コミュニケーションのプロが使いこなすスキル「ラポール形成」とは?

コミュニケーションのプロが使いこなすスキル「ラポール形成」とは?

はじめに

ラポールとは、心理学用語で「人と人との間が和やかな心の通い合った状態であること、親密な信頼関係にあること」を指します。

上司と部下、クライアントと営業担当者など、ビジネスにおけるコミュニケーションでは、対話の本題に入る前にラポールを形成することが望ましいです。ラポールが形成されていない状態で会話を進めようとすると、相手が抵抗を示したり、態度が防衛的になったり、無反応になったりするからです。

実際、ビジネスコーチやカウンセラーなどコミュニケーションのプロと呼ばれる人たちの多くは、ラポール形成のスキルに熟達しています。

今回は、ラポール形成の代表的な3つの方法をご紹介します。

代表的なラポール形成の方法

ペースを合わせる(Pacing)

相手の会話のペース、思考のペースに合わせて、相槌のタイミング、頷きや話し方のスピードを合わせることです。

相手が早口で話す場合には、こちらもテンポの良い相槌やテンポの良い反応を示します。逆に相手がゆっくり話す場合には、こちらもそれに合わせてゆっくり頷き、語りかけもゆっくりにします。

話し方はその人の思考のペースに比例する場合が多いので、極力合わせることが肝心です。

姿勢・仕草を合わせる(Mirroring)

相手の姿勢や仕草に合わせて、同じ姿勢や仕草をすることです。

ちょうど鏡に姿を写してみているように、 相手が腕組みをしたらこちらも腕組みをし、相手が足を組んだらこちらも足を組むなど振る舞うようにするのです。

人は好意を持っている相手の表情や動作などを無意識に真似てしまう性質を持っています。コミュニケーションが円滑に進んでいる時には自然にミラーリングが起こっていることが、実験でも証明されています。

このミラーリングを意図的に行なうことで、相手に対して「あなたに好意をもっています」というメッセージを送ることができるのです。

気分・波長を合わせる(Sympathizing)

相手の気分や波長に共感し、合わせることです。

相手が笑っていたらこちらも笑い、相手が深刻そうなら、こちらも真剣な面持ちで話します。相手が残念そうにしていたらこちらも残念そうにし、相手が怒っていたら、こちらもその怒りを受け止めて「怒るのはもっともだ」と共感を示します。

相手と気分や波長を合わせるには、相手の感情に同調することを心がけることです。そうすることで、 相手にとって自分が「自分のことを分かってくれる味方」として認識してもらえるようになるのです。

以上、代表的なラポール形成のスキルを挙げました。単純なテクニックに思われますが、行なってみると、その効果の大きさを実感されると思います。

なお、ラポールの形成は、相手に気付かれないように行なうことがポイントになります。

例えばミラーリングを行なっている時に、相手から「なぜこの人は私の動きを真似るんだろう?」といぶかしく思われたら逆効果になりますので、あくまでもさりげなく行なうようことが大切です。

相手と上手くラポールが形成できた時には、相手の方がこちらの動きに無意識に合わせるようになります。例えば自分が体を傾けてみたとき、相手がワンテンポ遅れて同じ向きに体を傾けたとしたら、ラポール形成に成功したと見なすことができます。

個人的な体験談で恐縮ですが、コロナが流行る前までは私はよく電車の中でミラーリングの練習をしていましたので、方法をご紹介します。

車内が比較的空いている時、ボックス席ではない座席に1人で座っている人を探します。そしてその人の向かい側にある座席に座って、気付かれようにその人の動作や姿勢を真似します。10~15分くらい続けた後で、今度はこちらが足を組みなおしたり前傾になって本を眺めたりするなど、別の動きをしてみて、相手が無意識にこちらの動作を真似るかを確認するのです。相手が自分を真似てくれたらミラーリング成功、真似てくれなかったら失敗とみなします。

この練習は、相手が寝ていたりスマホ等の画面に夢中になっていると実践が難しいのですが、”相手に気付かれないようにラポールを形成する”という点で格好の練習方法だと思いますので、気が向いたらぜひ試してみてください。

まとめ

人と人とのコミュニケーションは、言語的メッセージ(言葉、話の内容など)と非言語的メッセージ(表情、しぐさ、姿勢など)の両方のやり取りによって進行していきます。

ラポール形成は非言語的メッセージによって相手に影響を及ぼすスキルですが、小さなメッセージの積み重ねがコミュニケーション全体に大きな影響を及ぼすことになります。ぜひ活用してみてください。