劣等感の強い人材が部署やチームをダメにするリスク

劣等感の強い人材が部署やチームをダメにするリスク

私は仕事柄、大学や短大の就職ガイダンスやキャリアセミナーで、就職活動の指南をさせていただく機会があるのですが、その際、学生の皆さんに「もし今、何かのコンプレックスに苛まれているのであれば、卒業する前にできる限り克服しましょう。」とお話することがあります。

「そんなの当たり前のことでは?」と思われる方々もいらっしゃると思います。

そのような方々は、コンプレックスが強いことで「本人が他人と自分を比較して辛くなること」をご存知なのだと思います。しかしそれ以上に、コンプレックスが強いことは、その人が所属する組織やチームに深刻な影響を与える可能性があります。私はこのことを知っているからこそ、学生の皆さんにコンプレックスのお話をさせていただいています。

今回は、コンプレックスの強さが自身の成長に与える影響、組織に与える影響について、そして強いコンプレックスを持たないようにする秘訣について、お伝えしたいと思います。

 

コンプレックスが個人の成長に及ぼす影響

ます、強いコンプレックスが成長過程にある人材に与える影響について見て参りましょう。私はよく、人間としての成長とコンプレックスの強さの関係はちょうど「車のアクセルとブレーキのようなもの」と説明しています。

まず図①をご覧ください。「成長しよう、変化しよう」という意欲があり、強いコンプレックスが無い人は、ちょうど車のアクセルを踏むと車が前に進むように、スムーズに成長することができます。「成長したい、まずやってみよう」と思うからです。

  

ところが、成長意欲があってもコンプレックスが強いと、成長しようとする意欲にブレーキをかけるような心理的作用を起こしてしまいます。「成長したい、でも私にはできない・・・。」「変化したい、でもあの人と自分は違うから・・・」など、図②のようにアクセルを踏みながらブレーキも踏んでいるような心的葛藤が生じて成長することに専念できません。また、常に他人と自分を比較しているので、人目が気になって自分のことに集中しにくい状態でもあります。

   

さらにここに、図③のようにプライドや自己主管性の高さが加わると、「成長したい、でも上司のあの言い方が気に入らない!」とか「自分なりに成長しているのに、何で分かってもらえないの?」など、自身の成長に役立たない考えばかりを持つようになり、ますます内面的な葛藤が激しくなります。

このようにコンプレックスは、プライドや自己主管性と共に成長に向かう心的なエネルギーを消耗する要因となり得るのです。

 

コンプレックスが組織の発展に及ぼす影響

では、コンプレックスが強い人材が要職に就いてしまったり、コンプレックスが強い人材が多く組織に入ってきてしまった場合、組織の発展にどんな影響が出るのでしょうか?

残念ながら、個人の成長と同じように、内面的葛藤すなわち組織内での葛藤が生じやすくなります。コンプレックスが強い人材は、自分自身の弱点や欠点ばかりに目が行ってしまったように、自分が属する組織に対しても、長所や利点よりも弱点や不利な点ばかりを考える傾向があります。また、他人と自分を比べることに神経を使いすぎてしまいます。

そして、組織内での葛藤が個人の葛藤よりも複雑なのは、コンプレックスが強い人材が、表立って「こんなことできっこない・・・」「他社に比べてうちは不利なのに・・・」「あの同期より私が勝っているのに・・・」という不毛な発言をすることがないということです。しかし、内心では組織の発展とは全く別のことを考えているので、結果的に「ポーズだけは前向きだけど実際は後ろ向き」という状態になります。そのような方々が組織の中で力を持っようになった場合、当然、組織の発展は望めません。

さらに、ここにプライドの高い人材、自己主管性が高い人材の勢力が加わると、組織の発展や業績の向上に関係のない議論や調整、忖度ばかりに気を遣う、疲れる割に結果の無い本当に残念な組織になってしまうのです。

 

強いコンプレックスを持たないようにする秘訣

人間であれば、多かれ少なかれ自分の能力に自信が持てなかったり不足を感じたりすることがあるものです。このコンプレックスを「現状の自分では満足できない」という成長意欲に切り替えて、もっと頑張ろうとする人もいることでしょう。

しかし、度が過ぎるほど強い劣等感を持ってしまうのは、「自分の短所や弱点に過剰に目が行ってしまっている状態」と言えます。また、自分自身を評価する軸(物差し)が極端に偏っていることで短所や弱点ばかりをクローズアップして見てしまい、「自分を正当に認識できない状態」とも表現できます。

若年層によく見受けられるのは、コミュニケーション能力の高低や外見の美醜に必要以上にこだわって「自分はダメだ」と自分自身を批判してしまうことです。そのような方々は、「上手く喋れない自分はダメだ」「不細工な自分はダメだ」と特定の能力・資質だけで自分を評価しているので、自分よりコミュニケーション能力が高い人や、自分より外見が良い人に会う度に意気消沈してしまいます。また、長所がない訳ではないのに長所に目を向けようとせず、第三者に長所を伝えられても「そんなことはありません!」と完全否定してしまいがちです。もちろん、コミュニケーション能力を高める努力や、外見を素敵に変化させる努力も有効ではありますが、もしも数少ない評価軸だけで人間を評価する「偏狭さ」があるのであれば、心の度量を広げる努力をすることの方がずっと大切になってきます。

私が学生の皆さんにお伝えしているのもこのことで、強いコンプレックスをお持ちの方々には「(特定の事柄で)コンプレックスを克服する努力をしましょう」というよりも、「若い内に心の度量・人間のキャパシティを広げる努力をしましょう」と、僭越ながらお話させていただいています。

 

まとめ

今回は、強いコンプレックスが個人の内面的な葛藤を起こし、ひいては組織内の葛藤を引き起こしうる、というお話をしました。葛藤をしなくて済む手っ取り早い方法があるとしたら、それは「成長を諦めること」でしょう。残念なことに、組織として1つになることを目指している内に成長できなくなる組織、チームも多々見て参りました。

大切なのは、「人が組織を作る」という言葉の通り、もし自分自身がコンプレックスに苛まれているのであれば、まずはそれを克服し内面的な葛藤を脱することかと思います。そして、成長や組織の発展に目を向けられる同志を見つけて協力関係を築くことです。これが部署、チームなどの組織が発展する大きな一歩になると思います。

 

   
もっと活用していけるようにライターお勧め書籍を紹介しています。