若者が活かされ、活躍する組織になるために

若者が活かされ、活躍する組織になるために

はじめに

若い世代の台頭なくして、社会や組織の存続、発展はありません。組織や社会が成長を目指すならば、新しく優秀な人材の確保は必須とも言えます。私の周りでも、会社や個人事業のみならずNPO法人などでも、後継者不足により解散を考えなければならないケースがかなり多く見られます。生産年齢人口の減少という深刻な課題を抱える日本社会において、若者をどのように活かすかというのはとても大きな課題です。今日はこの課題にリーダー、若者の両方がどのように取り組んで行くべきかを考えていきます。

若者とは

尾崎豊の歌詞に共感し、大人社会への疑問を持った頃からだいぶ久しくなりましたが、国会議員の世界では50代でも「若手政治家」と言われていますので、まだ若手だと勝手に自負している筆者です(笑)。そもそも、「若者」の明確な定義はない訳ですが、厚生労働省における若年者雇用の定義では15〜34歳まで、内閣府が行なった若者の意識に関する調査では15〜39歳が対象となっています。今回は20代〜40歳未満くらいの、いわゆる青年層を若者とした前提で記事を書かせていただきます。

リーダーがすべきこと

まずリーダーに求められることは、若者たちを「理解しようとする」ことです。若者たちが育ってきた環境や、乗り越えていくべき課題、抱えている悩みは、先輩経営者やリーダーたちとは当然違うので、「俺は全部乗り越えてきたから知っている」と考えた時点で失敗です。結婚した夫婦でも相手を理解することは難しいのですから、人間は相手のすべてを理解することはできませんが、「理解しよう」と努力することは誰でもできます。

消費行動という観点で見てみましょう。ニッセイ基礎研究所の調査(2020年3月)では、若者の特徴として「所有より利用」志向が高いとされています。高額なものを所有することよりも、サブスクやシェアによる「必要な時に必要な分だけ使う」という価値観への変化は、特に若者世代で見られる特徴です。

「いつかはクラウン」とまで言われた日本を象徴する高級車「クラウン生産中止」のニュース(2020年11月トヨタ発表)は、衝撃と共に時代の変化を知らせてくれました。高級車やマイホーム、別荘の所有などに価値を見出していた時代から、カーシェア、住居シェア、家具レンタルなどが流行する時代になりました。

時代が変化すれば、当然時代の中で暮らす人々の考え方も変化します。まずリーダーに求められることは、若者たちを「理解しよう」とすることですが、ここで注意すべきは、経営者・リーダーは「理解しようとしている」と主張するのに、若者側は「理解しようとされていない」と主張するケースが見られることです。理解するために、具体的にはどのように行動するべきでしょうか?

リーダーが若者を理解するためにする、3つのこと

「理解しようとしている」「理解しようとされていない」という食い違いをなくすために、どうしたら良いでしょうか。双方の歩み寄りが必要ですが、力のあるリーダーの側が動くべき3つを挙げてみます。

1 話し合いの場を持つこと
2.位置と権限を与えること
3.守り、助けること

話し合いの場を持つ

話し合いの目的は、あくまでも組織の発展や改善であり、双方が本音で話し合い、具体的な行動に繋げることが重要です。

また、この話し合いは不定期ではなく、定期的に行なう必要があります。不定期開催によくあるパターンとして「話す時間を持てて良かったです」と双方が話したのに、そこで出た話題が忘れ去られ、「あれ?あの話って結局どうなったんだっけ?」ということがあります。定期的に行なうことで議事録が残り、変化も確認できますし、次回までの課題も設定しやすくなります。

組織の人数や規模にもよりますが、少なくとも1〜2ヶ月に1回は定期的に持つべきでしょう。話す人数は多くても10人以下が適切です。
・社長、専務、営業部長
・若手社員代表数名
と、リーダー・経営者側も複数いることがチェック機能が働くため望ましいです。組織に若手社員・メンバーが多い場合は、代表者を立て、人数が多すぎないようにすることが重要です。

若者たちの要望や改善案をきちんと経営者・リーダー側に伝え、その場あるいは期日までに経営者側がきちんと回答し、行動に繋げるところは一緒に責任を負うべきです。

ちなみに若者とリーダー側の交流やコミュニケーションが目的の場合は、全員参加の触れ合いの場を不定期で持てば良いでしょう。

位置と権限を与えること

若者の価値や存在の大きさを「理解している」ならば、リーダーや経営者は、若者に権限と役割を与えるべきです。

「これはやっている人がいるからポストがない」ではなく、足りていないことを探し、作れば良いのです。組織の側は新参者に対して寛容であるべきで、仮に自分がやってきた役割があるならその役割を任せ、自分は次の役割に挑戦することが理想です。組織としても、人ありきの組織から、役割ありきの組織へと転換することができ、発展します。

積極的に役割や位置を作り出し、若者にきちんと権限を与えることがリーダーの役割です。

守り、助けること

若者はエネルギーと行動力はあっても、当然経験がないのでよく失敗します。その時にリーダーがどうするかで、若者が育つかどうかが変わります。

「ほら言った通りでしょ、知らないよ」と言ってダメ出しをして芽を摘んでしまうのではなく、失敗の原因は明らかにしつつも、長い目で見た成功に変えてあげられるように一緒に努力してくれる先輩リーダーがいるなら、若者はどんなに心強いことでしょうか。先輩リーダーは「否定せずに一緒にいてくれる」だけでも大きいのです。

失敗した時に守ってもらった人は、同じように自分も行動します。そうすると組織の中に、「先輩が責任を負い、若者を育てる」という文化が作られるのです。

絶対に若者を育てるというリーダーの危機感と覚悟

「老人はあらゆることを信じる。中年はあらゆることを疑う。若者はあらゆることを知っている。」と言ったのはオスカー・ワイルドですが、組織や社会においても、繁栄や存続を信じるだけでは、確実性はありません。危機感を持って、次世代の育成に組織や社会全体が取り組むべきでしょう。

国のリーダーと言われる日本の首相の平均年齢は62歳だそうですが、世界平均では52歳、フィンランドでは2019年に当時34歳の女性首相が誕生しました。

日本では「失敗しない」「周りに迷惑をかけない」ということが重要視されるため、少々危なっかしく心配な人には権限を与えない傾向があります。しかし、世界ではどんどん新しいリーダーが誕生していて、数多くの失敗もありますが、これまで考えられなかったような成功もどんどん生まれています。

世界の中で、「これからも日本が素晴らしい国である」と胸を張って言える時代ではなくなりました。ダイバーシティ、多文化共生といった言葉が当たり前となった現代において、リーダーも多様な存在が必要です。そうすれば、若いリーダーは次の若いリーダーを育てます。

今のリーダーたちは自分の保身や組織の安定だけを考えず、これまで得てきた全てを注いで次世代を育てるという気運を高めていくことが必要だと思います。
「若い」というのは単に年齢のことだけを言うのではなく、固定観念がなく、これまで当たり前とされてきたことを見直し、リスクを過度に恐れずに素早く行動を起こせることです。自分も若いリーダーであり続けることが、若者を育てられる秘訣ではないでしょうか。

若者がすべき3つのこと

では、若者たちは何をすべきでしょうか。3つを挙げてみます。

1.自分がいることの価値を認識する
2.参加する
3.参加し続ける

自分がいることの価値を認識する

これはお世辞ではなく、いるだけで価値があり、重宝されるのが若者です。新入社員を1人採用するためには給与の2〜3倍のコストがかかると言われていますが、家庭でも子どもが生まれるとものすごいお金をかけてでも、その1人を育てます。

神様はあまりにも人間をつくりたかったから、宇宙、地球までも長い歳月をかけてつくり、人間が住める環境を用意して最後に人間を創造したと聖書には書いてあります。

私たちもそのような投資をしてもらって、生まれ、育ってきたということです。もちろん、今は何かを生み出すことはできないとしても、存在しているだけでも価値があるのです。まずは育てられてきた、作られてきた自分の価値を知ることです。

そして第二に、これから作ることで生じる価値があることを知ることです。ただの土も作れば貴重な陶磁器になるように、努力して自分を作っていけばどんどん価値が増していきます。その潜在価値を含めて、自分の価値を知らなければなりません。自分が自分を認めてあげなければ、どんな人が認めてくれても、幸せではないのです。

参加すること

若者たちが参加しないとよく言われることが、政治です。しかし「誰に投票しても変わらないから投票に行かない」というのは責任放棄です。投票に行くだけで少なくとも自分の中では何かが変わるし、気づきや発見はあります。

そもそも投票権がある、ということだけで1人としての価値があるのです。一般人に投票権がない時が、ほんの最近までありました。社会を作るというスタートラインにすら立てなかった訳で、そこから参政権を得るためにものすごい努力と投資がされてきました。そのようにして苦労して得た権利を使わず「意味がない」と行使することを諦めたら、最後は自分が損するだけです。

政治に関わらず、「周りが動いてくれない」「自分がやっても変わらない」と言い訳しないようにしましょう。周りには動けない理由があるのだから、動ける自分が動けば良いのです。人のせいにしないで、問題意識があるならば解決するために行動することです。行動を起こせるというのが若さですから、若者ならば行動し、参加しましょう。じっとしていても何も始まりません。

参加し続ける

参加すると、何かしらは感じるようになります。目的や目標を持つようになり、問題意識も生じてくるでしょう。その時に、自分が一瞬だけ参加するのではなく、参加し続けることです。

一瞬だけ参加するならばお客さんに過ぎません。大事だと思う組織や社会なら、お客さんにならずに一緒に参加し続けることで、自分も一緒に組織や社会を作っていけるようになるのです。

自分が参加することで組織や社会が良くなり、一緒にいる人や更に新しくこれから来る人をも活かし、組織や社会を発展させていくならば、嬉しく幸せなことではないでしょうか。

私の人生の師の言葉を紹介します。

「1人でやるべきことがあり、共同体で集まってやるべきことがある。だからあなたはみんなでやるべきことを1人でやって、大変だと言ってはいけない。だからといって、1人でやるべきことを無駄に何人もの人でやってもいけない。」

最後に

今回は若者が活かされ、活躍できる組織の作り方について考えてきました。若者には未来があります。若者を育てる未来を描き、行動することは、組織や社会に明るい未来をもたらしてくれるでしょう。

「若者たちよ。あなたがたに書き送ったのは、あなたがたが強い者であり、神の言があなたがたに宿り、そして、あなたがたが悪しき者にうち勝ったからである。(ヨハネの第一の手紙2章14節)」