あなたはどう接する?自分へのイメージが強く「自己肯定感が高い人、低い人」

あなたはどう接する?自分へのイメージが強く「自己肯定感が高い人、低い人」

人は、人生の道を進んでいくと「評価」というものにぶつかる時があります。各種のテスト、受験、就職、恋愛、友人関係などがそうですね。そういう中で、いつの間にか「自己評価」というものが出来上がっていきます。みなさんは、自分の価値がどのくらいあると思いますか?また、その「自己評価」や「自己肯定感」というものは、果たして本当に合っているものなんでしょうか。

自分が持つ「自分に対するイメージ」があまりにも強い人は、そのイメージがプラスにせよマイナスにせよ、挫折に弱かったり、組織で行動することが難しかったりすることがあります。

リーダーの皆さんは、「自分はこういう存在だ」というイメージが強い人と一緒に任務に当たることがしばしばあります。今日はこういった人材をどのように扱うべきか、一緒に考えていきます。

「今の自分」にこだわらない

自分のことを、部分的には知っていても、完全に正しく知っている人は存在しないと思います。聖書を読むと、神様は人間に「成長」の祝福を与えたと書いてあります。時の流れと共に価値が上がっていくものと、下がっていくものがありますが、神様の視点で見るならば「人間の価値は徐々に上がっていく」と考えるべきです。20歳くらいを境に肉体は衰えていきますが、知恵や能力、品格、技術などはどんどん高めていくことができるのです。

まず「自分へのイメージ」が強い人への接し方として、「過去と今の自分」にこだわりすぎている場合が多いので、その「こだわりという古い服」を脱がせてあげることがリーダーの役割だと思います。これまでの蓄積で「自分という像」が出来上がっていますから、これから「一緒に新しく作っていこう」と提案してみるのはどうでしょうか。その前提の上で、リーダーが接してあげることができれば「未来に向かう」という同じ方向を向いて、一緒に現在地点を確認することができると思います。

タイプ別の接し方

「自分はこういう人だ」というイメージが強い人のうち、「自分は何もできない」というような「自己肯定感が低い」人と、「自分は特別だ」と考える「自己肯定感が高い人」がいますが、両極端です。2つのタイプに分けて対応方法を考えていきます。

自己肯定感が低い人

日本人は「雑草魂」というものが好きですが、自分の価値を問われた時、「私なんて雑草のようなもの」「石ころのようなもの」という人が多いですね。「謙遜」が美徳とされる日本では、自己肯定感が低い人が多いと思います。その原因は、家庭環境や育ってきた過程など様々で、一概に「これが原因」とは言えません。

自己肯定感が低い人にリーダーが取るべき行動は、私は2つだと思います。

①その人の存在自体の価値を認め、言葉で伝えること

「その人がいてくれて嬉しい、感謝している」といったリーダーの「プラスの感情」を言葉で伝えることです。

②その人の長所を伝えること

これは感情ではなく、「客観的に見た強み」を伝えることです。

この2つを集約するエピソードがありますが、私は色黒でホクロが多いため、小学生の時に「ホクロ星人」とか「ホクロゴリラ」と言われたことがあります。今考えるとひどい話ですよね(笑)。言われた後にすごく気になってしまい、「ホクロは引っ掻いていけばなくなる」と誰かが教えてくれて、顔のホクロを引っ掻いてみたものの、なくなりません。母親にホクロを引っ掻く姿が見つかって、止められた時、こんな質問をしてみました。

「お母さんは、ホクロがある僕とホクロがない僕は、どっちがかっこいいと思う?」

母からはこんな答えが返ってきました。「お母さんはあなたそのものが好きだから、ホクロがあるあなたの方が好きよ。」

この答えを聞いた時、「そういうことを聞きたいんじゃないんだよなあ〜」と思いながらも、悪い気はしませんでした。

母親は続けて僕に言いました。「あなたは笑顔が素敵だから、いつも笑っていたらホクロなんてシワの中に隠れちゃって見えないわよ。」

私は、そうなのかなぁと思いながらも、「笑顔が素敵だ」と言われたので、笑顔でいる努力をするようになりました。それから次第に、「いつも笑っているよね。なんかいつも嬉しそうだよね」と言われるようになり、笑顔が私の長所になり、明るい性格になりました。

母親は、当時の私にとっては人生のリーダーでしたが、最高の模範となる教育をしてくれました。今は私も、そのような愛を持って、自分が関わるすべての人に接していこうと努力しています。

自己肯定感が高い人

自己肯定感が高い人への接し方は、リーダーにとって特に難しい課題です。「自分は優秀だ」「自分は特別だ」と思っている人が多いですが、こういう人材をどのように扱うのかは、そのリーダーの力量が試されると思います。

実際のところ、自己肯定感が高くても、能力はそこまで高くないという場合も少なからずあります。そういう場合、その人は組織で浮いてしまいがちですし、「リーダーや組織は私を正しく評価してくれない」と思ったりします。自己肯定感が高い人にリーダーが取るべき行動は、私は3つだと思います。

①長所を褒めること

「機嫌を取る」とか「てなずける」といった邪な心によるものではなく、実際の長所を認めることで「私はあなたを尊敬している、認めている」という意思を表現します。

②自分から見て改善してほしいところを伝えること

指摘や上から目線の言葉ではなく、「自分から見てここをこう直したらもっと良いと思う」ということ誠実に伝えることです。

➂その人から見た自分や組織へのアドバイスを聞くこと

最後に、その人の意見を誠実に聞くことで、「一緒にやっていきたい」という意思を示すことです。

上記3つの中では②が重要だと私は思うのですが、それはリーダーには「人を作る」という役割があると思うからです。やたらと褒めれば良いのではなく、自分の直すべきところを直さないとその人は一生苦労します。リーダーは「ただ褒めて事なきを得る」のではなく、その人がもっと成長できるように、真剣にその人のことを考えるべきだと思います。

リーダーの役割

任務を任せる

プラスにせよ、マイナスにせよ「自分に対するイメージ」が強すぎる人にリーダーがどのように接し、成長させるかですが、正直言って「これ!」という答えはないと思います。そんなに簡単ならば、苦労はしません。リーダーが覚悟を持って、逃げずにその人と向き合う中で答えが見えてくることでしょう。大変かもしれませんが、その人にとっても、リーダー自身にとっても、組織にとっても成長する機会になるかもしれません。

1つだけ方法を挙げるならば「どんな形でもいいから任務を与える」ということだと思います。

人間は何かの役に立っていると思う時、存在意義を感じ、自ら組織への所属意識を持つようになります。そして、人が人を成長させることには限界がありますが、任務や位置によって人は責任を果たしながら成長していくものです。リーダーが「その人にどんな任務が最適か」を悩み、任せることが一番大事なミッションではないでしょうか。

その任務は、例えば責任の大きな任務でも、予算がつかないような責任が重くない任務でも良いですし、既存にない新しい任務でも良いと思います。どんな任務も組織には必要ですから、その必要性を説き、任務を果たす経緯の中で、信頼関係を築き、その人の「強すぎる自分に対するイメージ」を壊していけたら良いのではないかと思います。その人に「どんな任務を任せるのか」がリーダーが最も神経を使うところではないかと思います。

すぐに助けない

人によって適切な助けとコーチが必要ですが、特に「自己肯定感が高い人」に対しては、すぐに助け舟を出すべきではないと思います。人は、挫折を味わった時に、自分の限界にぶつかった時に、成長するものです。リーダーは「任務を続けるのが大変です」と相談されることも多くありますが、「何が大変なのか」を確認し、大変に感じていることを解いてあげることは必要とはいえ、簡単に任務を辞めさせたりするべきではないと思います。
また、過度に口出しをしたり、手助けをしたりも簡単にはせず、自分で考えて乗り越えられるように我慢することも、リーダーの役割だと思います。

まとめ

リーダーは1日にしてなれるものでもないので、たくさんの経験、実践が必要です。メンバーに接する時、過去の経験や学びの中で、「自分だったら一番してほしいと思うこと」を、メンバーにしてあげるべきではないでしょうか。自分のことのように思う、愛情と真実な心が一番大事であり、行動の答えに導いてくれることでしょう。その自分の行ないが、更にリーダー自身を成長させていくのではないでしょうか。

「まちがってはいけない、神は侮られるようなかたではない。人は自分のまいたものを、刈り取ることになる。すなわち、自分の肉にまく者は、肉から滅びを刈り取り、霊にまく者は霊から永遠のいのちを刈り取るであろう。わたしたちは、善を行うことに、うみ疲れてはならない。たゆまないでいると、時が来れば刈り取るようになる。だから、機会のあるごとに、だれに対しても、とくに信仰の仲間に対して、善を行おうではないか。」(ガラテヤ人への手紙6章7〜10節)