落ち着いて自分を見つめる~覚えておきたい自己効力感の高め方~

落ち着いて自分を見つめる~覚えておきたい自己効力感の高め方~

Vol 6 自己理解と役割の認識

シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」の第6のテーマは、「自己理解と役割の認識」です。自分を理解できる分、他者のこともよく理解できるようになると言います。また、自分の適性、長所短所、能力、実力、個性、才能などを詳しく把握してこそ、組織・社会の中でより有益な貢献ができるようになります。今後、今以上に自分で自分自身のキャリアを開発していく必要があるこの時、より深く自分を知り自分を作るために必要な観点を、数回に亘ってお伝えします。

はじめに

新しい環境に身を置いたり、新しいことを始めたりすると、本来の自分ではなくなってしまったような感覚に襲われることがあります。「同僚や後輩は上手くやっているのに、自分は最近何をしても上手くいかないし上手くいくようにも思えないこと」と感じたら、それは「自己効力感」が低下している状態かもしれません。

今回は、自信を失いそうになった時、本来のパフォーマンスを発揮するための自己効力感の高め方についてお伝えします。落ち着いて自分自身を見つめることで、自分自身のコンディションを管理していきましょう。

(この記事は2020年8月に投稿した記事のリメイク版になります)

自己効力感とは何か?

「自己効力感」はSelf-Efficacyの日本語訳です。この概念を提唱したのは、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラ博士です。

自己効力感には以下の要素が含まれています。

・他人ではなく自分が行為の主体であるという確信
・自分で自分の行為を統制できているという信念
・周りからの要請に上手く対応できている確信

簡単に言うならば「自分がやろうとすることは、自分でコントロールでき、きっと成し遂げられる」と思えることです。

自己効力感を失うと自信を失い、何をしても上手くできないような感覚に陥ります。しかし、自己効力感の高め方を知っておくと、上手くいかないことがあっても落ち込み過ぎず、また自信を失ったとしても早く立ち直ることができます。

自己効力感の高め方

自己効力感の高め方について、4つの情報源と効果的な行動についてお伝えします。

遂行行動の達成:何かを成し遂げる

どんな小さなことでも良いのでやり遂げた経験を積むことです。

例えば、ほぼ運動をしてこなかった人が、運動不足だからと明日から毎日1時間のランニングをしようとしても、心理的身体的な負担が高く、1日目はなんとかできたとしても、継続はかなり厳しいでしょう。しかし、1日15分のウォーキングなら心理的身体的負担も軽く継続は簡単です。そして物足りなくなったら15分から30分、30分の内の前半10分だけランニング…と徐々に運動強度を上げていくことで、ついには毎日1時間のランニングに到達できます。

まずは簡単にできそうなことから始め、一つ一つ成し遂げていく感覚が大事です。「やり遂げる」ことが、自己効力感を高め、次の問題解決に繋がっていきます。できないことが続く場合は、ハードルを上げ過ぎていないか見直してみましょう。

また、自分の過去の達成経験を把握するとより自己効力感が高まります。具体的にどのような行動がどのような結果を生んだかを整理し、自分の糧にしましょう。

代理経験:他人の成功体験を自分の経験のように感じる

上手くできている他の人の行動や結果を観察することで、自分がそれを経験したかのように感じ、自己効力感を高めることができます。

NHKの『プロジェクトX』や『逆転人生』など、何かを成し遂げた人のドキュメンタリー番組が人気なのは、自分の姿を重ね合わせ「自分も何かやってやろう!」という気持ちになるからです。

自分がお手本にしたい人のドキュメンタリーや自伝本を持っておくのは良い方法です。自分とかけ離れている人よりも、自分と類似点を持っている人の方がより共感しやすく、やる気になります。

また、成功事例を観察することで新しい観点が生まれ、行動の変化が生じます。職場や知り合いで上手に仕事をしている人や大きな仕事を成功させた人を見て、比較して落ち込むのではなく、良いロールモデルが近くにいると考えましょう。仕事の方法やコミュニケーションの取り方を観察したり、直接成功に至るまでの経緯を聞いてみると、新しい発見がたくさんあるはずです。

言語的(社会的)説得:「できる」と繰り返す

人は言葉が脳に多大な影響を与えます。繰り返し「できる」と自己暗示をすることも自己効力感を高めるのに非常に有効です。自分が好きな言葉ややる気になる言葉を壁に貼って繰り返し見ることも良いでしょう。

自信を失っている時には、自分を否定する人は遠ざけ、自分が一緒にいて心地良い人、自分を肯定してくれる人、自分の価値を認めてくれる人と積極的に関わりを持つようにしましょう。

自己効力感は、褒められれば高まり、批判されれば喪失します。しかし、批判は期待あっての批判です。ただの否定と受け取らず、もっと次元を高めていくための原動力としてポジティブに考えて生きましょう。

情動喚起:心身の状態が自己効力感の高低を左右する

身体の生理的な状態や、自分の感情の状態が自己効力感の高低に影響します。

元気な時はできると思うことが、疲労や寝不足の状態だとできないと感じます。また、気分が良いと肯定的で積極的になりますが、気分が落ち込んでいると否定感が強まり消極的になります。

そのため、心も体も「良い状態」に保っておくことが大事です。

まずは、健康習慣を生活に取り入れること。そして、自分をいつも気分の良い状態にしておくことです。

人によってそれぞれ違うと思いますが、ストレッチやヨガなどは、体もスッキリするし、やっている間は自分の体に集中しあまり他のことは考えないので良いリセットになります。自分の気分がアガるカフェや場所を見つけておくのもありです。

人に機嫌を取ってもらうのは大変ですが、自分で自分の機嫌を取るのは難しくないので、自分が心地良くいられることを見つけておきましょう。

まとめ

今回は、自信に繋がる自己効力感の高め方をお伝えしました。

自信を失ってしまうと、本来自分が持っているはずの能力や長所が十分に発揮されなくなってしまいます。自分の状態を落ち着いて観察し、自分をご機嫌にして、毎日を過ごしていきたいですね!