行動力溢れるビジネスマンが、「猪突猛進型リーダー」にならないために

行動力溢れるビジネスマンが、「猪突猛進型リーダー」にならないために

他者に先んじて考え行動を起こせる人、様々な提案をしてどんどん推進できる人、このような人は、組織の中では重宝され、リーダーとして活躍する機会が多いと思います。しかし、この行動力の高さは、一歩道を間違えてしまうとあらぬ方向に進んでしまう危険性も持ち合わせています。
今回は、行動力がある人がリーダーになった時、陥りやすい失敗とその特性を輝かせるための秘訣を、事例を元にお伝えしたいと思います。

 

行動を向ける方向性の重要さ

行動力は結果を生み出すために不可欠なものです。行動力が高い人ほどチャンスを掴む機会も増え結果が出しやすいため、周囲から評価されやすいこともあると思います。
しかし、バイタリティが高くて行動力に満ち溢れた人ほど、その力をどこに向けるかが重要であり、動くよりも先に、考えでそのことを確認し判断し分別する必要があります。
行動力の高さに任せて計画性なく物事を進めてしまうと、思いつきで目的なく動き回ったり、遠回りをしてしまう等の不必要なアクションを起こしたりします。また、リーダーであった場合は多くのメンバーを振り回した挙句に、結果として自分やメンバーの貴重な時間、労力を無駄に浪費してしまうことになります。
そのような方やリーダーには「目的」についてアドバイスをさせて頂いています。
実際にヒアリングして確認してみると、行動していく中で「目的」と関係のない小さいことばかりをあれこれとやっているうちに、行動そのものが「目的」にすり変わり、本来の目的を見失っていることが数多くありました。

 

あなたは「猪突猛進型リーダー」になっていないか?

行動力に強みがある一方で、方向性を定めることが苦手な人がリーダーになってしまった場合、一見頼もしいのですが、暴走と迷走を繰り返す「猪突猛進型リーダー」が出来上がってしまいます。そのような方々に不可欠な器量として「アドバイスや意見に向き合い活かす器」が挙げられます。
自分が間違った方向に進んでしまった時、改善提案をしてくれるような人を受け入れるか、受け入れないかの決断は、その後の業績に重大なインパクトを与えます。
ここからは、ある2人の代表者のエピソードを元に話を進めていきたいと思います。

 

若手経営者Aさん

エンジニアとして組織経験なく起業したAさん。
事業を急拡大する中で新しく提唱されたティール型の組織を組織ポリシーとして提唱されていました。ティール組織とは、最新の組織形態として近年注目を集めていますので、関心がある方は書籍を参考にして頂けたらと思います。(ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」作者: フレデリック・ラルー,嘉村賢州,鈴木立哉 出版社/メーカー: 英治出版)。ティール組織には上司と部下といったピラミッド状の序列はありません。ミドルマネジメントは存在せず、出世の階段もないのです。評判や影響力、スキルに基づく流動的で自然発生的な階層はあるのですが、それは上下関係ではありません。重要な判断はすべてチームで決める組織です。
Aさんはポリシーとしてティール組織を謳っていましたが、実態はAさんが代表としての力と恐怖によって支配する「衝動型(レッド)組織」となっていました。Aさんは、重要なプロジェクトの中で関係者の意見はあまり聞かず、代表として自分の主張や強い意見を出して従わせようとするのですが、実力や実務能力、経験に欠けているため肝心な意思決定や重要なハンドリングの局面で動かし方が分からず責任から逃れ、社員にその責任を転嫁し、社員に対して自身の行動と組織的な矛盾を背負わせていました。
表面的にはティール組織であるのにも関わらず、実際は全く異なっていたのです。これは代表のAさん自身の、他人から「代表・経営者」として認められたい、実力がないことで自分の面子を潰されたくない等の劣等感やコンプレックスの強さ、自身の矛盾が引き出してしまった結果でした。
その後、一時的に事業が立ち行かなくなった際、周囲から様々なアドバイスがあり、Aさんが自分自身を振り返る変化の機会を得ました。しかし、資金の調達ができるとAさんはまた、アドバイスや意見に向き合わない傲慢な態度に戻り、組織として変革・修正のチャンスは失われ、メンバーにとってはティール組織とは言い難い組織のままとなってしまいました。組織としての成長は期待しがたい状態と言えます。

団体代表のBさん

団体を立ち上げたBさん。
Bさんは、社会の動向や課題を読み解いて斬新な提案をするのが上手な方です。しかし、猪突猛進型で思いついたままに行動してしまうため、団体の現状やリソースを見てどうすべきか、というところまで考えることは苦手でした。また、プライドが高く自分の考え方に自信を持ち過ぎていて、計画的に動くことができず、思いつきで行動するためメンバーの意見に耳を傾ける余裕がなく、性格的な側面も加わり、独断的に団体運営を推し進めてしまっていました。
しかしある時、団体の運営が立ち行かなくなったことを契機に、Bさんは団体がうまく行かなくなった原因を自分自身に求め、自分の考え方や行動を振り返ることをしました。
その中で、Bさんはメンバーの得意な領域や強みを活かしきれていない自分自身に気付きました。あらゆるメンバーとコミュニケーションを取り、相手の話をよく聞き、アドバイスを求めました。このことによって、方向性について分析することが得意なメンバー、情報収集をしながら方向性についてコンセプトを立てることが得意なメンバーなど、自分自身の団体メンバーの強みを再確認しました。メンバーに仕事を任せ、個々の強みを活かすことによって、自分自身が行うよりもより優れたアウトプットを出すことが可能な状況を創り出しました。それからは、持ち前の発想力と行動力を活かし、メンバーと共に好調に事業を推し進めています。

最後に

私は、AさんとBさんのエピソードから、行動力溢れるリーダーこそ、「アドバイスや意見に向き合い活かす器」が大切であることが分かりました。
その中でも特に大切なのは、目的に沿った方向性についてのドバイスには積極的に向き合い、周囲を活かしながら、自分自身の行動力を活かすことです。有効なアドバイスは時に鋭く理にかなったものとなるため、意見を受け入れることは、自分の非を指摘されたようで、プライドが許さない、という方々もいらっしゃるかもしれません。しかし、どんなにできる人であったとしても、その人が1人で同時に2つことを50%ずつのパワーで進め、部下にはただ指示に従わせ作業のみをさせて使うのと、信頼できる部下2人の意見を聞き入れながら任せて1人が100%のパワーで行うことと、どちらが良い結果を生み出せるかは明白だと思います。
大きな目的を成し遂げるためには、今の自分の限界を抜け出すことが必要であり、そのためには周囲からの「アドバイスや意見に向き合い活かすこと」を意識しながら、まずは自分の変化を作り出していきましょう。