メンタルが強い人は要注意! 「共感」マネジメントのすすめ
組織の中で頭角を現す人というのは、熱心だったり、仕事が早かったり、メンタルが強くタフな人が多いものです。
特に「先が見えない時代」と言われている昨今では、どの業界どの職種だとしても、手さぐりで仕事を進めなければいけない局面が多くなっているので、精神的な健全度やストレスに対する耐性がとても大切だと言えます。しかし、そういう方々が組織の中で昇進し、部下や後輩のマネジメントに当たるようになったら、必ずマスターすべきなのが‘共感’マネジメントです。なぜなら、精神的にタフでへこたれない人というのは、裏を返せば「弱者の心理を理解しづらい」ともいえるからです。タフさと鈍さは表裏一体でもあるのです。
そこで、タフな人がリーダーシップを発揮するために求められる、共感マネジメントについて説明していきましょう。
1)共感マネジメントとは
‘共感‘マネジメントとは、部下や後輩・一緒に仕事をする人たちと心情を分かち合えるポイントを意図的に増やしていくことで、仕事の目的や達成したいビジョンを共有する心理的土台を作っていくマネジメントのことです。その共感のポイントは、「今日は寒いね。」など、日常生活の中の些細なことでも構わないのですが、気持ちを吐露する⇒お互いに共感という経験が、個人対個人の疎通の効果を高め、組織の風通しを各段に良くすると言われています。
2)共感力アップが求められる理由(1) 「感情の時代」
なぜ、精神的に健全でストレスへの体制が高いリーダーが、共感マネジメントをマスターすべきでしょうか。第一に、世の中全体が「感情の時代」に差し掛かり、有能だけで繊細な人材が過去とは比較できないほど増えていることが挙げられます。現在は、スマホで調べればどんな情報も得ることができますが、同時に「分からないながらも手探りで進める」という泥臭い経験をする機会が、格段に減ってしまいました。その結果、情報感度が高くてノウハウも熟知していているけど、実践によって精神が鍛えられていないので、他人からの評価や言葉に傷ついたり衝撃を受けたりする人も相当多くなりました。
3)共感力アップが求められる理由(2) 「自分が思っているほど共感できていない」
第二に、ストレス耐性の高いリーダーには、精神を鍛えてそうなったタイプの人と、先天的に楽天的で無頓着な性格の故にそうなった人が存在し(両方のミックスの場合もあります)、後者の場合は表現を変えると「鈍感な人」とも言えます。鈍感なリーダーは、情報過多で繊細な部下の悩みや苦悩を理解できず、「とにかくやればわかる」「失敗しても死にはしない」など、やや乱暴なマネジメントになりがちです。
数年前の調査になりますが、私が主宰するNPO法人で管理職と部下それぞれ100人に対してマネジメントに対するアンケートを取ったことがあります。特徴的だったのが、上司の7割超が「自分は部下の気持ちに共感している」と自己評価したのに対して、「上司が自分の気持ちを分かってくれる」と回答した部下は3割未満でした。また「上司の言葉がきつくて辛い」「上司の態度に怖さを感じる」等、上司に対してネガティブ感情を持っているという回答もかなりの数でした。
このことは部下のご意見伺いをしなさいという話ではありませんが、言葉1つ態度1つで、心の海に波が立ちやすい部下・後輩が増えていることを知っていることは、マネジメント上有益ではないでしょうか。
4)どうすれば共感できる? 「声かけ」から始めよう
具体的に部下の何に共感してよいか分からない時は、「大変だね」「遅くまでお疲れさま」などのねぎらいの言葉、「すごいね」「びっくりだね」などの感嘆の言葉、「嬉しいね」「やったじゃん」など喜びの言葉の声掛けをするところから始めて頂くのが良いと思います。もちろん、部下が何の苦労もしていないのに、「大変だね」と声掛けされても部下は当惑すると思いますが、反応を見ながら修正していけばよいと思います。また相手の語調や言い回しをまねることも、共感の効果を高める効果があります。オウム返し話法のように、部下の言った言葉をそのままリピートすることでも構いません。
精神的に健康で鍛えられているリーダーは、いわば精神の世界でのアスリートのようなものです。一般人はアスリートと同じ運動メニューにはついてこれないので、仕事におけるマネジメントでもより繊細な人たちへの配慮が大切なのです。
5)まとめ
精神的にタフな人、つまり精神的な健全度が高く、ストレス耐性のある人は、先が見えない時代においてとても大切な性質を持っていると言えます。
一方で、弱者の心理を理解しづらい、鈍いという欠点がある場合があります。
このタフな人がリーダーシップを発揮するには「共感マネジメント」を習得する必要があります。
共感マネジメントとは、職場で「心情を分かち合えるポイント」を意図的に増やしていくことで、仕事の目的や達成したいビジョンを共有する心理的土台を作っていくマネジメントのことです。
共感力が求められる背景は、二つあります。
①世の中が「感情の時代」となっており、繊細な人が増えていること
②生来の鈍感さゆえにタフになった人の場合は特に、本人が思っているよりも部下に共感できておらず、部下からネガティブな感情を持たれるケースが多いこと
共感するためにどうすればいいか分からない場合、折に触れてねぎらいの言葉をかけたり、部下の言葉や行動に感嘆の言葉を投げかけたり、喜びの言葉をかけていくのがよいでしょう。また、オウム返しのように相手の言った言葉をリピートするのもよいでしょう。
精神的に健康的で鍛えられているリーダーは、いわばアスリート。一般人(繊細な人)には配慮しなければ、ついてくることができません。しかし彼らへの配慮の仕方さえ覚えれば、十分に信頼されるリーダーになることができるのです。
※本記事は、2019年6月1日に投稿された記事のリメイク版です。
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