VUCA時代、ここに”神経”を使う人が逸材になる

VUCA時代、ここに”神経”を使う人が逸材になる

はじめに

「先行き不透明な状態」をVUCA(ブーカ)という言葉で表現することがあります。2020年に私たちの生活と社会全体を大きく変えたコロナ禍、昨今のAIやIoTなどの技術発展、グローバル化、少子高齢化など、過去には全く予想していなかった現実を私たちが今体験していますが、これらがまさにVUCAであり、今私たちはVUCA時代を迎えていると言えるでしょう。

「先行き不透明な時代に、影響力を発揮し活躍するには何が必要か?また何に神経を使うべきか?」

このテーマについて、私たちリーダーシップドック編集部も総力を挙げて研究を重ねてきました。その結果を、今後数か月に亘って記事として読者の皆さんにお届けしたいと考えています

今回は、VUCAとは何か、VUCA時代に活躍する人の条件、神経を使うべきポイントについてお伝えします。

VUCA(ブーカ)とは?

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字を取った造語です。

VUCAは元々は軍事用語で、1990年代アメリカとロシアとの間の冷戦終結によってもたらされる新たな状況を予測した言葉でしたが、2016年に行なわれたダボス会議・世界経済フォーラムなどでも使われ注目されるようになりました。現在ではビジネス全般、社会全般を表現する言葉としても浸透しています。

まず、VUCAの頭文字となっている時代の特徴4つについて見ていきましょう。

1)Volatility(変動性)
変化の量・質が予測不可能になっています。顧客ニーズの変化も激しく市場が生み出され縮小していく流れも非常に速いため、新しいビジネスモデルを作り出しても短期間で衰退してしまうことが珍しくありません。

2)Uncertainty(不確実性)
前述したコロナウィルスは、現代の科学的知見を用いても予測ができませんでした。また、さらなる雇用の流動化によって採用した人材が辞めて転職してしまうなど、今まで以上に不確実性の高い出来事が増えていくでしょう。

3)Complexity(複雜性)
企業、個人、それぞれが置かれた状況が複雑化・特殊化しているため、1つの企業あるいは国での成功事例や特定の条件で確立された方法論を、他に応用しづらくなっています。

4)Ambiguity(曖昧性)
ビジネスを取り巻く環境が急速に変化したことによって、前例のない事例や因果関係が分からない問題が多く発生するようになりましたが、それらに対する効果的な解決策が見つからない曖昧な状況です。

これら4つの特徴を合わせ持った世界がVUCAと言えます。

VUCA時代に活躍するための3つの条件

では、そんなVUCA時代に活躍する人となるためにはどんな条件が必要でしょうか?HR(ヒューマンリソース)の観点から3つ挙げてみます。

①”結果を出す”実力全般

企業で「どんな人材を、何人くらい、どのように採用するか」という採用計画は、通常事業計画に基づいて立てられます。しかし、VUCA時代は長期的な事業計画を立てることが難しい上、立てても変更を余儀なくされることがあるので、企業が長期的計画を元に人材育成を行うことが以前よりずっと難しくなりました。

従って「誰かにきちんと教えてもらえたらできる」という開発途上の人材より、「教えてもらってなくても、自力で何とかやってみる」という結果を出そうとする人材の方が、圧倒的に活躍しやすいです。

そこには、忍耐力、情報収集力、気力体力、推進力などの力全般が求められますが、これらの結果を出す力全般は、個人が生活の中での実践を通じて培うのが相応しいです。実践の内容は、課外活動、ボランティア、勉強会、日々の業務、趣味活動など何でも構いませんが、自分が成長を意識して行なえるかどうかが重要なポイントになると思います。

②良い選択(自分に合う判断)をすること

VUCA時代は人生の選択肢が限りなく広がる時代です。以前であれば「上司の指示に従う」という選択一択だった状況も、自分で創意工夫をしながらやり方を研究してみる、仕事自体を変える転職をする、環境を変える転職をする、配置換えを希望する、学校に戻る、資格を取るなど、ありとあらゆる道を選択できるようになりました。

そのような数多くの選択肢の中で自分にとって最良最善の道を選ぶためには、自分の判断の軸を持ち自分に合う判断ができること、すなわち知恵が必要になってきます。

③人格・品格

先行き不透明な時代だからこそ、人と人との信頼関係があらゆるビジネス、コミュニティの基盤になっていきます。市場に似たり寄ったりの商品やサービスがあふれた時、変わらず自分との交流や自社との取り引きを続けてくれるのは、接する人の人柄や人格を認めて何かしらの好印象を持ってくれた人で、マーケティングで言うところの「顧客」ではなく「ファン」ということになります。よって損得勘定によらず自分を信頼される人として作ることがVUCA時代を生き抜く条件になるのです。

VUCA時代、ここに神経を使えばあなたは逸材になれる

では、上記のような条件を備えるために、具体的に何をして、何に神経を使うべきでしょうか。ここではポイントを7つ挙げてみます。


責任分担と主人意識

自分を成長させ活躍できる人材へと変化する上で必要なのは、「いかに自分のやりたいことをやるか」や「いかに美味しいものを食べるか」にコミットすることよりも、「いかに自分に与えられた責任分担を果たすか」「自分に任された領域を良い仕事で満たすか」という考えを持つことだと言われています。その責任に対して自分が主人という意識で向き合うことが大切です。

目的意識と効果性

職業、人間関係、健康、娯楽などは、それ自体が人生の目的にはなりえません。人生の目的そのものや自分が生み出しうる有益に着目する時、成長が加速していきます。

「ために」モデルと人望

人望を集める際に重要なことはいくつか挙げられると思いますが、その中の1つに「何のために生きて(行動して)いるのか」が挙げられます。自分のため、家族のため、国のため、世界のため、未来のため。より大きなことのために生きる人にほど、人望は集まります。

「観」の是正と置き換え

人生観、職業観、価値観など、人はそれぞれ独自の観を持って生きていますが、より健全な観を持つことで人生を好転させることができます。

“用いられる”自分づくり

現在存在している職業の多くがなくなり将来新たな仕事が現れてきたとしても、社会から続けて用いられる人材になるためには、スキルやノウハウに依らないヒューマンスキルの開発が不可欠です。

自己理解(他者理解)と役割の認識

他人の指摘や批判を受ける前に自分で自分の矛盾や欠点を見い出せる能力が今後さらに重要になっていきます。自分ができる仕事の内容と質、組織へのエンゲージメントのレベルを正しく認識してこそ他の人への適切で妥当な評価が可能になります。

新しいイベント・新しいやり方への挑戦

社会全体の流れ方向性を見極め、情報を収集し、素早くPDCAを回していく姿勢がますます重要になっていきます。

以上、VUCA時代に活躍する人材の条件と、神経を使うべきポイントの概要をご紹介しました。今後のリーダーシップドックでは、人材を逸材にならしめる重要ポイントを、複数の専門家の方々による記事としてお届けしてまいります。是非ご活用ください。