職場の空気~空気の支配から組織を変えるためには~

職場の空気~空気の支配から組織を変えるためには~

空気を読め。
あの人は空気が読めない。

皆さんも一度や二度ならず、聞いたことがあるのではないでしょうか?私は海外でも何年か働いたことがあるのですが、海外に較べて日本の職場や組織でよく聞く言葉です。

日本の組織で順応していくためにはこの「空気」がより重視される傾向にあると思います。良いように作用されていれば良いのですが、必ずしもそうとは限らないのがこの「空気」の怖いところです。

例えば、会議をイメージしてみてください。何かしらの会議で明らかに意見を言えるような『空気』ではなかった場合、違和感がある意思決定になりそうであっても、中々反対意見が出ないことはありませんか。

また、勇気をふり絞って問題提起をして見みても、受け入れるような空気感でない場合、周囲の人は賛同や反応ができない状況があったりまします。

やはり、「空気」は見えないですが、なかなか強い影響力がありそうです。

では、そもそも「空気」とは何なのでしょうか。まずは「空気」について見ていきたいと思います。

組織の「空気」の力

『「空気」の研究』著者の山本七平氏は、「空気」について以下のようなことを言っています。

「空気」とはまことに大きな絶対権を持った妖怪である。 一種の「超能力」かもしれない。

この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来何が起こるやら、皆目見当がつかないことになる。

「空気」は物理的な実態はないですが、私たちは日々の生活の中で忖度する場面が案外多いのではないかと考えます。

山本氏は「空気」がいかに支配的であるのか、戦時中の戦艦大和の出撃の意思決定の例を挙げています。

大和の出撃を無謀とする人びとに比べて、それを無謀とするに断ずるに至る細かいデータ、すなわち明確な根拠がある。だが一方、当然とする方の主張はそういったデータ乃至根拠は全くなく、その正当性の根拠は専ら「空気」なのである。

データや根拠による意思決定よりも『空気』による意思決定がなされた事例になります。

山本氏は組織の意思決定について、
①論理的意思決定
②空気的意思決定
の2つがあると考えています。また、その2つの意思決定の内、②空気的意思決定の方が強いと考えており、空気的意思決定について以下のように言っています。

それ(空気的意思決定)は非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として、『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力を持つ超能力であることは明らかである。

空気的意思決定は日本の組織集団の中で起きやすい事象であり、その過程で「空気」を尊重しながら進めていくため、参加者の意識の中で『責任の分散』が生じます。一人では全体の空気感には抗えない状況となってしまった場合、おかしな方向に話が進んでいても、いとも簡単に浅はかな意思決定に向かってしまいます。

「空気」には根拠に基づかない、意思決定に導く強力な力があることが分かります。

集団的無責任と状況倫理

空気的意思決定の問題は全員の意識の中で責任が分散されて「状況」により決定されるため、参加者は自分で決めたという自覚がありません。「状況」がそうだったから仕方なく賛同した(反対しなかった)となる訳です。

山本氏はこの空気をコントロールするものを「状況倫理」と呼んでいます。また、山本氏は日本人は特にこの状況倫理を安易に許容する傾向にあること言っています。

状況に依存しない善悪の基準を持った判断ができれば良いのですが、多くの日本人は閉鎖された組織空間の中で生まれた状況倫理に振り回され、優先してしまいます。

また、「状況倫理」がより優先され「空気」による抑圧が高まっていってしまうとより閉鎖的な組織が出来上がってしまいます。独自の状況倫理で組織が長期間運営されると、外から隔離され、変化を拒み、緩やかに衰退をしていきます。責任の意識も分散されているため、自分ごととして対処する人もいなくなってしまいます。

その中で組織が傾き、運営の失敗が重なり、そこに個人のメンツや部門間の利害関係も絡んでくると、組織には、隠したいことやごまかしたいことが増えていき、さらに空気の抑圧が強くなります。

そのような状況を変えるためにはどのようなことが必要でしょうか。

空気の支配から組織を変えるためには

空気に支配されないためには、その閉鎖性を崩すことが必要になります。閉鎖された組織は無根拠で過度な排他的思考に基づき、集団的無責任から自ら思考し実践する責任を放棄し、思考停止したままただ組織の「空気」に従属する状況に陥りやすい傾向があります。

その閉鎖性を崩すためにはただ空気が読めず、場違いな発言をする人には難しい。発言や言動が的外れであった場合、「空気」を変えるきっかけをつくることができず、ただ「空気が読めない人」として排除されて終わる可能性があります。

むしろ空気を敏感に察知しながらも、空気の状況を見極めながら①論理的意思決定へ変えて行く必要があるため、ただのKYではなく、あえて空気を読まないタイミングを見計らい、周囲の組織のメンバーを我に返らせ、現実を直視し、作られた空気を変えるきっかけを作ることができるリーダーが必要になります。

私は、そのようなリーダーになるためには「素直な実力者」になる必要があると考えています。

おかしいことはおかしいと思い、言語化し、発言することができる人格面「素直さ」とタイミングを見計らい、周囲のメンバーを我に返らすことができる計画や実行ができ、かつ説得力を持ち組織の意思決定を論理的意思決定に変換する力量が必要となります。

私も「空気」に支配されて誤った意思決定をしてしまわないように、読者の皆さんと共に「素直な実力者」になる努力を続けていき、「空気」の支配に縛られない組織のリーダーを目指して行きたいと思います。

《引用》『「空気」の研究』(文春文庫)

※本記事は、2021年12月23日に投稿された記事のリメイク版です。


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