「最高のチームを作る自分の役割〜あなたから組織が変わる〜」

「最高のチームを作る自分の役割〜あなたから組織が変わる〜」

Vol 6 自己理解と役割の認識

シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」の第6のテーマは、「自己理解と役割の認識」です。自分を理解できる分、他者のこともよく理解できるようになると言います。また、自分の適性、長所短所、能力、実力、個性、才能などを詳しく把握してこそ、組織・社会の中でより有益な貢献ができるようになります。今後、今以上に自分で自分自身のキャリアを開発していく必要があるこの時、より深く自分を知り自分を作るために必要な観点を、数回に亘ってお伝えします。

はじめに

人間は組織で生きていく生き物です。1人でできないことが多いからこそ、チームや組織を作って役割を分担して行ないます。皆でやるべきことを1人でやって「大変だ」というのも愚かですし、1人でできることを皆でわざわざやるのも愚かです。自分がやるべきことと、組織ですべきことを明確にし、分別することが重要です。

当然ですが、個人、組織の両方が機能することが大切です。例えばチームスポーツにおいて、いくら自分が活躍してもチームが負けたら悔しいですし、チームが勝っても自分が良いプレーをできなければ悔しいです。自分も役割をしっかり果たして、組織も成功し発展していくならば、喜びは何倍にもなります。

今日は、組織やチームをより良く作るという観点から、個人の役割を考えていきたいと思います。

組織として機能するには

個人の成績を上げることより、全体の成績を上げるほうが、大規模で根本的な改革が必要です。

組織やチームを発展させるにはどうしたら良いでしょうか?

生産性が高いチームの共通点を発見するため、Googleが2012年に大規模な調査を行ないました。「プロジェクトアリストテレス」と呼ばれたこのプロジェクトは、様々な業界から注目されましたが、「生産性の向上」という観点から「成功するチーム」に共通する大きなポイントとしてあげられたのは、テクニックや組織構造ではなく、意外にもメンタル的な要素である「心理的安全性」と呼ばれるものでした。

心理的安全性の高いチームに所属している場合、自分がチームのメンバーにネガティブな印象を与えるような行動をしてしまっても、チームから責められたり外されたりするような不安を感じず、「このチームなら大丈夫だ」と信じられる心理状態にあります。「誰も自分を馬鹿にしない」と信じ合えるチームなので、自分の過ちを素直に認めたり、気軽に質問をしたり、積極的にアイデアを提案したりできるのです。

このような、心理学の専門用語で「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれる雰囲気は、決まりやルールを押し付けて作られるのではなく、むしろ暗黙のルールとして、自然にそうなるような雰囲気がチーム内で醸成されることが重要なのだと言います。

「こんな発言をしたらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」「自分では良いと思うこの提案、リーダーに言ったら叱られないだろうか」といった不安を、チームのメンバーから払拭し、安心や共感、理解といった穏やかな空気をチーム内に育めるかどうかが、チームや組織の成功の鍵なのだそうです。

この心理的安全性を作ることにも繋がりますが、組織が成功する上でもう1つ必要なことが分かりました。それは、働く人が公私を極端に使い分けるよりも、ある程度、自身を晒け出した方が心理的安全性に繋がるということです。「仕事のことはたくさん話をするが、プライベートや普段の生活は一切分からない」というチームより、メンバーがなるべく本来通りの姿であることが、互いの共感や配慮をさらに生むということです。

チーム内のメンバーへの配慮、同情、共感、心遣いといったメンタル的な要素が、成功するチームでは上手くいっているということです。

「心理的安全性」を作るために

前項で決まりやルールを押し付けて「心理的安全性」を作るのではなく、自然にそうなるような雰囲気を作ることが重要だと言いましたが、1人のリーダーの強い意見が必要なのではなく、1人1人の意識と行動、意識改革が重要です。

自分が、不平不満や文句を言いながら仕事に取り組むのではなく、喜びと感謝で取り組むだけでも、チームや組織の未来は全く違ってきます。

例えば、あなたが仕事を依頼するとして、①不平不満を言いながら嫌そうにやってくれる人、②なんの感情もなく淡々とやってくれる人、③笑顔で喜びながら気持ちよくやってくれる人、どの人に仕事を依頼するでしょうか?仕事の質が同じ場合は、当然③の人に任せたいと思うでしょう。

チームを作る上で、業務内容を改善することも大事なのですが、「考え」「気持ち」といったメンタル的な改善は特別な投資がなくてもすぐにできます。

「考え」というのは繋がっているもので、ネガティブな考えはネガティブな考えに繋がり、ポジティブな考えはポジティブな考えに繋がります。1日のスタート時に「今日は雨だから嫌だなあ」と思うと、良くないことが起こった時に「ほら、やっぱり今日は最悪な日だ」となって、負の考えの連鎖が起こります。

仕事において「何で自分がこんなことをしないといけないんだ」と不平不満を言いながらやると、結局は「あの人がやれば良いのに」と誰かのせいにしたり、他者のことを批判したりすることに繋がります。

「今日は雨だけれども、夕方は少し回復するみたいだから、虹が見れるチャンスかも」と思うと、良くない事が起こっても「まあそういうこともある」と思って行動するようになり、天気の変化にも敏感になり、少し晴れただけでも「晴れた!」と嬉しくなって、2〜3分だけ現れる虹を見れた時には「本当に良い日だ!」と思うようになります。これは筆者の経験談です(笑)。

仕事をする時「自分を使ってくれてありがたい」と思うと、誰かのせいにしなくなり感謝の気持ちが続きます。「ありがとう」という言葉がチーム内に増えるようになると、嬉しさや甲斐をチームのメンバーが記憶するようになり、「感謝されるような仕事をしよう」と思うので仕事の質も仕事やメンバーへの態度も変わってきます。

たとえチーム内で嫌なことがあったとしても、「不平不満は口にしない」「自分が笑顔でいいチームを作る」という意識があれば、必ずや徐々に「心理的安全性」はつくられていくと思います。

「忘れない」こと

大事だと思っていても続かなかったり、必要だと分かっていてもしなくなることの原因は、「忘れる」からです。生活をしていると、急に入ってくる仕事や目の前のやらなければいけないことが当然発生しますから、重要だと思っていたことを忘れてしまい、段々と「頭では大事だと分かっているんだけど…」と言い訳をし始め、やらなくなります。そうすると、結局は元の状態に戻ってしまい、変化できなくなります。

個人が組織やチームを作りますから、必ずしなければいけないことは、「忘れない」ことです。

・自分の「役割」を忘れない
・自分が「重要だと思って、やろうと決めたこと」を忘れない
・過去に上手くいったこと、誰かに貢献できて甲斐を感じた「喜び」を忘れない
・過去に上手くできなかったこと、もう少しやるべきだったと「悔しかったこと」を忘れない

私は同じチームに「リマインド」が得意な人がいるのですが、その存在がとてもありがたいです。「忘れない」という役割をしっかりと果たしてくれるので、いい加減な私も一緒に確実に仕事を進めることができます。

「リマインド」も重要な仕事なように、「自分ができることがない」というのは言い訳で、必ず「できること」はあります。「新しく考えて提案すること」も仕事ですし、メンバーが気持ち良く仕事ができるように笑顔で挨拶すること、応援することも重要な仕事でしょう。

仕事の内容や質は当然重要ですが、その仕事に携わる上での「考え」が、個人や組織を発展させるかどうかを大きく左右します。それぞれが自分の役割、価値を忘れずにしっかりと果たしていくならば、「心理的安全性」も作られて、組織は必ず発展していくことでしょう。

まとめ

今日は「自分が所属する組織やチームを作る」という観点から、個人の役割を考えてきました。自分が周囲の人たちにできることは必ずありますし、感謝し真心をこめてその役割を果たすことが、組織やチームを発展させ大きくします。組織やチームのために努力するということは、結局は自分に返ってくるのです。自分の価値を失わず、感謝する心で役割を果たしていく人になる時、いつの間にか自分ももっと大きな役割を任せられ、多くのところで必要とされる人になっていると思います。

「もし、麦粉の初穂がきよければ、そのかたまりもきよい。もし根がきよければ、その枝もきよい。 しかし、もしある枝が切り去られて、野生のオリブであるあなたがそれにつがれ、オリブの根の豊かな養分にあずかっているとすれば、あなたはその枝に対して誇ってはならない。たとえ誇るとしても、あなたが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのである。」(ローマ人への手紙11章16〜18節)