ビジネス文章を書く前に、リーダーが知っておくべき3つのこと

ビジネス文章を書く前に、リーダーが知っておくべき3つのこと

ビジネスパーソンの自己研鑽を助けるメディア「リーダーシップドック」、プロのブロガー&メディア運営者としても活躍中の矢部秀明さんに、文章力向上のための記事を寄稿していただいています。今回は4回シリーズの3回目。特に、文章を書くことが苦手と感じている方、これからリーダーを目指したい方、必読です。第1回、第2回の記事も是非ご確認ください。

第1回「仕事で成果を出すリーダーに必要な文章力とは」
第2回「できるリーダーは文章力で決まる!誰にでも伝わる文章テクニック5選」

はじめに

せっかく報告書や提案書を頑張って書いたのに、上司に全く承認してもらえず、理解してもらえなかったことはありますか。

最高の提案書ができたと思っても、上司が承認しなければ、新しい企画を動かすことができません。

リーダーを目指す方は、これからご紹介することを理解しておかないと、文章力をいくら磨いて丁寧に書いたとしても上司から承認されません。

今回は、ビジネス文章を書く前に絶対に知っておくべき3つのポイントをお伝えします。

・上司は驚くほど何も覚えていない問題
・上司が知りたいことと部下が伝えたいことの違いが起きる理由
・感情で動く上司をどう対処するか

どれも原因と解決策が用意されているので、ぜひご参考にしてください。

上司は驚くほど何も覚えていない問題

上司は、仕事が忙しく、役職が高くなるほど意志決定をする場面が多くなります。

私もプロジェクトリーダーをやっていた時、部下からの提案書や報告書に目を通して多くの意志決定をしていました。それだけでなく、他部署や上司からも情報が共有されます。

毎日、キャパを超える判断をしました。

だから、たまに部下とのミーティングで相談を受ける時、「そもそもこれって何の話だっけ?」という確認しなければいけない場面がたくさんありました。部下からすれば、「何で覚えてないんですか?」という言葉にせずともそんな気持ちを抱いていたと思います。

これは、部下も上司も幸せになれない構造です。上司である私が、いくら記憶力が良かったとしても限界があります。

▼解決策
私は、部下とのミーティングでは、必ず前回のミーティングの内容を振り返れる資料を用意してもらうようにしていました。他部署や上司とのミーティングも、必ず前提となる情報をミーティングの最初に読む時間を取ってから、当日の議題に入るようにしていました。

そうすると、お互いにある程度の共通認識を持ってミーティングを進めることができるようになりました。

報告書や提案書などの文章を書く際には、必ずこれまで起きた背景や前提を書いておいて、ミーティングの最初に読む時間を3分でも取ると、その後がスムーズに話が進むようになります。

上司が知りたいことと部下が伝えたいことの違い

上司が承認してくれない、話を理解してくれないということはよくあることだと思います。部下が上司へ報告書や提案書を提出しても、承認をなかなかもらうことができないのには、大きな原因があります。それは、上司が知りたいことと、部下が伝えたいことの違いです。

以下の図を見てください。

リーダーシップドック 上司の関心事

部下が伝えたい範囲が、大きな円の部分に対して、上司が知りたいことは意外と少ないのです。部下は、現場を見ていることが多いため、上司へ見たものすべてを伝えたいと思う場合が多いです。しかし、部下が一生懸命大きな円の部分を説明しようとしても、上司にとっては「うちの部下は話が長い」「結論は何が言いたいのか」と考えてしまいます。結果的に上司は承認せず、部下は「うちの上司は全然自分の話を理解してくれない…」となります。

これもまた、認識の違いによって両者が幸せになれない構造です。

▼解決策
上司は、部下が言いたいことに向き合って、最後まで話を聞いて理解に徹するべきです。そして、どんな報告書や提案書を書くことができたら、分かりやすくなるかを教育する責任があります。どういった要点を伝えて報告書としてまとめてほしいのか、どんな提案書を書いたら承認しやすいのかを部下に教育することが重要です。

一方部下は、上司が「どんな意志決定をするのか」を上司の立場に立って考えてから文章を書く必要があります。もし自分が分からない場合は、上司に「どんな情報があれば意志決定がしやすいですか」と直接聞いてみるのも手です。

私がプロジェクトリーダーの時は、報告書や提案書を見せる対象の上司が役員でした。役員の場合、会社としての意志決定をしたいので、より売上に繋がる提案文を書く必要があります。

前もって、文章を読んでもらう相手が「この文章を読んでどんな意志決定をしたいのか」を想像してから文章を書くようにしました。そうすることで、上司は判断がしやすくなります。

提案書の場合は、以下3つが明確になっていると上司は判断しやすいです。
・解決したい課題
・解決策としての選択肢
・その他(いつまでに、誰が、何をするのか、いくらかかるのか、など)

上司は、「ちゃんと部下が考え抜いて提案しているのか」を知りたかったたりします。ぜひ、これらを抑えて提案書を書くようにしましょう。詳しい提案書の書き方は、次回の記事でお伝えします。

上司も感情で動いている

上司は当たり前ですが人間です。上司も感情で動いています。いくら、これ以上ない提案書が書けていたとしても、上司が不機嫌であるなら却下されることもあります。

正直、人間同士なのでこればかりはどうしようもないですが、いくらか解決策があります。

▼解決策
上司とは、普段の雑談も大事にするようにしましょう。

特にランチの時間は、チャンスです。私は過去、会社でカレーを作って、上司を始めとしたみんなに食べさせることをよくやっていました。

当時は、自分で考えた新施策を動かすことよりも、カレー作りの研究に命をかけていたのを覚えています。(仕事しろと突っ込まれそうですが)意外とこういったことも良かったのか、当時月間MVPに輝き、カレーの効果も少しあったのではと思っています。

さすがに、カレーまで作る必要はないと思います。しかし、ランチの時間やちょっとした休憩時間に上司や同僚と雑談する時間は大事です。その時間に、提案書に書こうとしている内容を少しでも話しておくと、承認されやすくなることも多いのでぜひ試してみてください。

雑談は、相手の警戒心を解かす効果があります。雑談を続けると、自分が思っていないアイデアが生まれることもあります。

もし、自分から声をかけるのが苦手という方は、相手の服を褒めてみるところから始めてみるのはいかがでしょうか。服を褒められて嫌がる方はほとんどいません。話しかけたことをきっかけに、雑談が生まれるようになります。

ただし、あまりにも感情的に不承認する上司に対しては離れた方が良いかもしれません。

まとめ

今回は、文章を書く技術というよりも、文章を書く前に知っておくべき3つのポイントをお伝えしました。

結局、文章を書く技術は、ビジネスマン同士がより円滑にコミュニケーションを取り合うためのものです。コミュニケーションを円滑にとって共通認識を取ること、これが意外と難しいから文章を書く技術が必要になります。

そもそも文章を書く前から、構造的に上司と部下にコミュニケーションギャップが発生しやすい状態であるなら、今回ご紹介した内容のように対処しておく必要があるでしょう。

今回の記事を通して、前提や背景を文章にまとめておくこと、相手の立場に立って文章を書くこと、そして普段から会社仲間との雑談を大事にすることを心がけてみてはいかがでしょうか。