「ランチェスターの法則」から学ぶマネジメント弱者の勝ち方

「ランチェスターの法則」から学ぶマネジメント弱者の勝ち方

はじめに

皆さんのビジネスは、マネジメント上の強者と弱者、どちらに属すると思いますか?
「マネジメント上の強者、弱者」と聞いてもあまりピンと来ないと思われるかもしれませんが、組織の大きさや規模にかかわらず、”実質的な組織力の高低によって決まるビジネス上の立場”とも言い換えることができます。つまり、組織力の高さによって相対的に強者と弱者が存在するようになるということです。
今回は、「マネジメント上の強者と弱者が存在する」ということを前提に、特に弱者の戦い方について提唱しているランチェスターの法則についてご紹介します。

ランチェスターの法則の”基本法則”とは?

ランチェスターの法則とは、イギリスの航空学者、フレデリック・W・ランチェスターが提唱した戦闘の法則です。元々は、戦時中に軍事目的で研究・活用されてきましたが、近年では経営戦略の理論として活用されています。ランチェスターの法則を一言で言ってしまうならば、「強者と弱者は戦い方が違うんだよ」ということになります。

強者の戦い方: 武器の性能が高く兵力も多い強者は、近現代式の戦い+広域戦に有利

弱者の戦い方: 武器の性能も兵力も少ない弱者は、原始的な戦い+局地戦に有利

例えば、もし対戦相手がマシンガンを持っている大集団なのに、自分達は木刀しか持っていない小集団であるなら、相手と物理的に距離がある広域戦で戦ったら、ほぼ勝ち目がありません。しかし、奇襲攻撃を仕掛けて相手の兵士と一対一になる状況を作り、殴り合いで戦うようになれば、弱者でも勝ち目があるでしょう。

このように、弱者が取るべき軍事戦略を提示したのがランチェスターの法則の価値の1つだと言えます。

弱者がとるべき5つの戦略とは?

では、弱者はどのようにしたら勝つことができるのでしょうか?

ランチェスターの法則では次の5つが挙げられています。こちらは戦争のお話ですので気楽にお読みください。

(1)局地戦=広域ではなく狭く限定されたエリアで戦う

(2)接近戦=相手に接近して戦う

(3)一騎打ち戦=一対一の戦いに持ち込む

(4)一点集中=一か所に兵力を集中して戦う

(5)陽動作戦=奇襲を仕掛ける、手の内を読まれないようにする

この5つを駆使することで弱者が戦いを有利に進めることができるのです。

三国志がお好きな方はよくご存じだと思いますが、曹操率いる大軍を、劉備と孫権が率いる弱小連合軍が打ち破ったかの有名な「赤壁の戦い」も、「水上」という局地での接近戦に兵力を集中し、船にいきなり火を放つという陽動作戦で30万もの大軍を倒しました。歴史に残るこの戦いも、ランチェスターの法則に則っていたと言えます。

ランチェスターの法則とマネジメント理論

さて、上記のランチェスターの法則を、組織のマネジメントに当てはめるとしたらどうなるでしょうか?

戦争における「戦闘力」は、組織のマネジメントにおける「組織の生産性」に置き換えることができますし、組織マネジメント上の強者と弱者は次のように考えることができます。

組織マネジメント上の強者: (武器効率に該当する)リーダーの実力やマネジメント能力が高く、マネジメントに当たることができる人材が多い

組織マネジメントの弱者: リーダーの実力やマネジメント能力は平均か平均以下で、マネジメントに当たることができる人材が少ない

上記の強者と弱者の違いは、組織そのものが大きさではなく、組織を指導し管理し引っ張っていける実質的な人材の質と量によって、生じるようになります。

組織全体が20人でも、その内5人が有能な指導者であればマネジメント上の強者と言うことができます。逆に、組織全体が1000人だとしても、有能な指導者が2〜3人しかいないのであればマネジメント上は弱者と言わざるを得ません。

特に、急成長したベンチャー企業や、カリスマ創業社長が引退した後の老舗企業等は、組織マネジメント上の弱者になりがちです。また、人材育成に課題を抱えている組織もマネジメント上の弱者になることが多いようです。

大切なのは、強者は強者に適した、弱者は弱者に適した戦略を採用することだと思いますので、まずは組織の状況を詳しく分析することが肝心です。

マネジメント上の弱者であるリーダーが取るべき戦略

最後に、ランチェスターの法則における弱者が勝利する5つの方法に則って、マネジメント上の弱者に属するリーダーがどのように組織を引っ張っていくのが好ましいか、解説させていただきます。

局地マネジメント

部下が課題を感じている現場にリーダー自ら赴いて、部下と共に悩み行動して問題を解決してあげることです。

接近マネジメント

部下との距離感を近くし、リーダーの影響力を及ぼしやすくすることです。

一対一マネジメント

中間管理職を介さず、部下と個別対話で意思の疎通をします。

一点集中マネジメント

成長できそうな人材に集中的に投資・育成することです。まず「基準」「モデル」となれる人材を育て、全体がその人材に倣うようにさせることで全体のレベルが上がるようになります。

陽動作戦マネジメント

組織の中に閉塞感が生まれないよう、新しいイベント、新しい方法をリーダー自らが主導することです。

これらの5つを組み合わせて組織をマネジメントすることで、より強い組織への転換を有利に進めることができるのです。

最後に

今回はランチェスターの法則についてご紹介し、組織のマネジメントにおいてリーダーが取るべき弱者の戦略について解説いたしました。マネジメント上の弱者である場合、リーダーは現場主義に徹し、部下・フォロワー達との距離感を近くして自身の影響力を現場に浸透させていくようにしましょう。

※本記事は、2019年11月25日に投稿された記事のリメイク版になります。