ピンチの時、真のリーダーがすべきこと

ピンチの時、真のリーダーがすべきこと

2020年3月現在、1つの街からあっという間に世界中に広がった新型コロナウイルスが、経済や人々の活動に大きな影響を与えています。様々な組織の経営者やリーダーは本当に難しい舵取りを迫られています。危機に直面した時に人間の本性が出ると言いますが、難しい状況に直面した時、リーダーならばどのような行動を取り、どのように人々を導いていけば良いのでしょうか。非常に難しい問題ですが、一緒に考えていきたいと思います。

ピンチは何が「チャンス」なのか?

私が営業の仕事をしている時、「クレームはチャンスだ」と幾度となく上司に言われました。クレームを通して、顧客の真のニーズと何が不満なのかが分かるので、誠実に対応してチャンスに変え、あわよくば次の契約まで取ってくるべきだ、ということでしょう。しかし、私が実際にクレームを受けて処理に当たった時、まさに地獄のような日々でした。毎日何回も怒鳴り声の電話がかかってきて、携帯電話が鳴るだけでもビクビクしましたし、その顧客先に行く時には帰ってこれないかもしれないと何度も思いました。後から振り返ってみると学んだことは確かにありましたが、ピンチの中にいた当時の私は、必死に耐え忍ぶことで精一杯、「早く過ぎ去ってくれ」と願うばかりでした。その際、人の良い私の上司は寄り添ってくれましたし、一緒に責任を取ろうとしてはくれましたが、結局そのクレーム問題は静めることが精一杯で、チャンスに変えることまではできませんでした。しかし後に、深く考えて反省することができる「材料」をくれました。

誰もが夢見る「一発逆転」「失敗からの成功」ですが、私が思うに「一発逆転」はそう簡単には起こりません。スポーツでも「大逆転」を期待して信じるものの、そんなに多くは起こりませんし、逆に頻繁に起こったら「何か裏があるのか?」と疑いたくなります(笑)。

ピンチの時、「火事場の馬鹿力」のような「絶体絶命の時の奇跡の力」が存在するのも事実ですが、それも普段の自分の努力と実力の上に少しだけ添えて与えられるものではないでしょうか。「ピンチ」に直面したその時は、過去自分がやってきた結果と実力が出るだけだと思います。私がクレームの問題にぶつかった当時、少し業務に慣れてきて慢心していた時で、問題が起こって初めて自分の真の実力の足りなさに気付かされたのでした。

ピンチに直面した時、「成功や逆転」を狙うのではなく、何としても「生きる」ことに全力を注ぐことしかできない時もあると思います。その「生きる」ことが、次に繋がりますから、「ピンチでも生きること」こそが新たなチャンスなのです。

「将来が分からない」というチャンス

人間は、将来どんなことが起こるか予想することは難しいですし、多くの場合その予想は外れます。漫画の天才・手塚治虫の世界では、空を自由に飛ぶ10万馬力のロボット・鉄腕アトムは2003年には登場していたはずですし、1年前の2019年3月時点でコロナウイルスが世界的に大きな影響を与えると予想していた人はかなり少なかったはずで、日本もオリンピックという最大のお祭りに向けて順調に進んでいたはずでした。

「順境の日には楽しめ。逆境の日には考えよ。神は人に将来どういう事があるかを、知らせないために、彼とこれとを等しく造られたのである。」(伝道の書6章14節)

もし、将来どういうことが起こるか、すべて分かっていたならばどうでしょうか。機械的で無機質な人生、プラン通りの人生に、驚きや感動、美しさというものはないでしょう。自分が努力し頑張った分だけ成長し、得るものも変わってくるから、人生は楽しく素晴らしいのです。「将来が分からない」からこそ、備え、準備し、作っておいた分だけ得られる可能性があり、人生は面白いのです。

「逆境の時には考えなさい」と聖書では言っていますが、お祭りの時に深く考える人はいません。壁にぶつかってこそ人間は深く考え、そこから教訓や知恵を得ることができるのです。そういう意味では「ピンチはチャンス」です。将来が分からないからこそ、どうなっても対応できるように自分を作っていきたいものです。リーダーも同じ人間ですから、多くの人と同じように将来のことは分かりません。しかし、人を導く責任ある立場だからこそ、「何が起こっても良い準備」をしっかりとしておくべきでしょう。では、リーダーがどんなことが起こっても良いように、しておくべき準備とは何でしょうか。

どんな状況でも幸せに生きられる自分をつくる

どんな状況でもその場でできる、最高のものを作り出せる人は素晴らしい才能を持つ人だと言えます。

「冷蔵庫に入っているもので豪華な料理を作る」というテレビ番組を見たことがありますが、同じ材料でも発想と技術次第でこんなにも結果が変わるんだ、と感動したことがあります。

人生を料理で例えるなら、自分自身や与えられた環境、仲間、仕事などは材料です。味付けは「幸せだ」「満足だ」と思えるようにすることでしょうか。どんな環境でも人々を「幸せだ」と感じさせられる人は人生の名料理人であり、良きリーダーではないでしょうか。

私の教会に通う80代後半の会員の方で、お母様と妹さんを長崎の原爆で亡くされた方(Aさん)がいらっしゃるのですが、その方とお話をした時に深い感動を覚えたことがあります。

私「原爆は本当に大変なことでしたね。お母様と妹さんを亡くされ、大変だったでしょう。戦争を憎んだりしませんでしたか?」

Aさん「そういう時代ですからね、大変だとは思わなかったですよ。私だけじゃなくて、皆そうだったんだから、仕方がないんです。楽しいこともいっぱいありましたよ。」

私「キリスト教の教会に行ったり、アメリカでゴスペルをされたと聞きましたが、アメリカの原爆で家族を亡くされたのに、特に何も思わなかったのですか?」

Aさん「生活が必死でしたから、神様にお祈りができる、賛美歌が歌えるというのは楽しかったですね。自由でかっこいいんですよ。私もそういうものをやりたいなぁと思ってやったんです。楽しかったですよ。」

言葉にできない大変なご苦労もあられたでしょうが、誰のことも憎まず、前を向いて楽しく生きてこられたその方の笑顔は本当に素敵で、今も幸せに生きていらっしゃる秘訣を、心の持ち方から学びました。リーダーとなる人は、このような精神が必要だと思います。

「わたしは、どんな境遇にあっても、足ることを学んだ。私は貧に処する道を知っており、富におる道も知っている。わたしは飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、ありとあらゆる境遇に処する秘訣を心得ている。」(ピリピ人への手紙4章11〜12節)

この書を書いたのは伝道者パウロですが、「ありとあらゆる境遇にあっても、満足して生きる自分を手に入れた」と言っています。人間の欲というのはきりがないものです。飢えていた人が満足に食べられるようになれば、家を求めるようになりますし、家を得るともっと豪華な家を求めるようになります。

組織を経営する立場の者なら、欲を出して自分の実力以上のものに手を出すのではなく、実体に合った経営をしてこそ、危機の時にも十分に対応することができるはずです。
リーダーは、貧にも富にも処する知恵と力が必要であり、自分が持つものの大小に関わらず、満足し感謝出来る人でなければなりません。

持っているもの、得ているものの価値を教えてあげられる人

人間は欲がなくなることはなく、感謝よりも不満が溜まりやすいものです。良きリーダーであるならば、不満を感謝に変え、悲しみを喜びに変え、ついてくる人たちを幸せにしてあげなければなりません。

そのためには具体的に、「何で幸せなのか、何で楽しいのか」正確に、具体的に言葉で伝えてあげなければなりません。雨の日もあれば、晴れの日もあります。暑い夏もあれば、寒い冬もあります。すべてに大事な意味があるのですが、その意味を分かって、貴重さを教えることができる人が真のリーダーと言えると思います。「寒すぎて嫌だ」という人に対し「寒いから害虫が死んで植物や穀物が守られるから良い」と教えてあげ、「台風が来るから嫌だ」という人に対し「台風が大量の水を運んできてくれるから命が乾かないことと、台風に備えて何をするべきか」を教えてあげる人が真のリーダーではないでしょうか。

真のリーダーとは、その状況だからこそ得られるものを誰よりも正確に分かって教え、得るための備えを人にさせてあげられる人だと、私は思います。

まとめ

真のリーダーとはどのようにあるべきか、今日は一緒に考えてきました。

・真のリーダーとは、自分が与えられているもの、持っているものの価値を本当に分かって満足し、感謝できる人。ついてくる人に具体的に説明してあげられる人。

・真のリーダーとは、どんな状況でも「その時に何を得られるのか」正確に教えてあげ、得るための備えをさせてあげられる人。

いつの時も変わらずに、個人はもちろん組織全体を満足させ、得るべきものを得られるようにさせる人が、真のリーダーではないでしょうか。

結び:時計のように生きなさい

実際の出会いでも、本や映画の中でも、自分が「こんな生き方をしたい」と思える人に出会えることはとても幸せなことです。

幸い私はそんな方々に多く恵まれましたが、特に尊敬している牧師先生は、誰が見ても辛く困難な時にも「私は幸せだ」と言って感謝を表す詩を書いていらっしゃいました。その人でも絶望しかなく諦めそうな状況にあった時、神様に祈りを捧げると「時計」を見せてくださり、「時計のように生きなさい」と言われた気がしたそうです。時計はどんな場所でも、きれいなリビングでも、汚いトイレでも、環境に左右されずに時を刻み続けます。そのように環境に左右されずに、自分のすべきことを正確に行ないなさいという神様のメッセージだったのです。そのメッセージを力にし、彼は難しい状況でこそ多くの知恵と力を得て、次元を上げて状況を突破されました。

「時計のように生きる」ということは、私にとっては難しい挑戦ですが、そのように環境に左右されない、自分に言い訳をしない行ないを備えた人になりたいと思います。これを読まれたみなさんも、そのような「時計のような」生き方をされる皆さんになることを祈念しています。

   
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