シナジー効果で生産性を∞(無限大)にする秘訣〜責任分担の力〜
- 2020.11.05
- Vol 1 責任分担と主人意識 シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」
- #個人戦と団体戦, #強い個人が強い団体を作る, #責任を果たす個人
Vol1 責任分担と主人意識
シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」の最初のテーマは「責任分担と主人意識」です。自分を成長させ活躍できる人材へと変化する上で必要なのは、「いかに自分のやりたいことをやるか」にコミットすることよりも、「いかに自分に与えられた責任分担を果たすか」「いかに自分に任された領域を良い仕事で満たすか」という考えを持つことだと言われています。そしてその責任に対して自分が主人という意識で向き合うことが大切です。
シナジー効果とは
シナジー効果とは、2つの異なる要素が1つになることで得られる相乗効果のことです。
「1+1」が2ではなく3にも10にもなる効果が期待できるので、近年あらゆる産業、分野でコラボレーション(協同作業、協同事業、協働研究など)という形態の試みが見られるようになりました。また厳しい経営環境の中、多くの企業が事業や部門の統合、M&Aに踏み切った要因の1つに、シナジー効果への期待があることでしょう。
今回は、このシナジー効果の有益性と、効果を発揮するために必要な要素についてお伝えします。
シナジー効果の有益性
これまで別々に事業を行なってきた企業同士が連携し、共同で事業を運営することによって、販売・設備・技術などの機能をより効率的に活用できるようになり、単独で行なうより大きな成果を上げることが可能になります。販売であれば、販売チャネルや顧客情報を共有することで新規開拓に要する労力を半減することができますし、設備を共有することでのコスト削減も十分期待できます。また、マネジメントのノウハウを共有することで企業の成長を促進することもできるでしょう。このように1つになることで期待できる様々な変化がシナジー効果です。
このシナジー効果は必ずしも企業と企業、部署と部署など、団体間だけで起こるのではなく、個人と個人との間でも起こりうるものです。『EQ~こころの知能指数』という世界的なベストセラーを著したダニエル・ゴールマンは、上司と部下との関係を「縦のカップル」と表現し、上司と部下との絆の深さがその部下の生産性と在籍期間に大きな影響を与えると言いました。「縦のカップル」はやや大げさな表現のようですが、それほどまでに上司と部下との関係性は大切であり上司と部下がシナジー効果を起こすことができれば、夫婦や恋人など本物のカップルと同じかそれ以上のパートナーシップを発揮することも可能になるということです。
生産性の向上を狙うリーダーにとって、組織と組織、個人と個人の間にいかに大小のシナジー効果を起こしていけるかが、今後重要な課題になることは言うまでもありません。
シナジー効果が起こる条件
シナジー効果は「2つの要素の相乗効果」とお伝えしましたが、ただ2つの部門を1つにしたり2人の社員で1つの仕事に当たらせたりするだけでは、十分な効果は見込めません。
シナジー効果を起こすためには最低限、次の3つの条件を満たす必要があります。
同質同士ではなく異質同士の組み合わせであること
シナジー効果を起こすには、同質(同じ役割や個性)の組み合わせではなく異質(別の役割や個性)の組み合わせである必要があります。同質同士は1つになるのは易しいですが大きなシナジー効果が起こりません。異質同士であってこそ双方に新しい視点や刺激が加わり今までの延長線上にはない発展が期待できるのです。
これは単に”同業種間のM&Aではシナジー効果が起こらない”ということではなく、たとえ同業種であっても異なる企業文化や歴史を尊重し融合させることが重要ということです。
M&Aの場合、買い手側企業が売り手側の企業に自分たちの文化に合わせさせるような形を取ると、異質同士の組み合わせではなく”同質化させて1つになること”になるのでシナジー効果が起こりづらくなります。
箸が2膳があるよりも、箸とスプーンの組み合わせがある方が多様な食事を楽しめるように、また金槌が2本あるよりも金槌と釘が1本ずつあった方が工作が進むように、シナジー効果を起こすには異質同士を組み合わせることがポイントになります。
志・目標が1つになっていること
「1つになる」とは名目や形式だけではなく実質的にも同じ志・目標を共有できていなければなりません。表面的には組織統合しているけれど、水面下で派閥を作り統合前の指示命令系統や意思決定の仕組みを温存し続けることは、よくあることです。
「仮面夫婦」という言葉がありますが、表面的には円満そうに見えても関係性が崩壊している夫婦が幸せな家庭を作ることが難しいように、表向きだけ1つになっている組織や個人が相乗効果を生み出すことは難しいです。
双方が責任分担を果たしていること
以前、責任分担とは「自分の立場でできることを最善を尽くして行なうこと」とお伝えしました。(https://leadershipdock.net/post-1895/)
シナジー効果を起こす上でも、双方が自分の責任分担をしっかり果たしていることがとても大切です。
先日、ある書籍の文章を考える編集チームと装丁を考えるデザインチームの協同作業に関わる機会がありました。双方が自分の仕事の領域で責任分担を果たしより創造的な仕事をすると、それが相手方にとって刺激となり「編集チームがその表現を考えてくれたなら、私たちもこのようなイラストに修正しよう」「デザインチームの出した案のテイストに合わせて、章のタイトルはこの言い回しで統一しよう」などの相乗効果が起こり、単独で行なう仕事の質をはるかに上回るアウトプットを残すようになりました。
このように責任分担を果たす個人・組織であってこそ、大小のシナジー効果を起こすことができるのです。
上の例以外でも、多くの企業で各自の姿勢がシナジー効果を生み出す源泉となる状況を見てきました。「何とかして自分ができる最善を尽くそう」という意識の人が1人いることで、その良い波及効果が相手にも組織全体にも広がっていくのです。
0.5+0.5ではシナジー効果は起こらない
反対に責任分担を果たさない個人が集まった組織はどうなるでしょうか?
自分に与えられた「責任分担を果たす1人」がいる組織と「果たさない10人」がいる組織では、明らかに前者の方が相乗効果を起こす可能性が高いです。
実際のところ、役職には就いてはいるけど責任を負いたくない人が大多数という日本企業が業界を問わずありますが、そのような会社の中には「社会のせい」「コロナのせい」「他の部署のせい」「あの部長のせい」という話があふれ、自分以外の”何かのせい”にしようとしてそれぞれが躍起になっています。このような責任追及の雰囲気の中では誰もが「自分の仕事を最低限ミスなく行なうこと」を目指し保身に走ってしまってもおかしくありません。
しかし、そのような姿勢ではシナジー効果を起こすことができません。あくまで自分の責任を積極的に果たそうとする「1」があってこそのシナジー効果なのです。
まとめ
今回はシナジー効果についてお伝えしてきましたが、特に条件の③として挙げた「双方が責任分担を果たしていること」という点で課題があることでシナジー効果が損なわれている組織が多いように感じます。
実際、責任分担を果たさない個人が集まった組織でリーダーになるとその苦労は非常に大きいです。フォロワーたちが依存的になりリーダーに対する非建設的な不平不満を抱いてしまうケース、またリーダーがフォロワーの分まで過剰に責任を抱え込んでしまうケースも少なくありません。そうなるとシナジー効果を起こすにはほど遠い残念な状況になってしまいます。
1人の力で組織全体を変えることは難しくても、個々人が「自分の位置でできる最善を志すこと」は難しいことではありません。「自分の立場でできる最善」を考え表現することがシナジー効果を起こす第一歩になるのです。
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