外資系企業で活躍し続ける日本人女性が伝える「人材の育て方&活かし方」<前編>
リーダーシップドックでは、各界で活躍するビジネスパーソンのマインドに焦点を当て、「日頃どんな考えや精神で仕事に取り組んでいるのか」をお聞きする「一流ナビ」シリーズをお届けします!
今回お話を伺ったのは、100年以上の歴史を持つ外資系グローバル企業で研究開発部のシニアマネージャーとして人材育成に取り組むSACHIさん。
前編では、ご自身のキャリアをはじめ、変化の激しいVUCAの時代に決定事項をチームに伝えるコツについて教えていただきました!
外資系企業の組織は状況次第で柔軟に変化。その中で育んだ製品開発と人材育成のキャリア
ー現在のお仕事について教えてください。
外資系企業で、アジアを主軸にする製品開発チームのシニアマネージャーを務めています。現在チームには10人ほどが所属し、2~3人ずつの4つのチームで構成されています。各チームのマネージャーとやり取りをしながら、人材育成や組織のマネジメントを行なうのが主な仕事です。私自身は直接のプロジェクトを持たず、各チームのプロジェクトを通して製品開発に関わっています。年間の開発数は、大きい開発が数件、小さな案件やマイナーチェンジを含めると50件以上、多い場合は100件ほどになる場合もあります。
シニアマネージャーとは、一般社員をまとめるマネージャーがいて、さらにそれをまとめる役割を果たす職位を指します。私の上司は海外にいますが、同じ職位の方は社長の直属の部下なので、社長に近い中間管理職だと言えるのではないでしょうか。
ーこれまでのキャリアについて教えてください。
日用雑貨の外資系企業で7年働き、その後今の会社に転職し、製品開発に関わって10年が経ちました。外資系ではニーズに合わせて組織がどんどん変わっていくので、部署異動はなくても、組織の変化に応じて仕事の内容が変わります。一言で製品開発に10年と言ってもその中ではさまざまな変化がありました。入社当初は日本向けの製品開発をしていましたが、数年後には日本がアジア・オセアニア地域に含まれたため、関わる国の数が増加。またその数年後、アジアとオセアニアを分割され、今はアジアの中で日本向けの製品開発を担当しています。
開発は、大きい国に向けて開発したものを他の国に展開。日本で作ったものを中国や韓国で売ったり、逆にタイで開発したものを日本に輸入したりしています。国によって作るものも違いますし、使い勝手、入っている量、人気のある味もそれぞれです。日本向けは包装が重要で、お客様からの要求事項が多いことが特長です。
ー転職のきっかけは?
以前の会社を辞めた理由は、所属していた部署が日本にはなくなってしまったからです。退社当初は全く別のことをしようと考えていました。海外でしばらく過ごし、帰ってきて次をどうしようと考えていた時期に、以前同じ会社で働いていた上司から声をかけられました。生まれも育ちも関西だったので、東京行きには躊躇しましたが、これも何かの縁だと思い、上京を決心しました。今ではチャレンジして良かったと思っています。
また、外資系は状況に合わせて組織を変えるものだということを若い頃に痛感させられたので、同じ会社に留まろうとは思っていません。これは外資系に勤める人には割と共通する感覚ではないかと思います。
コロナ禍でぶつかった判断の難しさと伝え方。納得してもらう鍵は、透明性と共感性だった。
ー仕事をしていて、難しいと感じることは何ですか?
VUCAの時代に入り、不確定要素が多く状況が目まぐるしく変わる中、迅速に適切な判断をしていくことに難しさがあります。
特に2020年の前半、新型コロナウィルス感染の初期は、感染状況や生命への危険性についての情報があまり掴めず、判断に苦労したことを覚えています。また、コミュニケーションを取ること自体が今までのようにはいかず、判断して決めたことを社員に伝えることも苦労しました。感染対応での私の役割は、社長と人事に正しく判断してもらうため、自分の部署の声を正しく届けることでした。
例えばリモートワーク導入当初は「保育園が閉鎖されたら?」「仕事部屋がない」「出社しないとできない業務がある」など様々な意見があり、それを一つひとつ聞いて、解決していく必要がありました。決定事項に対し現実的かどうかを見て、難しいと判断したら差し戻すことも。決定事項の伝達だけではなく、チームメンバーの意見を拾い、納得してもらうことを大切に考えていました。
ー納得してもらうコツはありますか?
透明性と共感性を持って話すことです。
判断する方もすべてを分かって決めている訳ではありません。そのことも含め、決定事項だけではなく、選択肢と決定までの背景や過程を伝えようとする透明性が大事です。例えば、選択肢がA・B・Cとあって、検討の結果Aになったとします。ただAになったという結果だけではなく、選択肢と決定までの過程と決定理由を伝えると、判断した人の思考回路まで伝えたことになります。100人いたら、何人かはB・Cが良いという人もいますが、選択の背景と過程を話すことで、総合的に考えてAにしたのだな、と理解してもらえるようになります。
もう1つは共感性です。コロナ対応で有名になったニュージーランドのアーダーン首相のやり方が良い例です。「自分は全部分かっている訳ではない」と透明性を持って伝えつつ、相手への深く共感を示しながら話されていました。大変なことが起こっている場合には「皆さんも大変ですよね」と一言添えることで、共感していることが伝わり、受け取る側の心に安心感を与えることができます。
失敗へには前向きに対応、時間管理は『7つの習慣』を参考に。
ー上手くいかなかったり、失敗した時の立て直し方は?
失敗したら、すぐに担当者で話し合い、問題点と改善点を考え、前向きに捉えられるように努めています。私はマネージャー業務の一環として採用活動にも従事してますが、せっかく採用した人が上手く定着できずに辞めてしまう時は、少しは落ち込みます。しかし、マネージャーと人事とすぐに反省会を開き、次の採用で活かすようにしています。
ー時間の管理はどうしていますか?
『7つの習慣』に出てくる「緊急度」と「重要度」で切り分けた4つの領域を意識して考えています。時間に追われると緊急性が高くて重要なことしかできなくなります。緊急性が高くなくて重要なことにどれくらい取り組めるかがポイントなので、時間に追われるより、時間を自分から追いかけるくらい、余裕を持った時間管理ができるようにようになりたいです(笑)
(インタビュアー:AI)
《参考》『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』スティーブン・R.コヴィー著, フランクリン・コヴィー・ジャパン刊
※後編は、大人になってからの成長や理想的なチームの在り方についてのお話です。お楽しみに!
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