自己評価を他者評価で決める人への処方箋

自己評価を他者評価で決める人への処方箋

日本人の中には他人に優しく平和な人間関係を好む人たちが多くいます。

・和を乱すことになるよりは、我慢や忍耐を選択する
・迷惑をかけるくらいなら、諦めることを選択する
・集団から浮いてしまうくらいなら、意見があっても言わないことを選択する

 これらの選択をする人は、日本社会の中で周りの人たちとうまく付きあっていくための処世術に長けているとも言えます。周囲とのトラブルを起こすことがなく平和な人間関係を築ける利点もありますが、本人の自己評価によって幸せ感に影を落とすケースもあります。今回は、親愛性が高い人が陥りやすい‘自分を幸せにしない考え方’について扱って参ります。

「人に喜ばれたい」という感謝欲

 米国心理学博士ハーバート・グリーンバーグ氏は、他人に親切で、争いを嫌い、平和な人間関係を望む人に見られる「感謝欲」について言及しています。感謝欲とはまさしく「感謝されたい欲求」で、自分が誰かに役に立てたと思える時、喜ばれる時に満たされる欲求・願望です。感謝欲が強い人はサービス精神が旺盛なので、周りの人たちに好かれることが多いです。嫌われることは滅多にありません。しかし、一方で、指導や叱責をすることが苦手で強い意見に流されがちです。また、強力なリーダーシップを発揮することが難しくなることがあります。

「感謝されてこそ価値がある自分?」

 この感謝欲がエスカレートすると、「他人から感謝されると自信が持てるし、感謝されないと自信が持てない」という心理に陥ってしまいます。そして、「他人からの良く評価されてこそ自分に価値があるように感じ、他人からネガティブな評価を受けると価値がない人間だ」とさえ感じるようになります。日本の世間体を気にする文化と雰囲気がさらに追い打ちをかけ、感謝欲が強い人であればあるほど委縮してしまうのです。他人を喜ばせながらも自分自身はオドオドと委縮して生きているとしたら、それはとても残念なことではないでしょうか。

他者評価は正確でも、公平でも、適切でもないことがある

 しかし、他人からの評価は参考になる場合と、全く参考にならない場合があります。特に評価する人の洞察力が低い場合、正確性も公平性も適切性も低いことは十分にあり得ます。

 例えば、「おまえってつまらない奴だな」と言われたとしましょう。それは、たまたまその人の期待に沿うような話ができなかっただけかもしれないし、悪い冗談で言ったことかもしれません。それなのに、その言葉を真に受けて「自分は相手を楽しませることができなかった」と落ち込んだり、ましてや「自分はつまらない人間かもしれない」と考えたりしたらナンセンスです。他人の評価を参考にするのは良いですが、それを重んじ過ぎたり安易に自己評価に結び付けたりすることは、極力避けなければなりません。

軸・判断基準を持つ

 そのためにはどうしたら良いでしょうか?実際、他人の目が気になる人が気にならないようになることは簡単ではないのです。

 答えは、自分の軸・判断基準を確立することです。「誰が何と言おうと自分はこれをやる」「誰が何と言おうと自分はこれをやらない」という判断をする根拠・理由が自分の中にあることが大切です。「感謝されたいから周りの希望に合わせることで良い」ということの連続では、軸・判断基準は確立できません。そのためには多くの人生のサンプルに触れて学んでいくこと、これが一番確実な方法です。

 例えば冒頭で「和を乱すことになるよりは、我慢や忍耐を選択する」という人の例を挙げましたが、軸・判断基準を持つには、少なくとも、

・和を乱さず成功した事例
・和を乱さず失敗した事例
・和を乱して成功した事例
・和を乱して失敗した事例
・我慢や忍耐で成功した事例
・我慢や忍耐で失敗した事例

の6つは他人の人生から学び研究することが望ましいです。何をもって成功か失敗か見極めるのが難しいかもしれませんが、それぞれの判断が後にどのような結果をもたらしたのかを確認することです。そのような作業を繰り返すうちに自分の中で軸や判断基準が形成され、感謝されたい願望を持ちつつも流されず自分の価値を見失うこともなくなるのです。そのようにして自分の軸・判断基準を持ててこそ、リーダーとして能力を発揮しやすくなります。

まとめ

 感謝欲の強い人は、人の役に立ちたい、期待に応えたいという素晴らしい精神を有していると言えます。人目を気にして委縮したり流されたりせず、自分の軸と判断基準を持つことで活躍されることを願います。

 

※本記事は、2019年6月1日に投稿された記事のリメイク版です。