現象は、よく起こることです。このことはちょうど傷口が痛むときに「痛みを気にするな」「痛がるなんてメンタルが弱い」「痛がるなんて甘えているよね」と言われることと同じなので、HSPとしてはそれらの言葉に理不尽さを感じますが、同時に「自分はどうして他の人のようにできないんだろう?」と自分を責める気持ちや孤独感にさいなまれるケースも多いのです。

HSPがリーダーになると?

そんなHSPがリーダー的な立場になるとどんなことが起こりうるでしょうか。もちろん気質としてはHSPでも能力が高い方はたくさんいらっしゃいますが、ここでは個々人が有するリーダーシップに関する能力やスキルとは切り離して、気質の面での影響を検証してみたいと思います。

<好ましい点>

①きめ細かいマネジメント・プロジェクト管理・育成ができる

HSPは非HSPに比べて脳内に入ってくる情報が100倍以上とも言われており、上司や部下・同僚や取引先の発言、メール、SNSの断片的な情報などからも、発言の意図、背景などを無意識のうちに推測します。その上で細かいリスクを察知し、抜け漏れのない情報展開やフォロー、個別指導を心がけるため、きめ細かいリーダーシップの発揮が可能になります。

②真摯に組織目標の達成に努める

HSPは潜在的に自信がなく「こんな自分ではだめだ」と考え、自分を変えようと思う人が多いです。その結果、120%位の力で仕事に打ち込むことになり、手がけた仕事やプロジェクトを成功させようと最大限努力をします。その姿勢が組織目標の達成を目指す雰囲気に繋がり、組織としての成功の可能性が上がるようになります。

③配慮とズレの調整

HSPは他者の機嫌や波長に敏感で、無言のメッセージさえも拾うことができます。例えば「会議の時にあの人が一言も発言しなかったのは、実は納得いかない何かがあったのではないか?」と感じたりすると、そういったメンバーからも理解と賛同を得るために配慮しますし、現場の意向を汲むだけではなく組織の方向性とのズレが生じないように気を遣い、努力して埋め合わせるよう調整したりもします。

<不都合な点>

①気疲れとストレスでパンクする

HSPは元々、ストレス耐性が低く気疲れしやすいので、1人の時間を取ってエネルギーを回復することが不可欠と言われています。ところが、指導的な立場で多くの人とのやり取りに追われていると、心のエネルギーの回復が追い付かなくなり心の疲労が蓄積するようになります。それが許容範囲を超えてパンクしてしまうと一気にパフォーマンスが落ちるようになります。

②責任感で仕事を抱えこむ

HSPは自分以外の人に仕事を頼むことを苦手に思う人が多く、「誰かに依頼して負担を与えるくらいなら自分がやってしまった方が良い」と考えがちです。結果として仕事を抱え込んで身動きが取れなくなり、HSPがボトルネックとなって組織全体の生産性も落ちるようになります。

③考えすぎて空回りする

HSPの特徴は深く考えることですが、心の疲労が蓄積してくると判断力と決断力が落ちるので、堂々巡りの考えをしたり断片的な発言をしてしまったりして意思疎通も上手くできなくなり、空回りするようになります。

以上、HSPがリーダーになった時に起こりうることを挙げてみました。HSPの場合、非HSPに比べて、能力面の限界よりメンタル精神面の限界を迎えやすいことをご理解いただけると思います。

前半のまとめ

HSPは生まれ持った気質であって能力とは異なるため「HSPだからリーダーにはなれない」と考える必要はありませんが、自分自身の特徴をよく分かって非HSPが大多数である社会の中で、処世していくことが大切です。

私自身も強度のHSP気質の持ち主で、HSPの中でも3割に該当する外向型HSP(HSS型HSE)でもあるので、自分自身のややこしい性格の故、苦労が多い職業生活を送ってきました。

次回は私自身の体験談も踏まえて、HSPが自信を失わずにリーダーシップを発揮する上でのポイントを共有させていただきたいと思います。

【参考文献】
1.『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』,エレイン・N・アーロン著,冨田香里訳,SB文庫
2.『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』,武田友紀著,飛鳥新社

 

※本記事は、2020年8月20日に投稿された記事のリメイク版です。