上司から「それで!」と納得させる提案書の書き方【フォーマット公開】

上司から「それで!」と納得させる提案書の書き方【フォーマット公開】

ビジネスパーソンの自己研鑽を助けるメディア「リーダーシップドック」、プロのブロガー&メディア運営者としても活躍中の矢部秀明さんに、文章力向上のための記事を寄稿していただいています。今回は4回シリーズの最終回。多くの人が悩む提案書の書き方について、フォーマットも公開しつつ解説してくださってます。第1~3回の記事も是非ご確認ください。

第1回「仕事で成果を出すリーダーに必要な文章力とは」
第2回「できるリーダーは文章力で決まる!誰にでも伝わる文章テクニック5選」
第3回「ビジネス文章を書く前に、リーダーが知っておくべき3つのこと」

はじめに

今回は、提案書の書き方についてお伝えします。

自分で何か新しい施策を動かしたいと思ったら、提案書を書いて上司へ内容を伝える必要があります。私は、商品開発の部署にいたため、今まで毎週のように提案書を書いてきました。

提案が通って、私がその施策のプロジェクトリーダーになって進めていくこともありました。自分で考えて提案した施策を、自分自身が中心になって進めていく仕事は、どんなに大変だったとしても楽しいです。しかし、私の実力が足りなくて、提案が中々通らなくて苦しんだ期間もありました。

まずは、なぜ提案が通らないのかを私の経験談をもとにお伝えします。

提案は通そうとすると上手くいかない

私の経験上ですが、提案は「絶対に通してやる」と思ってミーティングの場に持っていくと大体上手くいきません。もちろん勢いは大事であるものの、提案を通すありきのスタンスで話を持っていくと、上手くいかずに打ち砕かれることが多かったのです。

理由は、提案を通すありきのスタンスは、何か突っ込まれて答えられなかった時に、上司へ不信感を与えるからです。

上司から「こんなことが起こったりしないの?」と何か突っ込まれた時に、「大丈夫です」と言ってしまったら、「根拠は?」と詰められます。その時に完璧に答えられれば良いのですが、その指摘が自分一人で考え抜けなくて、答えにくいこともたくさんあります。それでも提案を押し通そうとしたら、上司は「本当に大丈夫なのか」と考えて承認しません。私は、どんなに良い提案書を書いたとしても、ミーティングで上手く提案を通せなくてやり直したことが何度もありました。

そこで私が取った対策は、合気道のようなスタンスで提案をすることです。

合気道のやり方で提案を通す技

私は、提案書が中々通らなくて苦しんでいた時、『サラリーマン合気道』という箭内道彦さんの本と出会いました。箭内道彦さんは、博報堂出身の有名なクリエイターの方です。

この本の中には、提案は合気道のようなスタンスでするべきだ、と書かれていました。合気道とは、相手の気に合わせて華麗に受け流す武術です。提案もそのような姿勢で実施するべきだと学んだのです。

それから私はミーティングでのスタンスを変えました。

もし、ミーティング中に上司から「こんなことが起こったらどうするの?」と聞かれたら、正直に「私もそこには気付けていなかったです。どうしたら良いでしょうか?」と切り返すようになりました。もしくは「私もそこが問題だと思っていたのですが、どうしても対策が思いつかなかったです。どうしたら良いでしょうか」と切り返したりしました。

そうすると、上司も自分の提案をより良くするために一緒に考えてくれるようになりました。議論が進んでいく内に、気付いたら提案が通っているという体験もたくさんしました。

もし、いくらやっても提案が通らないという方は、提案書の文章を見直す前に自身のスタンスを見直してみましょう。ミーティングの流れに身を任せてみると、余計な力が入らず、相手の質問を切り返せるようになって、提案が通るようになるかもしれません。

提案書のおすすめフォーマット

提案書は、以下の4項目をA4用紙一枚くらいにまとめて書くと分かりやすくなります。

・概要(結論、提案)
・解決したい問題
・提案内容(解決策)
・今後の予定

それぞれについて解説をします。

概要

概要には、どんな施策を行なうのか、1〜2行に短くまとめて書きます。また、提案する相手に知ってもらわないといけない前提がもしあったら書くようにしましょう。

実は、概要の部分が提案書の文章の中で一番重要です。

一番最初に目に入る部分だからこそ、上司の心を惹く文でないといけないし、概要だけで提案の内容がひと目で分かる文である必要があります。

そのため、概要は一番最初に書き始めたとしても、最後にもう一度考え直す必要があります。

提案書において、心を惹く簡潔に分かりやすく文章を書くには、『企画は、ひと言』という本を読むのをおすすめします。『企画は、ひと言』は、石田章洋さんという「TVチャンピオン」や「世界ふしぎ発見」といった有名なテレビ番組の放送作家をされていた、企画書を書くプロの方が書いた本であり、ひと言で惹きつける企画書の書き方が書かれています。

例えば、「世界ふしぎ発見」の企画書を通す時のひと言は「各国の文化を育んだ歴史をテーマにしたクイズ番組」でした。また、「TVチャンピオン」は「あらゆるジャンルの日本一を決める番組」だったそうです。

どちらも、ひと言であるにも関わらず、どんな番組を作るのかがすぐに分かるひと言になっています。

このように、概要は、どんな提案内容なのかがすぐに分かる文にしてあげることで、より提案が通りやすくなります。

解決したい問題

解決したい問題には、誰の、どんな問題を解決したいのかを書きます。さらに、問題となっている根拠を、定性的な現場の声や、定量的な数値を根拠に挙げて記述すると説得力が増します。

そもそも解決したい問題を書く理由は、解くべき問題を見極める必要があるからです。仕事は問題を解決すること以上に、解決すべき問題を見極めることの方がずっと重要です。

解くべき問題を間違ってしまうというのは、試験で数学の問題を解かないといけないのに、間違って化学の問題に取り組んでしまうようなものです。もし科目を間違えたら、試験では0点です。そのように、ビジネスにおいても解くべき問題を間違えたら時間の無駄になります。ビジネスには無数に解くべき問題があるからこそ、まず解くべき問題を見極める必要があります。

私たちは、問題を解いて答えを出すことを、散々学生時代にやってきました。しかし、問題を自分で考える、発見するということには慣れていません。

現状のお客様がどんなことに困っているのか、本来はこうあるべきなのにできていないことは何なのかを、最初に見極めた後に、その問題を解決していくのがビジネスです。

そのため、解決したい問題がお客様にとってどれだけ大きな問題となっているのか、定性/定量的な根拠も示して、提案する相手に問題点をしっかり伝えることが重要になります。

提案内容

提案内容は、解決したい問題に対しての解決策を書きます。さらに、その提案のメリットとデメリットを明記できると説得力が増します。

そして、解決策として他の代案も用意しておくと、上司が判断しやすくなります。代案を含めた提案の選択肢は、3つあれば十分です。それぞれにメリットとデメリットを書くようにして、比較した結果「自分のおすすめはこれです」という持っていき方をすると、上司が判断しやすくなります。

今後の予定

今後の予定には、もし提案内容が実行された時に、いつまでに、何を、どう進めていくのか、お金が発生するならいくらかかるのかを明記します。もし検証が必要な内容なら、何を持って効果測定するのかも書きます。

今後の予定は、どう進めていくかが明確で具体的であるほど、上司は「ちゃんと考えてやってくれそう」と思って任せてもらいやすくなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。正直、ここまで書き込んで提案書を書くのは面倒、自分にはできないと感じてしまった方も多いかもしれません。

結局、百発百中で成功する提案は存在しません。私は、最初から上記のような完璧な提案書をあえて書かないようにしています。5割程度でも提案書ができたら、上司に見てもらって、徐々に提案書を作り上げます。そうする方が、上司も途中経過を知ることができて安心です。むしろ最初から完璧を目指すとやり直しが発生した時に、大きく時間を無駄にします。

また、繰り返し提案書を作り込んでいくと、自分の考えが整理されていき、本当に自分の提案が自信のあるものなのか見極めることができるようになります。結果、提案書が通った後も、施策が上手くいきやすいです。

まずは完璧を目指さなくても、「提案してみる」ということに挑戦してみてください。もし、提案が通らなかったら、ここまでに書いたノウハウを一部でも取り入れてみて、より良い提案書を書いてみてはいかがでしょうか。