感謝の文化が組織を強くする 「ありがとう」を伝えよう

感謝の文化が組織を強くする 「ありがとう」を伝えよう

はじめに

皆さんは、1日にどれくらい感謝の気持ちを伝えていますか?また、感謝の言葉をもらっていますか?

2018年、エン・ジャパンがユーザー向けに「仕事のやりがいと楽しみ方」についてアンケートを実施したところ、約9000人から回答があり、仕事のやりがいの第1位は「お礼や感謝の言葉をもらうこと」(62%)でした。

感謝、というと個人的なことのように思えますが、実は重要な仕事のモチベーションであり、感謝の文化がある会社ほど仕事満足度が高い、という報告もあります。

最近では、サンクスカードや感謝メッセージなどを取り組みに掲げる企業も増えてきました。

今回は、そんな「感謝」の効能と組織に与える良い影響についてお伝えします。

感謝の効能

感謝とは、相手が自分にしてくれたことの価値に気づき、その反応を表現することです。

感謝研究の世界的権威、アメリカのロバート・A・エモンズ博士は感謝に関する様々な実験を行なっています。

日常の出来事から感謝を綴る「感謝の日記」を8~80歳までの1000人以上の人々に3週間続けてもらったところ、以下のような効果が表れていました。

健康面での効果

免疫の強化/痛みの軽減/血圧の低下/運動意欲、睡眠、目覚めの質の向上

心理面での効果

ポジティブな感情の高まり/気づく、活動的になる、覚醒する/喜びと楽しみの向上/楽観的になり幸福感が高まる

社会的な効果

親切になる、寛大になる、思いやりを持つ/許せるようになる、社交的になる/孤独感、孤立感の低下

感謝の念が生じると、脳の中にポジティブな感情を引き起こすドーパミン、オキシトシン、エンドルフィンが生じ、以上のような効果をもたらします。

より効果的な感謝の方法

感謝に関しては、作法がある訳ではありませんが、いくつかのポイントを押さえるだけで、自分にも相手にももっと良い効果が生まれます。

気づいたときに伝える

相手がいる場で反応できる場合は、そのまま伝えれば良いのですが、時間が経ってからだとなんとなく「今さら…」と思うかもしれません。

しかし、過去のことであっても、気づいたときにすぐ伝えるのが一番です。

例えば、パートナーや親からしてもらったことなど、年数を経て初めてありがたさを感じる場合も多くあります。伝えると、相手はその時のことを思い出し「この人は、物事の価値が分かり、時間が経っても感謝ができる人だ」と信頼を寄せるようになります。

早い遅いに関わらず、自分が気づいた時に都度伝えると、感謝が体質化していきます。

具体的に伝える

できれば、5W1Hとまではいかなくても、具体的に伝えてみましょう。

「昨日はありがとうございました。」でもある程度察してもらえますが、その後続けて具体的に起こったこととありがたさを感じた内容を伝えることで、相手にも具体的に記憶が戻り、何気ないことでもやった甲斐を感じるようになります。

例)
①昨日の会議ではありがとうございました。〇〇さんの一言で会場の雰囲気が変わり、議論が活発化しました。なかなか意見が出ず、議長として進行に困っていたところ、とても助かりました。

②日曜日は、長い時間私の買い物に付き合ってくれてありがとう。大きな買い物だったから一人で決めるのは怖かったんだよね。あれこれ客観的に言ってもらえて参考になった!

何度伝えても良い

回数を重ねて伝えることは、あなたがそのことに価値を感じていることの現れです。

感謝された方は気分が良くなり、背景や経緯を説明して、もっと価値を分かるようにしてあげようという気持ちになります。その繰り返しが信頼関係を深める機会になります。

感謝される側の反応

感謝を伝えることは、受けた側にとって、自分の行なったことの価値を知る機会になります。自己肯定感が高まり、その価値を教えてくれたことに、感謝の気持ちが生じ、もっと良くしてあげたくなります。

もし、思っても見ないこと、偶然的に起こったことで感謝されたのなら、今度は別の形で喜ぶことをしてあげようと思います。

いずれにしても、感謝の気持ちは、受けた相手にも感謝の念を生じさせ、お互いの心に良い相乗効果をもたらします。

また、よく感謝をしてくれる人を近くしたいですし、同じものをもらっても、より多く感謝する人に次はより多くあげたいと思うものです。

職場に感謝の文化を!

感謝し合うことは、ぜひ職場に根付かせてほしいことの1つです。

「仕事ではお金をもらっているのだから当たりまえ」と思っているならば、感謝の気持ちも湧かず、味気ない職場になってしまいます。

人間の脳は、考える方向の通りに、開発されていくため、感謝を意識することで、些細なことにも気づいて感謝するようになり、深い喜びが得られるようになります。

ある企業では、感謝スペースを作り掲示したところ、初めは挨拶など簡単な内容だったものが、1年ほどでより具体的な内容になり、仕事へのモチベーションが上がり、さまざまな業務改善に繋がりました。毎朝「感謝ミーティング」を行ない、社員の士気を高めているところもあります。

感謝は心を動かし、もっと価値のあることを行ないたい気持ちを引き出します。やらされていることは長続きしませんが、自分が好きでやることは、飽きることがありません。

また、職場での感謝の声がけは、組織への帰属意識やアイデンティティ、協力体制を産み出します。当然人間関係も良くなり、自分を肯定的に見てくれる人がいることで心理的安全性が生まれ、個人とチームのパフォーマンスが向上します。
感謝することが、目に見えにくい貢献を可視化し、組織を底上げする原動力になるのです。

終わりに

いかがでしたか?意外な発見もあったのではないでしょうか?

「いきなりいろんな人に感謝を伝えるのはハードルが高い」という人には、ポジティブ心理学の父、マーティン・セリグマン博士が提唱している「Three Good Things(3つの良いこと)」メソッドをお勧めします。

寝る前に、1日のことを思い出し、良かったことと、なぜ良かったかを3つメモするだけです。例えば、「家族がお茶を淹れてくれた。飲みたいタイミングだった」など、シンプルな内容で大丈夫。自分の考えの方向性が肯定的に変化し、感謝することが増え、自然と相手に感謝の気持ちを伝えられるようになります。

家庭でも仕事でも、感謝で溢れる生活を送っていきたいですね。

【参考】
Why Gratitude Is Good
ROBERT EMMONS | NOVEMBER 16, 2010
https://greatergood.berkeley.edu/article/item/why_gratitude_is_good/

Yes, Practicing Gratitude Comes With Legit Health Benefits
DANIELLE ZICKL NOV 28, 2019
https://www.runnersworld.com/news/a30003439/practicing-gratitude-boosts-physical-health/

感謝「される」よりも「する」人のほうが、仕事の意欲は向上する
マネジメントの専門家が説く、チームを強くする「感謝」の機能
https://logmi.jp/business/articles/326417