転職したリーダーに見られる危ないプライド

転職したリーダーに見られる危ないプライド

はじめに

皆さん、職場でこのような人に出会ったことはありませんか?

俺は昔、東証1部の会社で部長をやっていて部下が○○人いた(から俺はすごい)。
昔、社長賞を取って、社員総会で表彰された。
俺はこの事業を25年やっているから詳しいんだ。

1回聞くだけであれば「すごい人なのかも」と思いますが、何回も自慢されたりすると、聞く側は疲れてしまいます。私も元上司から社長賞の話を25回くらいされて辟易していたことを覚えています。

特に、管理職として転職してきた方がこの手の自慢を部下にし続けていたとしたら若干危険かもしれません。なぜなら、この傾向のある方はプライドが高く(虚虚勢を張り)、現状の課題解決について上手く解決に導くことができない管理職の特徴に当てはまるためです。

今回は転職したリーダーに見られるプライドについて見ていきたいと思います。

企業が管理職を採用する目的

企業が管理職を採用する目的は、現状の事業や組織の課題を解決し、さらに発展させることにあります。

よって管理職は転職した際、事業環境や自社の状況に目を向け、現状の課題解決が求められます。

状況を把握しながら、周囲を巻き込み、今までの経験・知見を活かしながら実績を出していくことが早々に求められるのが管理職の転職になります。

課題解決ができる管理職

今まで、様々な管理職層の採用に携わってくる中で見えてきたこととして、課題解決力がある管理職は入社当初から下記の行動傾向があることが分かりました。

①周囲のメンバーとのコミュニケーションを重視し、まずは理解することから始める。
②今までの課題を表面的に理解するだけに留まらず、「なぜそうなったのか」市場環境や組織の意思決定、またその構造に目を向け、課題を分析する。
③「ヒト(誰が)」ではなく「コト(どの事柄が)」に目を向け、解決に向けてのプランを仮説と共に早々に準備する。(※○○さんが悪い等、悪者議論にしない)
④解決策を思い込みで実行するのではなく、周囲のメンバーとのコミュニケーションや実態の把握を深く行ない、関係者と合意形成を図る。

入社初日から2週間でこのようなアクションを執ることができる管理職は高い確率で実績を作り出すことができることが実態からわかりました。

では、その反対に課題解決ができない管理職について見ていきましょう。

課題解決ができない管理職

課題解決ができない管理職は入社当初から下記の行動傾向があることが分かりました。

①周囲のメンバーに自身の過去の自慢から入る。(相手を理解するよりも、自分のことを分からせようとする)
②今までの課題を表面的にしか見ようとせず、「ヒト(誰が)」にフォーカスする。
③現状の課題について解決できないことを前任者の責にする言動をすることがある。(特定の悪者の設定)
④解決策を考えたとしても、周囲の合意を取らず、思い込みで実行してしまう。
⑤解決しない現状についてアドバイスをされても、聞き流し、一向に状況が改善しない。(または悪化する)

行動全体として自らが様々な状況や構造、人を「理解」するアクションではなく、自らを受け入れさせようと、間違った行動とそのための努力に必死になっていることが伺えます。

なぜ、課題解決ができない管理職はこのような行動を取ってしまうのでしょうか。

その要因として「危ないプライド」が考えられます。

危ないプライド

危ないプライドとは自分自身の過去の栄光を転職先で認めさせようとするプライドになります。

転職をしてくると、今までの実績を知っている人はおらず、人間関係や仕事での信頼関係を一から構築する必要があります。
5年、10年、20年かけて作ってきた組織での信頼関係は転職先にはないためです。

当然、楽なものではなく、転職して一番苦労するポイントは自分自身を理解してもらうことだと思います。

ただ、その方法としてまずは、自身が事業環境や転職先のことを理解することから始め、実績を出してこそ、認められることが原則になると考えられます。

しかしながら、転職しても問題解決や先行きをイメージせずに転職してしまう管理職層も一定数存在します。

恐らくですが、管理職ではあるものの、問題解決をする立場になかったり、一程度同じことを繰り返してさえいれば管理職でいることができる組織やポジションにいた方がこの傾向となってしまうのではないかと考えられます。

その中で会社が求める問題解決について良く分からず転職をしてしまう人は「自分を理解してもらう」ため、過去の栄光アピールに必死になり、できない自分を見せないためにさらに自身のやり方に固執し状況を悪化させてしまうことがあります。

この「できない自分を見せないように、過去の栄光をアピールしたり、自身のやり方に固執する」ことが危険なプライドになります。

危険なプライドの正体

危険なプライドの正体は「実力の無さ」「劣等感」「承認欲求」にあると考えられます。

ビジネスの世界ではある程度の「実力」があれば、過去の栄光にすがる必要はなく、今の実績で十分に認められるため、あえて過去をアピールする必要はありません。

また、解決のための道筋が見える人はミッションを成功へと導くことができるイメージを持っているため、「劣等感」を持つことなく、周囲を巻き込み、調整をしながらさらに成功確率を上げていきます。(プランもオープンにし、アドバイスを求め、さらにプランをブラッシュアップしていきます)

結果として「承認欲求」を自然と満たすことが可能になり、本人も周囲も円満に業績を上げることに邁進していくことができます。

反対に、転職に際し過去の実績を盛って(実態以上に良いように見せかけて)転職してしまった人は内心、自信がないため、自分が解決できるか不安でいっぱいです。

自信のなさから、まずは組織内で自分自身が安全なポジションを確保すること(保身)で頭がいっぱいです。そうなると、前任者や周囲に対して自身がいかに優れているのか過去をアピールする術しか残されておらず、間違った方向に努力をしてしまいます。

前任者よりも力がないかもしれないとの不安(劣等感)もある中で周りに認められようとすると、自身の過去をアピールすることと、前任者の不備の責任にすることをしてしまいがちです。

また、自身のプランややり方についてオープンにしてしまうと「できない自分」が露呈してしまうと考え、周りに相談をしたりアドバイスに耳を傾けたりせず、自分のやり方に固執してしまうのです。

このことから問題解決の成功確率を下げてしまうため、ますます自分自身の承認欲求を満たせず、劣等感に苛まれ、さらに実力もついていきません。

この危険なプライドは、恐ろしいことに年齢に関わらず持ってしまうため誰もが注意すべきですが、年齢が上がれば上がるほど持ってしまいがちです。30代を過ぎたら特に気をつける必要があるでしょう。

危険なプライドを持たないためには

過去に上手くいったとしても、「今」上手くいくとは限りません。「今」に目を向け、「今」の課題を解決するため、絶えず学習していく必要があります。

「知らない」ことを恐れず、周囲に教えを乞い、理解する努力から始めることが特に重要だと考えます。

私たちが生きている時間の中で「知っていること」よりも「知らないこと」が圧倒的に多いことが事実だと思います。だからこそ、知らないことを知り、知る努力をすることが何よりも重要ではないでしょうか。

有能なビジネスパーソンほど、周囲に教えを乞いながら、努力によって解決策を編み出し、周囲からの協力を取り付けます。

過去がどうだったかを証明したければ「今」の課題を解決してこそ、過去も栄光があった人であったことが伝わるかもしれません。

管理職として転職した際は過去の栄光をわざわざアピールする必要はなく、まずは自分は分かっていないことを前提に知る努力をすることをおすすめします。