なぜ”コスパ”を重視する人が、チャンスを掴めないのか?
はじめに~コストパフォーマンス重視の若者たち~
「コスパ」という言葉をよく耳にするようになりました。コスパとはコストパフォーマンス(費用対効果)の略語のことで、企業研修などで20代の方々のお話を聞いてみると、最近はお金のことだけではなく、見返りを得られない努力や労力、苦労を「コスパが悪い」と言って避ける傾向があることを感じます。「損をしたくない」という心理が強いと言えますし、生き方自体がスマートになったということかもしれません。もちろん全ての若者が”コスパ重視”であるわけではありませんが、円滑な組織運営や世代間コミュニケーションのため、以下の内容をお役立ていただければ幸いです。
「それってやって意味あるんですか?」試行錯誤の欠落
彼らは、物事の正解や問題解決方法をネット検索で得ることに長けています。
つい先日もある会社の営業担当の方から「試行錯誤って具体的に何をすることですか?」という質問を受け、答えに窮したことがありました。その質問の根底には「調べれば分かる答えをわざわざ自分で探す必要があるのか?」という疑問があるので、先輩たちの試行錯誤の事例を聞いてもピンとこない状態だったのです。
さらに「やって意味があることをしたい」「やるなら効果があることをしたい」という願望がマニュアルを欲しがる心理に繋がり、さらに試行錯誤を遠ざける現象に繋がっているようでした。
マネジメントに抜擢できない人になっていないか?
このように、ネット検索やマニュアルを駆使して「効果があることだけをする」ことも、仕事の効率を高めるという点で有益がない訳ではありません。
しかし、過度に試行錯誤を避けることによって起こる不具合もあります。それは一言でいうと『職業人としての実力が身につかないこと』です。
「ああすれば解決するのに」「こうすれば良いとネットに書いてあった」という知識は豊富なのに、本人の試行錯誤を伴う実践が乏しいことで組織から期待されているレベルに成長できていないという事例を、頻繁に目にするようになりました。
彼らは、現場での試行錯誤が乏しいから実力が身に付かないし、実力がないから問題解決の方法を知識として知ってはいても実際に現場で解決することができずにいます。そして、試行錯誤を避けることで職業人としての度量を広げることもできずにいるのです。
結果として、知識は豊富なのに実力不足で度量の狭い人材とみなされ、人事からみて管理職・要職に抜擢しようにもできないという状況になってしまいます。
そうなると、「彼(彼女)の言うことは、理論としては正しい」という形で認めてもらうことはできても、組織の方向性、戦略等を話し合うより重要な議論場に上がってくることができず蚊帳の外に置かれるという残念な状況になるのです。
掴めるのは、自分の水準に合った機会のみ
このことは、例えば営業職など対人関係を要する仕事では顕著に現れます。営業という仕事自体、マニュアルは通用せず試行錯誤の連続を経てこそ売上に繋がる性質がありますし、何事もコスパ重視で「損をしたくない」という営業担当者は顧客から支持を得られません。
特にBtoB営業の場合、顧客も発注に当たって社内で稟議を通さなければなりませんが、「あの営業担当者が自社のために頑張ってくれたから」という好感が後押しになるケースも多いです。将来成約に繋がるか分からない顧客のために苦労も努力もしたくないという営業担当者を誰が支持するでしょうか?当然、大口案件の引き合いも来ないのです。
人はよく「チャンスをつかみたい」「機会を掴みたい」と言ったりしますが、掴めるチャンスは自分の水準にあったもののみ、と知っておく必要があるでしょう。効率を重視すると短期的には仕事のパフォーマンスは伸びていきますが、実力がないと目の前に大きなチャンスがやってきてもそのチャンスを掴むことができないのです。
まとめ
ビジネスマンとしての実力は「試行錯誤」の連続で身について行きます。やること自体の短期的な損得を考えたら実力は伸びていきません。「自分は答えを知っている」「分かっている」ということで満足せず、自分が置かれている環境や経験を通じて、学べることを徹底的に学び、実力向上と人格向上に務めるべきではないでしょうか。
それができたら、成長した自分に見合った昇進・転職のチャンスを次々掴めるようになるはずです。
※本記事は、2020年7月20日に投稿された記事のリメイク版になります。
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