距離を詰めてくる人への対処法~小さな違和感を大切に~
はじめに
職場でも私生活でも良好な人間関係を築き維持していくためには、”心理的な距離感を調整することが大切”と言われています。読者の皆様の中でも、「周りの人と親しくなりたいが近づきすぎるとしんどい」と思う一方で、「傷つきたくないから人から距離をおいているが、対人関係が希薄で寂しい」という葛藤を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、人間関係における距離感に関する基本的な考え方と、誰かから人間関係の距離を詰められた時、「何かが心にひっかかる」などの違和感が生じた場合の対処法をご紹介します。
「ヤマアラシのジレンマ」
ヤマアラシのジレンマは、ドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアーによって提唱された概念で、人間関係における親密さと距離感のバランスを象徴的に表現しています。このジレンマは、寒い冬の夜にヤマアラシが互いに体を寄せ合って暖を取ろうとするが、近づきすぎるとお互いの針で傷つけ合ってしまうという状況を描いています。
この話は人間関係における親密さと独立性のバランスの難しさを表しています。人間は孤独を避けるために他者と親密になりたいと願う一方で、過度に近づくとお互いの欠点や弱点が露呈し、傷つけ合うことになるというジレンマに直面しまうのです。私たちはまず、
「人は各自、心地良く感じる心理的な距離感が異なる」
このことを大前提に、双方にとってストレスがない心の境界線を設定できるよう、丁寧にコミュニケーションをとる必要があるでしょう。そしてお互いにその境界線を越えることなく、関係性を維持していくことが大切です。
距離を詰められた時、違和感があったら
前述の通り、誰かと心理的な距離が近づくと多かれ少なかれ辛い思いをするものですが、一般的な程度を通り越して、「この人と接すると何かが心にひっかかる、ざわつく」という違和感を抱くことがあったら、その時は注意が必要です。
その違和感の正体は、自分に向けての相手の支配欲、依存心かもしれません。
支配や依存というのは対等ではない歪んだ人間関係ですが、それらの思惑を隠して距離を縮めてこようとする相手には、言葉にできない違和感を覚えるものです。もしその違和感を覚えたら放置しないことが大切です。
「友だちなんだから」「家族なんだから」に注意
実際、社会ではこのような支配欲や依存心に満ちた人たちに、かなりの確率で遭遇するものです。
例えば、ある同僚が急に親しげに接してきたので訝しく思っていたけどそのままにしていたら、「明日、自分の代わりに残業してくれない?私たち友達じゃない?」と頼まれてしまった、などの事例はよくあるでしょう。
こう言った人たちに合わせてばかりいると、やがて
「私たちは同期の仲間のはずなのに〇〇をしてくれないなんて・・・(あなたは冷たい)」「家族なのに〇〇くらい許してくれないなんて・・・(あなたは心が狭い)」と、いいように利用されたり依存されるようになります。ここまでくると最初に抱いた違和感は窮屈感や苦痛に変わり、こちらがはっきりと拒絶することで無理やり距離を離すしかなくなってしまうのです。
同じコミュニティーに属している者同士、一度縮めた距離を穏便な形で離すのは意外と難しいものです。もし誰かに心理的距離を詰めらた時、違和感があったら、それ以上相手に自分の心理的な境界線に踏み入らせないようにしましょう。相手が親しく接してきてもポーカーフェイスを貫いて心のシャッターを閉じることです。
最後に
今回は人間関係の距離感についてお伝えしました。今回の記事の内容を参考にしていただくことで、良好な人間関係を維持する読者の皆様となられますよう、祈念しております。
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