運動がリーダーシップの質を高める可能性

運動がリーダーシップの質を高める可能性

はじめに


「持続的で断続的なストレスを受け続けたラットは海馬が委縮する。しかし運動をさせると、縮んでいた海場が元の大きさに回復することが分かっている。」

こちらは、ベストセラー「脳を鍛えるには運動しかない」で紹介されている運動と脳との関係を示す事例の一部です。海馬とは脳の中の「記憶の司令塔」と言われる大切な場所ですが、ストレスを受け続けることで委縮し、本来の機能が発揮されなくなります。そうなると、問題にぶつかった時、自分が置かれている状況を過去の記憶と比べられなくなり、

「こういう問題は過去にああやって解決できたからきっと大丈夫」
「あの人は博学だから相談すればヒントが得られるだろう」

などの建設的で前向きな考え方が一切できなくなると解説されています。この他にも、脳の機能と運動との関係が最新の研究結果を元に詳細に書かれている良書ですので、まだご覧になっていない方は一読されることをお勧めします。

リーダーシップは人格と切っても切り離せない

さて、リーダーシップ論・マネジメント理論の研究の起源を辿っていくと20世紀初め、アメリカにさかのぼると言われています。

その当時論じられていたリーダーシップ論は、主にリーダーの人間的な特性を研究するもので、ほぼ「人格形成」に関するものでした。誠実さ、責任感、寛容さなど、優れたリーダーが備えるべき特性についての研究が出発点となり、その後、組織や状況に応じたリーダーシップなどより科学的な理論が展開されていくようになります。

現在は「マネジメント・セオリー・ジャングル」と言われるほど多くの理論が存在しますが、原点は「リーダーの人となり」にあることが分かりますし、いかに時代が発展しようとも、リーダーの人間的な特性の向上なしにリーダーシップを向上させることは難しいと言えます。

人格は考えから、考えは脳で形成される

そのリーダーシップと密接な関係のあるリーダーの人格はどのように形成されるかと言うと、「持続的で習慣的な考え」によって形作られていきます。

では、その考えはどのように形成されるかというと脳の作用によります。つまり健康な脳であってこそ健全な考えが生じ、脳の働きが不完全であれば、不完全な考えを持つようになるのです。

いかに本来人格的に優れた人であったとしても、ストレスによって脳がダメージを受けると、冒頭でご紹介した通り、脳内の海馬の働きが抑制されるので考えも言動もおかしくなり、やがて人格さえも歪んできてしまいます。

つまり、リーダーシップにはリーダーの人格形成が不可欠だが、人格の根底にある考え・脳はいとも簡単にストレスによって傷を受けてしまう、ということを私たちは知っておく必要があるのではないでしょうか。

リーダーはストレスから全力で脳を守ること

実際、リーダーがフォロワーに対して人格的な対応ができるのは、心と考えが穏やかな時、余裕がある時だと思います。フォロワーに対して良く接してあげたい、でもできない、それはリーダー自身が辛いから、余裕がないから、と言わざるをえません

筆者自身もストレスを感じている時は、自分でも「もう少し余裕のある対応をすべきだったのでは?」と後から猛省するようなことが多々ありました。特に育児中は全く余裕がなくなってしまい、ついきつい物言いをしてしまい、良い母親とは?良い職業人とは?何度も学んできたはずなのに自分は一体何なんだ?と自己嫌悪に陥ったこともたくさんありました。

しかし、最近になってようやく「運動によってストレスを燃やし尽くして脳を守れば良かったんだ」と分かってきたのです。

筆者の場合

実は、約1年半前からジムに通い始めたのですが、心の余裕と落ち着き度が以前に比べて各段に変わりました。

以前から私のコーチに常々運動を勧められていましたが、「エレベータではなく、できるだけ階段を使う」くらいの気楽にできることしか実践していませんでした。ところが、ある時原因不明の体調不良(微熱がずっと下がらない状態)になってしまいました。その不調の原因を運動不足に求め、ジム通いが始まりました。

その結果、体調不良が解消しただけではなく、持ちが前向きになり、落ち込んだり卑屈な考え方をしてしまったりする頻度と程度が明らかに減ったことを、体感できるようになりました。また、筋肉量が平均を上回るようになり脂肪率は20%代後半から前半になったことで、疲れやすさも劇的に緩和されるようになりました。

最後に

リーダーシップと人格は切っても切り離せない関係にあります。しかし、その人格形成にとって重要な考えや脳は、ストレスによりダメージを受けてしまいます。

そこで効果を発揮するのが運動です。運動は心に余裕を生み出し、リーダーの人格を損なわない効果、質を高める効果を発揮します。そのことを科学的な根拠だけではなく、体験的にも痛いほど身に染みて分かったので、皆さんにもお勧めしたいと思います。

【参考文献】
脳を鍛えるには運動しかない(2015年,ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン著,NHK出版)

   
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