成果は突然やってくる~「ちょっと苦しい」を”粛々と”が人生のコツ~

成果は突然やってくる~「ちょっと苦しい」を”粛々と”が人生のコツ~

はじめに

先日、昔から親交のある友人Aさんからこんな話を聞きました。

Aさんは大学卒業後システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、20代後半で営業職に転職。その後、転職した会社で新規事業の中核メンバーに抜擢されたものの数年間鳴かず飛ばずの成績だったことで、社内でも非常に肩身の狭い思いをしていたそうです。しかしこの1、2年で一気に業績が上がり、50人を擁する部署に急成長を遂げたと。そして、Aさんは今になって新卒の頃に思い描いていた夢が叶っていたことに気付き、改めて自分が置かれた状況と経験に感謝した、とのことでした。

もちろん、Aさんの実力と人徳によって得られた成果とも説明できますが、成長を目指す私たちにとって教訓となる話でもありますので、少し掘り下げて考えてみたいと思います。

人間の成長は階段式に訪れる

人の成長を表す曲線として有名なものに「シグモイド関数」があります。ジグモイド関数は機械学習の学習をすると必ず出てくる用語で、多くの自然界に存在する変化の過程はこのような「S字曲線」を取ると言われています。

リーダーシップドック ジグモイド関数

例えば、薬学の世界では薬の用量と作用との関係を、以下の図のようなイメージで表すことができます。薬を飲み始めてすぐに効き始めるのではなく、一定の期間を経てから作用を確認することができるのです。

これと同じく、人間の成長も努力とそれに見合う成果は、S字曲線を辿ることが圧倒的です。一定期間の停滞期を経て一気に成長、また一定期間の停滞を経る…ということを繰り返することが、人間としての摂理・定理とも言えるでしょう。

やってない訳ではない。でも「ちょっとやって止める」が大多数

一見当たり前のように感じるこの定理ですが、多くの人が成果を感じられない停滞期を乗り越えることができず挫折してしまいます。そして「一気に成長」の段階を体験することができません。

なぜでしょうか?

それは、「やっていない訳ではないが、ちょっとやってすぐ止める」からです。大きな物事を成し遂げようとするならば投資が必要ですが、一定期間、愚直な実践を継続することが想像以上に難しいのです。

Aさんは社内での″迫害″に遭いながらも数年間すべきことを粛々とやり続けた結果、ある時、業績が好転し一気に過去の労苦が日の目を見るようになりました。この期間は人によって異なりますが、「ちょっと苦しい」停滞状態をいかに継続できるかが、成長と変化を体験できる大きな要素になると言えるでしょう。

人生のデフォルトが「不快なことから逃げる」に傾いていないか?

最近のメディアや世の中の風潮として「頑張らない」「無理をしない」ことが推奨されることが多くなりました。それぞれ「自分の適性に合わないことをやみくもに頑張るよりは適性に合うことをすることが好ましい」、また「100の力がある人が120のことをしようとしても長くは続かない」などよく理解できることではありますが、これらの主張によって「不快はことからは逃げる」「辛いと思ったら止める」という考えに傾きすぎないよう注意が必要かと思います。

前述の通り、ちょっと苦しい停滞期を乗り越えてこそS字曲線の成長を経験できますし、ちょっとやって止めるを繰り返すことで成果のない自分に嫌気が指すようになると、ますます自信を失い成長が鈍化するようになるからです。

私自身、心が弱くなっている時に「頑張らないことが大切」と聞くと「(実際は違うのに)今やってることが自分に合わないから止めるべき?」とか「無理をしないことが大事」と聞くと「(まだできるのに)今の自分は無理をしているのかな?」などとつい考えてしまうので、考えを間違えることで成長のチャンスを逸することがないよう気をつけたいと思っています。

個人的な体験

最後に個人的なことで恐縮ですが、この半年で体重が5〜6キロ減り体脂肪も25%から20%以下になった経験をご紹介したいと思います。半年前、家族からスマートウォッチ(睡眠や運動等を計測できる時計)をプレゼントしてもらったことを機に、運動や睡眠、食事に気を使うようになりました。年齢的にも体の管理をしっかりしないといけないと感じていた時期でもあったため体質改善を始めたのです。

専用のアプリを使って必要運動量、睡眠時間、カロリーや栄養素を管理するようになったのですが、始めた当初は「そんなに大変じゃないな」と感じられ、運動も楽しく体重も順調に減ってきたのですが、1週間、2週間…と続ける内にだんだん辛くなってきました。

特に成果が見えない時期は、「ああ、今日は疲れた。運動は明日することにしたい~」「ここまでやらないといけないのかな?そもそも健康診断の値も正常範囲内だったし」「ちょっとぽっちゃりしている方が一番長生きするというし、食事管理は適当でいいかな~」などいろいろな考えが浮かんできたのですが、S字曲線で成果を感じられる時が来ると自分に言い聞かせて、低い水準でもとにかく継続を心がけました。

下のグラフは体重と体脂肪のグラフですが、全く直線ではなく停滞どころか増えてしまうこともしょっちゅうでした。

《体重と体脂肪の増減グラフ》

リーダーシップドック 体重と体脂肪

また、下の図は現在の体組成です。半年前の記録は残っていないのですが、「体内年齢35才」というのは実年齢より相当若いので以前より良い状態になっていることは間違いないと思います。

《現在の体組成》

リーダーシップドック 体組成

このことを通して、たとえ低水準でも止めずに続けることで成長が突然やってくることがあるし、成長や成功への道のりは決して華々しいものではなく「ちょっとしんどい」状態にある自分と折り合いをつけながら粛々と進んでいくものであることを感じました。

もちろん、人としての成長は体質改善のように分かりやすく数値化できるものばかりではなく、成長を実感するタイミングも内容も様々だと思いますが、読者の皆さんが途中で諦めることなく思い描いた成長を遂げる一助になれば大変嬉しく思います。