危機の時、リーダーはどう変わるべきか?

危機の時、リーダーはどう変わるべきか?

はじめに

コロナ禍が終息に向かうと思われていた昨年末から状況が一気に変わり、再び自粛生活を送ることとなりました。未来の予測がこれまでにないほど難しくなったこの時、社会全体がもはや過去に戻ることを望むだけでは乗り越えられない新たな局面を迎えていると言えます。

私もリーダーとして、今までとは異なった変化を迫られている1人です。

このような状況では、組織のリーダーはメンバーの健康を守り、自組織のレジリエンス(回復力)を高め、変化に狙いを定めた策を講じる必要があります。

今回は、危機の時に求められる組織・リーダー像を考えていきたいと思います。

「当たり前」の変化と2つの組織スタイル

当たり前にできていたことが制限を受け、目的の達成のために代替となる新たな施策があらゆる組織で求められています。

今回危機に直面したことによって、2つの組織タイプの違いが鮮明になりました。

◎外から学ぼうとしない「独善的な組織」のリーダー
変化に抵抗し、危機に直面すると過去の成功体験に立ち戻って耐えようとする

◎最善を追求する「研究し努力する組織」のリーダー
変化を期待し、危機のさらに先を見据えて研究する

この組織の違いについて見ていきたいと思います。

外から学ぼうとしない「独善的な組織」のリーダー

変化に抵抗し、危機に直面すると過去の成功体験に立ち戻って耐えようとする傾向があるリーダーの組織です。

あらゆることをリーダー陣が決め、メンバーや現場は黙って従うことが求められます。

現場メンバーからの余計な口出しは無用であり、必要なことはリーダーから指示するコミュニケーションスタイルです。

現場を知るメンバーが何を感じ、どのように考え、どうして行きたいと思っているのか関心を持つ必要が無いため、リーダー陣は居心地が良い環境かもしれません。

この傾向がある組織は、時流に恵まれ市場を捉えた成長をしている時は順調ですが、市場が落ち着いたり、危機が訪れた際は外から柔軟に学ぶ姿勢がなく、運に恵まれていた成功体験にしがみついてしまうため、低迷していきます。

また、居心地の良い人たちはより一層、自身の立場を作るために秘密主義になり、より支配的になり、私欲や保身の力学が働き、組織としては不健康な状態となっていきます。その結果、メンバーの組織へのロイヤリティーは低下し、不信が増殖していきます。

右肩上がりの高度経済成長時の昭和の時代には、経験値が豊かなリーダーの過去の経験を参考にし組織を導いていくことが効率的かつ生産的でした。また、経済成長期であった安定こそがメンバーのロイヤリティーを高めていました。しかし、変化や今回のような脅威にさらされると、このような組織は学び研究する習慣がないめ、的確な打ち手が打てず、近視的で孤立した状態になる傾向があり、スピードは様々ですが低迷していきます。

上記のマネジメントスタイルで太刀打ちできる時代では、もはやなくなっていると考えられます。

しかし、このマネジメントスタイルは未だに受け継がれており、若いリーダーやベンチャー組織でさえも、この傾向を持つリーダーが少なからず散見される状態です。

最善を追求する「研究し努力する組織」のリーダー

変化を期待し、危機のさらに先を見据えて研究する傾向があるリーダーの組織です。

外部や内部から様々な情報を得る努力をし、組織の中でその情報を循環(共有のループ)させます。

自らの経験だけに頼るだけではなく、様々な情報から研究していくため、その情報を共有し、メンバーからの意見や知見を引き出し、リーダーはその判断の責任を負います。

「メンバーは目先のことしか考えていない」と話すリーダーは散見されますが、少なからずリーダー自身が適切な情報の循環をさせる努力を怠っていることがその要因になっている場合があります。

変化の激しい時代においては過去の成功が通用する可能性は高くはなく、変化を見据えて先手先手の打ち手を打てるように、メンバーを活かしていく必要があります。

今は解決すべき問いが複雑化・多様化した時代であり、リーダーだけが解を出せる時代ではもはやなくなっています。常に現場の状況と情報、知見を吸い上げ、アイディアを活かしていくことがリーダーの仕事の重要なポイントとなっています。

リーダーとして、最善を追求する「研究し努力する組織」を創るには

そのような状況にするためにはメンバーにとって自らの強みを活かせるようにのびのびと発言や挑戦、研究できる健康的な環境を作ることがリーダーには求められます。

現場を知るメンバーが何を感じ、どのように考え、どうして行きたいと思っているのか関心を持つことが重要になります。

組織が研究し努力できるようにするためにも、リーダー自身が外から学び情報を循環させることが役割になります。また、リーダーが果たせる役割として部門の垣根を超えて交流を創り出し、組織の情報を滞留させず循環させることです。この循環が新しい有効なアイディアを生み出します。

最善を追求するこの組織の姿勢はメンバーの生産性を上げ、組織へのロイヤリティーも高めます。情報を循環させる文化となっているため、秘密主義となる余地がなく、健全な状態となりえます。

危機的な状況が訪れても、有効な情報をスピーディーに集め、優れたメンバーの知見をもとに打開策を検討することが可能です。

少し前の事例になりますが、台湾のIT担当大臣がコロナ危機発生当初に、スピーディーにマスクアプリを開発したことが印象的な事例です。

早期に各販売店のマスク在庫数をリアルタイムで把握できるアプリを開発し、在庫データの更新頻度は「30秒」と短時間。また、インターネットでの予約販売を実施。事前に本人登録を行い、コンビニなどで受け取るだけとシンプルな方法を取入れました。これで、国民に均等にマスクを配布することを可能にし、話題となりました。

この大臣は人物・人格的にもまったく「壁」や秘密というものがなく、すべての仕事の議事はネット上で公開されています。政府の政策会議に参加するとき、大臣はその場で自分のパソコンに議事録を打ち込み、会議が終わった途端に10ページ以上に及ぶ議事録がネットで公開されます。

学ぶべき点が多い事例でした。

まとめ

危機的な状況の中で誰も経験をしたことがない課題を解決していくためには、その組織のあり方、リーダーのあり方がより重要になっていると考えます。

この危機に直面したからこそ、この時から学ぶ必要があり、求められるリーダー像の変化に私たちは目を向けていく必要があると思います。

独善的になることなく、脅威が襲ってきたとしても、乗り越えられる組織・リーダーとしての土台を今、作るべき時なのかもしれません。

 

※本記事は、2020年5月11日に投稿された記事のリメイク版になります。