第四週 自分は「リーダーになってはいけない人?」足りないリーダーがすべき真の挑戦 

第四週 自分は「リーダーになってはいけない人?」足りないリーダーがすべき真の挑戦 

4月のテーマ「挑戦」

新しい変化の時をより能動的な気持ちと姿勢で迎えられるよう「挑戦」というテーマで記事をご提供しています。今回が最終回です。

はじめに

4月は異動や昇進の時期です。今年はコロナウイルスの影響で、新しい地位や役職に就いた実感がなかなか持てないかもしれませんが、今までの努力や功績が認められた喜びと、次のステージに挑戦する気概に満たされる時期を過ごされている方も多いことでしょう。

しかし、昇進は自分自身にとっての挑戦であるだけではなく、自分を登用することを決めた企業の側にとっても挑戦だったりします。というのも、部下を昇進させる時は「実力があってその地位に相応しいから」昇進させる場合もありますが、成長への期待を込めて思い切って抜擢したり、また他に適任者がいないから”暫定的に”人を配置することも少なくないからです。

そういう意味では、実力が不足した段階からのスタートだと分かっている方がむしろ現実に即していると言えるでしょう。

今回は、リーダーとしての自分の実力不足に直面した時、どのような挑戦をするのが良いのか、事例を元にご提案したいと思います。

自己正当化と自暴自棄の落とし穴

数年前に教育研修でお会いしたAさんの事例をご紹介します。AさんはIT系企業に勤務する30代の女性です。

管理職に就き4人の部下の管理と育成を任せられているお立場でしたが、ご自身の部署の業績不振について上司から指摘を受けると「『なぜ業績が上がらないか』という事情説明を繰り返すこと」が常態化していた方でした。

Aさんの前任者の管理の問題、部下たちの性格や資質の問題、プレイングマネジャーとして自身が多くの業務を抱えている問題などを延々と説明し、上司にそれらの事情を「分かってもらう」ことを狙いにして対話をする傾向が強かったので、一度、第三者の立場からコーチングをしてほしいと、Aさんの上司から依頼を受けました。

実際、Aさんとコーチングセッションを進めてみると、「業績が上がらないことは仕方がないことだ」という自己正当化と、「自分には実力がないから無理です、できません」という自暴自棄のスタンスを交互に繰り返す埒が明かない状態でした。しかし、最終的にはどちらの心理的態度も業績向上には効果が見込めないので、マネジャーとして組織の発展のために何をすべきか、フラットな気持ちで共に考え挑戦していきましょうという結論に至りました。

以下が、私がAさんに提案してAさんも同意してくれた内容です。実力が不足したリーダーがすべき真の挑戦の具体的な項目として、ご参考になさってください。

実力不足のリーダーがすべき挑戦

挑戦その① 自分の実力不足を認める挑戦

実力不足のリーダーが必ずすべき最大の挑戦は、実力不足を認めることです。業績不振、社員の不満、離職率の高さは自分が生み出していると考えることがリーダーとしての挑戦の第一歩です。そして、それに対して落胆も自暴自棄もしてはいけません。

Aさんは、口先では「自分はまだまだです。」と仰っていましたが、本心では自分はそれなりに頑張っているし部下を含めた周りの人たちが変われば済む問題だと考えていたので、真摯に部下や周りの話に耳を傾けようとしていませんでした。部下たちもAさんの心理を察知して、真剣に頑張ろう、支えようとも思えなかった状態でした。

挑戦その② 他の人に尽力してもらう挑戦

自分の実力不足を本心から自覚できたら、なりふり構わず学ぼうとするし助けてくれる人を探そうとするものです。リーダーが小さな自尊心にこだわって組織を衰退させることはよくあることです。自分が果たすことができない役割ができる人を抜擢して十分な報酬を与えてやってもらうこと、このことに挑戦すべきです。自分の弱点を曖昧にしか理解できていないと、不要な人を採用することになり、むしろ生産性は落ちてしまいますので注意が必要です。

挑戦その③ 他人に花を持たせる挑戦

挑戦①②ができたら、助けてくれた人を十分に労い、承認を与えることです。

実は、Aさんの元から去って転職した方から、もし「〇〇さんのおかげ」「〇〇さんの尽力が大きい」という発言があったら辞めなかったかもしれないという残念な言葉も聞きました。

「上手くいくのは自分のおかげ、上手くいかないのは他人のせい」という精神の人は、他人に花を持たせることができません。結果的に採用しても採用しても人が離れていく現象が起きてしまいます。

実力不足のリーダーの下でも、何とか組織が抱える矛盾や問題を現場レベルで解決し、陰ながら支えてくれている部下がいるものです。そのような部下に対し、一言でも労いの言葉をかけることもリーダーのすべき挑戦です。

まとめ

今回、足りないリーダーがすべき真の挑戦について書かせていただきましたが、「リーダーになってはいけない人」とは、現在実力が不足している人というよりも、この3つに全く賛同できないし挑戦の必要性を感じない人、と言っても過言ではないと思います。

Aさんはその後、花を持たせるところまではできている自信はないけど、率直に自分のミスや分からないことを口にするようにしたことで、「悪いけどこれ教えてくれる?」「このことで力を貸してほしいんだけど」と言えるようになり、部下との関係性も良くなったと仰っていました。

Aさんだけではなく、実力にかけたリーダーは皆、有能になる挑戦をし続ける必要があると思います。
しかしそれだけではなく、自分の足りなさを率直に認め、自分以外の人が活躍できる場を作ることが、真にすべき挑戦ではないでしょうか。