「何を成し遂げるか?」効果性の高い人生を目指そう~人生は材料×技術×時間で決まる~

「何を成し遂げるか?」効果性の高い人生を目指そう~人生は材料×技術×時間で決まる~

Vol 2 目的意識と効果性

シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」。第二のテーマは「目的意識と効果性」です。先行き不透明な時代(VUCA時代)においては、働き方がますます多様になることが予想され、今まで以上に働く人個々人の目的意識が重要視されるようになります。そしてその目的意識は、個人が社会やコミュニティにもたらし得る有益と効果へのコミット(決意)と切っても切れない関係があります。

はじめに

人生全般において、”物事を成し遂げるために必要な要素”を3つ挙げるとすると、皆様は何を思い浮かべますか。
今回は、<材料>と<技術>と<時間>であると定義して、お伝えしていきます。

身近な例を挙げると、料理は<材料>⇒食材、<技術>⇒調理スキル、<時間>⇒調理時間の3つが揃っている必要があります。もし最高級食材があって腕の良いシェフがいても調理時間が全くなければ料理を作ることは不可能です。また、シェフとがいて調理時間があっても食材がない場合、食材と調理時間はあっても料理スキルを持つ人がゼロだった場合も、何かの料理を完成させることは難しいでしょう。

少し物騒なたとえですが、紛争や争いを考えてみても、<材料>⇒武器、<技術>⇒武器を扱うスキル、<時間>⇒戦闘に要する時間が揃ってこそ、敵軍に勝利することができます。兵士がいても武器がなければ戦うことができませんし、銃があっても使いこなすスキルがなければむしろ危険です。武器と兵士が居ても戦闘時間が全くなければ、やはり戦いに勝つことができません。

このように、<材料>、<技術>、<時間>の3つの要素のかけ合わせで成就する事柄が世の中に多く存在するのです。

会社組織の運営も材料×技術×時間

会社組織も、材料、技術、時間の3要素が揃ってこそ正常に運営できます。<材料>⇒人材(もしくは経営資源全般)、<技術>⇒管理者のマネジメントスキル、<時間>⇒人材の勤務時間の3つが揃ってこそ利益が創出されるからです。

ちなみに、働き方改革が進行中の昨今、多くの企業で今まで以上に「生産性の向上」の必要性が叫ばれていますが、生産性を分かりやすく説明すると下の図のようになります。

インプット以上にアウトプットが大きいほど生産性が高いと言えます。つまり分母の「投下した労力・時間」が少なく分子の「成果」が大きいほど生産性が高くなりますが、前述の3つの要素を照らし合わせて考えてみると、働き方改革で「時短」を進めることで投下する<時間>を減らすのであれば、残りの2要素である<材料>と<技術>の質を高めてこそアウトプットの質と量を維持できることになります。

先ほどの料理の例ですと、時短をしても美味しい料理を作るためには、<技術>⇒高機能のAI家電と、<材料>⇒家電調理にふさわしい食材を揃える必要がある訳です。

これと同じく、従業員の勤務時間も短縮し、なおかつ生産性を高めようとするならば、<材料>⇒組織の人材を優秀にし、<技術>⇒管理者のマネジメントスキルを高めていくことがポイントとなります。

2019年8月に、日本マイクロソフト社が試験的に週3日休み制度を導入し、勤務時間が減ったにも関わらず生産性向上が落ちることがなくむしろ約40%向上させることができたことが、大きな話題となりました。この成功には様々な要因があると思いますが、1つの先進的なモデルとなったことは間違いないでしょう。

ここでのポイントはただ従業員の勤務時間を短くし精神論で乗り越えようとしたのではなく、従業員1人1人が生産性を落とさない取り組みをしたり、管理職も従業員の努力に頼らず徹底的な効果測定によって組織的な施策を講じたりしたことに、勝因があると理解することだと思います。

つまり、<材料>、<技術>、<時間>の中の<時間>が足りなくなったとしても、<材料>⇒人材の業務レベルと<技術>⇒マネジメントのレベルを向上させることで、成果と生産性を維持できた企業運営の好例だと言えます。

人生における材料×技術×時間で成すべきこと

さて、ここまでお伝えしてきた3要素の原理を、私たちの人生全体に拡大して考えるとどうなるでしょうか?人生における<材料>、<技術>、<時間>は次のようになると考えられます。

<材料>自分の身体、才能、長所、短所など
<技術>自分自身を活かす知恵、自己管理、セルフリーダーシップ、セルフコーチングなど
<時間>大人として活動できる10代後半から壮年期まで

私たちの人生においても、何かを成し遂げるために自分が持っている3つの要素を活用することが大切です。何かを成し遂げるための「何か」とは「たくさんお金を稼いだ」とか「社会的な成功を治めた」などの成果に限らず、社会やコミュニティに対してより良い影響力を与え得る「あらゆること」です。

例えば、社会の中の課題を発見し解決する、ボランティア活動をする、他者の幸せに貢献する団体を支援する、また心を豊かにする文学作品を残すなど、様々挙げられます。これらを成し遂げることができれば、生産性ならぬ「効果性の高い人生」と言うことができるでしょう。「効果」とは人が人生を通じてどれだけの業績を成し遂げられたか、社会に有益を残せたかどうかなのです。

トラは皮を残す。象は象牙を残す。そしてサメも骨を残す。あなたは何を残すつもりなのか。

人間の効果性を端的に表しているこの格言の通り、「自分が何を残すつもりで生きていてどんな有益を残すつもりで仕事をしているのか」に関して、明確な考えを持っている人こそが、これからの社会で十分活躍していくことが可能になります。

今後、さらに働き方は多様化し、組織の在り方も進化してくことが予想されますが、最も進んだ組織のとして注目を集めている「 ティール(進化型)組織」では、『自主経営(セルフ・マネジメント)』『 全体性(ホールネス)』『組織の存在目的』の3つが成功のポイントとして挙げられています。

ここでは、働く個人は組織が目指す成果のためにただ使われる立場ではなく、組織と対等な立場で、自分が人生で成し遂げたいことと、組織が目指す成果の一致を図り、全体が1つとなることを配慮しつつ、組織の存在目的を共有することが求められるようになりますので、発展した組織であればあるほど働く個人の「人生の効果」に関する観が明確である必要があるのです。

人によっては個人として成し遂げたいことと組織の方向性が一致するケースもあるでしょうし、自分が成し遂げたいことのために私的な時間を確保することを最優先にしてパートタイムの専門職として組織に貢献するケースもあるでしょう。

いずれにしても、自分が成し遂げたい何かを探求できるのは自分だけですし、会社の仕事を頑張っていれば出世もできるし会社に人生を委ねていれば何とかなると漠然と考える時代は、終わりを迎えていると言っても過言ではありません。

人生の時間には限りがある

今回は、物事を成し遂げるための3要素<材料>、<技術>、<時間>について、また人生の効果性についてお伝えしました。

3要素の内の<時間>はどんなに長く生きたいと願っても寿命を何十年も伸ばすことは不可能ですし、活発に活動できる期間はもっと限られてきますので、効果性の高い人生を生きるためには、自分自身という<材料>を開発し、自分を活かす<技術>を高めていくことがとても大切です。

最近は「やりたいことをやる」ことが良いと思われる傾向がありますが、その「やりたいこと」の内容次第では人生の後半になって虚しさを感じるケースも多いです。極端な例かもしれませんが、「やりたいこと」がパチンコやギャンブルだった場合、楽しく息抜きになるかもしれませんが、数十年続けても成果として残るものがないので後悔することは想像に難くありません。

また「やりたいこと」が「その時々に興味があること」だった場合、挑戦してみて失敗することを繰り返しているとやはり何事も成せない人になってしまいます。40代、50代になっても未経験の仕事にチャレンジするようではキャリア開発の面でも心配が多いでしょう。

やはり自分自身の素質才能の開発、そして生きる技術の習得が必要なのです。

読者の皆様が限りある人生という時間の中で、効果性の高い人生を送られることを願っております。