分かればとてもスムーズ!コーチング的「人と組織の問題解決法」

分かればとてもスムーズ!コーチング的「人と組織の問題解決法」

「隣の芝は青く見える」と言いますが、一見何の問題もなさそうな組織や個人でも、実は様々な問題を抱えていて、現場のリーダーの方々が問題解決のために日々奮闘している、ということはよくあることです。

特に人に関する問題、組織に関する問題は配慮すべきことが多く、単に「業務を教えれば良い」「できる人を採用すれば良い」「辞めてもらえば良い」という風に解決できないことが圧倒的に多いでしょう。

今日は、人と組織の問題に関して極力不要な人間関係のトラブルを起こすことなく解決し、組織の求心力を高める方法をご紹介したいと思います。

部下指導が人間関係のトラブルに発展する時、しない時

まず、個人の問題がどのように人間関係のトラブルに発展するか考えてみましょう。

例えば、仕事への意欲がない訳ではないが時々遅刻をしてしまうAさんという部下がいるとします。管理職であればAさんに何らかの形で指導しなければなりませんが、これが人間関係の悪化に繋がるかどうかは、指導する側の認識によって変わってきます。指導には以下の2つがあると思います。

個人の中にある「問題」と認識し非難する

「Aさん!またか?遅刻すんなって言ってるだろう?(だらしないな)」と、Aさんに内在する遅刻癖をAさんごと非難してしまう。

個人が取り組むべき「課題」と認識し課題解決を助ける

「今週は遅刻ゼロ回を目標にしたはずだけど、今日は達成できなかったみたいだね。遅刻の原因やAさんが考えている来週以降の対策を聞かせてくれる?」と、Aさんとは切り離された遅刻という課題に対して一緒に取り組もうとする。

すでにお気付きだと思いますが、人間関係のトラブルに発展しやすいのは①の方です。(図①参照)

「Aさんが悪い(Aさんに問題がある)」と、個人と問題とをセットで扱うと、むしろ防衛的になり問題の解決が遠のいてしまいます。上記事例の場合、Aさんの遅刻癖が直ることは期待できず、Aさんが上司に苦手意識や反発心を抱くことで人間関係がぎくしゃくするようになります。特に叱られることや指摘されることに慣れていない部下や後輩に対しては、この点に留意して接していただくことがお勧めです。

一方、スムーズに問題が解決しやすのは②の認識です。②のポイントは、図②のように個人と個人が抱える問題とを明確に区分して「課題」として認識し本人にもそのように考えてもらうことです。上司は自分を非難する存在ではなく、自分の課題解決をサポートしてくれる存在と思われればしめたもの。自律的に成長する道を歩みやすくなります。

ここでのポイントは、部下の問題を「課題」として個人から切り離して指導することです。

社員の抱く不満を貢献意欲に変える

問題を「課題」として認識することが好ましいのは、組織の問題も同様です。

「うちの会社ここが変だよね」「この会社っておかしいよね、転職を考えようかな」と鋭く会社や組織の問題点を見抜く社員がいた時、会社と問題をセットで考えるのではなく会社から問題を切り離して、自分が解決のために手を付けるべき課題として考えられるよう、方向付けが必要です。

現場で頑張っている社員であればあるほど、組織が抱える矛盾や問題を発見しやすいものです。そして正義感が強くて物怖じしない性格の人ほど口に出して言ってくるものです。そのような現場の声を聴いたときに、トップ層・経営層が「自分たちをけなされた」と考えないでください。仮に「不満を言う前に自分の仕事をちゃんとやれ!」と一蹴したり、むっとして取り合わなかったりすると、自分たち同士でだけ話して社内の不満分子化するか、本音を隠して言わないイエスマン集団になってしまいます。当然どちらもエネルギッシュな発展は望めません。

社員が組織の問題を発見した時は、まず問題を課題と認識してもらい「その課題を解決するために自分ができることは何か」を考えてもらいます。あるいは「その課題を解決できる役職に就いたらあなたならどうする?」と考えてもらいます。もし「自分だったらこうやって解決する」という構想が浮かんだら具体的に相談に乗ったり実践できるようにサポートしてあげることです。そのようにして「自分が組織の課題を解決できた」と感じられ評価もされたら、不満ばかりの社員どころか貢献意欲の高いエース級の社員へと変貌を遂げるのです。

最後に

今日は、個人と組織の問題を課題として切り分ける、ということをお伝えしました。

ところで、最も切り分けるのが難しい組織の問題は何でしょうか。「リーダーの人格問題」です。もし、リーダーの人格的な問題で組織が立ち行かないのであれば、それを部下たちが切り分けて認識するのは困難ですから、自分自身を厳しく顧みることも必要でしょう。