組織と個人を停滞させる「エコーチェンバー現象」とは?

組織と個人を停滞させる「エコーチェンバー現象」とは?

はじめに

あなたは自分に批判的な人や、反対する人の意見をどれくらい聞くことができていますか?

自分に批判的な意見を排除し、居心地の良いコミュニティにばかりいることで起こる恐ろしい現象があります。

今回の記事で、自分や所属する組織がその現象に陥っていないか、チェックしていただければ幸いです。

「エコーチェンバー現象」とは

エコーチェンバー(Echo chamber)とは、一般的に
1)「反響室・残響室」の意味。音を増幅または反響させる閉鎖空間
2)自分と似たような価値観や趣向を持つ人が集まる閉じられたコミュニティの中で、同じような情報ばかりが流通するような情報環境
となっています。

2)のような環境でコミュニケーションを繰り返すことで、その思想や趣向が肯定され続け、それが世の中の正義であったり、スタンダードだと思い込んでしまうことを「エコーチェンバー現象」と言います。

ネット上ではエコーチェンバー現象が起こりやすい

ハーバード大学の法学者キャス・サンスティーン教授は2001年に『インターネットは民主主義の敵か』を出版し、ネット上の情報収集では、同じ思考や主義を持つ者同士で、閉鎖的で過激なコミュニティを形成する「集団極性化」を起こしやすくなる、と指摘しました。

この発表から20年ほど経った現在、SNSの普及により、エコーチェンバー現象は、私たちにとって身近に陥りやすい罠のようなものになりました。

自分の趣向や思想に合うコミュニティの中にだけいると、だんだんそれが「多くある中の一つ」ではなく、「世界の中心」に変わっていきます。極化すると、他の意見を認めず、「自分の意見だけが正しい」と思い込み、すべてそのフィルターを通してみるようになります。すると集団全体に大きな壁ができ、社会との分断が起こります。ネット上で「炎上」や「フェイクニュース」がしばしば起こるのは、以上のような背景があるからです。

組織のエコーチェンバー化とは

ネット上だけではなく、エコーチェンバー現象は、どのような組織においても起こり得ます。

会社や組織も一つの閉鎖的なコミュニティです。リーダーの思想に異を唱える者を排除し、同じような考えを持った人ばかり集めるならば、組織はエコーチェンバー化していきます。一見スムーズに物事を進められそうですが、いつも同じような視点や内容で議論され、自分たちに都合の良い情報ばかりが提供されるため、視野が狭くなり、間違いがあってもそれを正す機能がなく、組織に停滞や失策を招きます。

「群盲象を評す」ということわざのように、一部分だけを見て全体を見ることができなくなるのです。

経営層と従業員との分断も、エコーチェンバー現象に陥っている場合がしばしばあります。同じ立場の者同士の方が共感しやすく、話が通じやすいからです。

組織の中から、「言っても通じない」「認めてもらえない」などの声が聞こえてきたら要注意です。

組織のエコーチェンバー化を回避するには

では、エコーチェンバー化を回避するにはどうしたら良いのでしょうか。

1)様々な意見に耳を傾ける

今は「多様性の時代」と言いますが、それは「少数派を認めること」ではなく、「一人ひとり、その人のあるがままを認めること」が本来の在り方です。

立場や役割が違えば、視点や意見が違います。

反対を唱える人には、そう考えるだけの理由と背景があります。まずは、それを否定せず、理解しようとすることです。反対するというだけで、話を聞かない、聞いても理解しないならば、分断していくほかありません。

リーダーが常日頃から、特定の人だけではなく、さまざまな立場の人とコミュニケーションを取ることで、より幅広い視点で組織を捉えるようになり、それを反映したマネジメントができるようになります。

2)第三者の視点を取り入れ、より全体像の見える視野の広い人と接する

会社外から「社外取締役」を採用している企業があります。それは、会社内のしがらみに捉われることなく、経営状況を判断してもらうためです。

外からの視点によって、自分たちがどう見えているのか、を把握することができます。

そして、視野の広い人と接することも大切です。例えば、市長と県知事なら、県知事の方がその県全体の様子を見て物事を考えています。より全体像が見える立場の人と接することで、その人の視点で物事を考えるようになります。

人間が地上を歩く時には地球が平らに見えていますが、大空を飛ぶ鳥類が空を飛ぶ時には、地球をボールのように見えていることもあるそうです。

あなたにとって、誰が自分の視野を広げてくれる人ですか?本でも、実在の人でも良いので、そういう存在を作っておくことも大事です。

終わりに

エコーチェンバー現象は、現代において非常に深刻で、誰もが陥りやすい問題です。

ネットに触れることが多いからこそ、自分の視野が狭まっていないのかを点検したり、あえて意見の異なる人と対話したりする努力が必要です。

見るものを広く、考えを広く、一部分を見ないで、全体が見える人になっていきたいですね。

   

※本記事は2022年5月26日に投稿された記事のリメイク版になります。