会社や組織を’私物化’しないために

会社や組織を’私物化’しないために

「権力は人を変える」と言いますが、組織のトップに立つということは、責任を負うと同時に決定権を担う訳ですから、ある意味必然だと思います。むしろ、変わらなければ、ならないのです。リーダーが一般のメンバーと同じ責任感や判断、行動では困りますから、当然リーダーには相応しい変化が求められます。

しかし、「どのように変わるか」が重要なポイントです。今日は、私利私欲に走らず、組織や人々に有益をもたらすリーダーとなるためにどうしたら良いのか、一緒に考えていきたいと思います。

リーダーは期間限定である

まずリーダーが持つ認識としての大前提が、リーダーであるのは「期間限定」だということです。就任時に明確な任期が定められている場合もあれば、創業社長のようにずっとリーダーの場合もありますが、いずれの場合も「期間限定」だということです。

自分が「リーダー」として影響を与えられる期間が終わっても、組織(なくなる場合もある)や人々は残り、続いていきます。

例えば学校の先生も、生徒が学校にいる時だけ指導してあげることができるのであって、24時間ずっと指導してあげることはできません。また担任になっても長くて3年程度しか生徒のことを見てあげられませんが、生徒は卒業しても人生を生きていきます。しかし、その「期間限定」の時に先生から学んだ「教育」や「教え」が、生徒の学校以外の「生活」と、卒業後の「人生」に影響を与えていく訳です。

極端な例ですが、生徒が「その先生が担任をしていた時は本当に楽しかったのに、その後の人生は何の楽しみもない。あの頃に戻りたい」と考えてずっと残りの人生を過ごすならば、これは先生として失敗であると言わざるをえません。

会社や組織にも同じことが言えます。最近世間を騒がせた幾つかの企業トップの退任劇などを見ても、多くのことを考えさせられます。皆さんが属する組織が、多くの人が関わる組織なのであればあるほど、その組織は個人のものではありませんから、「自己実現」や「自分の利益」のためにその組織のリーダーを務めたいという考え方のような人は、相応しいリーダーではありません。「ONE TEAM」という言葉が流行りましたが、組織は自分のためにある訳ではないし、ましてや1人の功績のためだけにあるのでもありません。爆発的に組織を発展させたリーダーがいても、リーダーの退任後に組織が著しく衰退したり、退任後の処理が極端に大変だったりするならば、それは「一次的な成功」に過ぎず、むしろ人々に害を与える場合もあるでしょう。

では、リーダーが組織を私物化せず、在任中も、退任後も有益を残すために必要なこととは何でしょうか?4つお伝えします。

リーダーの退任後も組織に有益が残るようにするポイント4つ

①自らの「終わり」を考えた組織の目標設定

リーダーはその組織の目的と方向を正しく決めなければなりません。組織内外の要望として存続が望まれる組織ならば、必ず後任を育て、後任が組織を更に発展させられるような体制作りは必要です。私は教会で「指導者の1番の役割は、次の指導者を育てることだ」と学びました。

一方で、組織内部や外部の状況を鑑みて、自らの退任と共に組織を解散させるべきだという判断も、勇気ある立派な選択肢の1つであると思います。幕府の限界を見抜いた徳川慶喜の大政奉還は、歴史上稀に見る英断だと評価する声も多いです。

いずれにせよ、リーダーはいつかは自らが組織を去る時が来ますから、終わりまで視野に入れた計画と行動が求められます。無計画に組織を私物化してしまった場合の末路は見えており、自らの任期が終わる時は必ず争いがあることを忘れてはなりません。

もちろん、だからと言って「どうせ自分はいつか去るから」といった投げやりの精神では、組織のリーダーを務める資格はありません。「心は情熱的に、頭は冷静に」とでも言いましょうか、本音の気持ちとしては「その組織と心中する覚悟」で、現実的には「いつか来る終わりも見据えながら」経営をしていくことが必要ではないでしょうか。

②真理を探求すること

真のリーダーならば、自分がいなくなっても、組織が作り出すものや残された人々が発展していくように運営していくべきですが、永続的な発展と繁栄には「己を超えた理念と思想」が必要です。つまり、どんな人にも当てはまる、時代に左右されない永遠に変わらない法則ですが、これを「真理」と言います。リーダーは、この「真理」に基づく組織運営ができるように、努力をするべきです。もちろん、人間の考えが完全になることはかなり難しいですが、そのための努力は必ずできます。

私が師事する牧師先生は、「指導者と呼ばれる人は、誰よりも常に学ばなければならないし、答えを持っていなければならない」と言いました。誰かに何かを教える時がいつ来るか分からないから、彼は常に誰よりも早く起き、誰よりも入念に準備をし、誰よりも自身がたくさん学んでから、人々の前に出てきます。

リーダーが組織を私物化しないためには、一次的に人々に有益をもたらすための組織運営ではなく、100年後に見ても変わらない「真理」によって組織を運営しようと、努力し続けることです。

➂2人以上の権限者を立てる

右と左が作用しあってバランスが取れるように、世の中の存在法則は「ペア」があるということです。ペアというのは「異質なもの」であってこそ成り立ちます。ナイフとナイフでは機能が発揮されにくく、ナイフとフォークであってこそ、それぞれの良さが発揮されます。リーダーとなると、どうしても自分と考え方やタイプが似ている人を重用しがちですが、異なる個性の人を立てることによって、組織が健全にコントロールされ、バランスを取って発展していくことが出来ます。

イエス・キリストも福音を伝えるために人を送る時に、ペアで2人ずつ送りました。

『その後、主は別に72人を選び、行こうとしておられたすべての町や村へ、2人ずつ先にお遣わしになった。』(ルカによる福音書10章1節)

異なる2つが1つになるとき、1+1=2以上の効果を発揮します。そして、3つが1つになると更に大きな力を発揮します。

『ふたりはひとりにまさる。彼らはその労苦によって良い報いを得るからである。すなわち彼らが倒れるときには、そのひとりが友を助け起こす。しかしひとりであって、その倒れる時、これを助け起こす者のないものはわざわいである。またふたりが一緒に寝れば暖かである。ひとりだけで、どうして暖かになり得ようか。人がもし、そのひとりを攻め撃ったなら、ふたりで、それに当たるであろう。三つよりの綱はたやすく切れない。』(伝道の書4章9〜12節)

どんな人間も、完全ではありません。不完全な人間が組織を私物化しないための方法の1つは、自分と違うタイプの人にも意思決定や権限を与え、不完全である自分だけが会社や組織をコントロールしない体制を作ることです。しかし、ここで前提となってくるのが、②で挙げた「真理に基づく」組織運営です。異なる個性の人がペアになるのが理想ですが、「目的」までバラバラでは引っ張り合うだけで前に進みません。山登りのように、アプローチの方法は違っても、「目的」は同じでなければなりません。そのためにも、自分だけが納得する目的ではなく、「真理」を目的とした組織運営が大事になるでしょう。

④自分よりも優秀な人を登用する

組織が発展していくためには、自分よりも優秀な人材を登用しようとするリーダーの意思がなければなりません。自分よりも優秀な人材というのは、時に扱いづらいこともあるのですが、そういう人を登用しなければ組織の発展はありません。

最後の宮大工と言われた西岡常一氏が残した言葉が有名ですが、「塔組みは木の癖組み、人の心組み」と言いました。技術や才能はあふれるが、癖のある大工たちの心をまとめるのが大工の棟梁の役割だということです。

リーダーは、自分より優秀な人材を登用することで自身も学びつつ、組織として新しいチャレンジができます。この文化を持った組織は、どんどん発展していくことでしょう。②のようにしっかりした理念と真理で組織を治め、多様で個性的な人材が1つの目的に向かって進んでいけるような体制作りが理想と言えるでしょう。

まとめ

リーダーは、時間と共に経験も積み、視野も範囲も広くなり、成長していきます。同時に抱えていくものもや蓄積されるもの多くなりますから、拘りや頑固な心、人によっては私欲も生じてきます。かつての日本でよく見られた「頑固なお父さん」「融通の効かないオジサン」のような心が、自分の中に居座ってしまいます(笑)。自分の心の中にいる「頑固なオジサン」が、自分の成長や組織の発展を邪魔するのです。

イエス・キリストは、「心を入れ替えて幼子のようにならなければ天国に入れない」と言いました。やはり忘れてはいけないことが「初めの心」です。何もなかったけれども、理想を掲げ、情熱的にスタートした「始まりの時」の心。初心を忘れずにいつまでも新鮮で、私欲に駆られることなく、自らも組織も成長させ続けていく皆さんになることを祈念しています。

   
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