第三週 アフターコロナ「日本の営業」営業担当者はどう変わるべきか?

第三週 アフターコロナ「日本の営業」営業担当者はどう変わるべきか?

5 月特別企画「コロナ後の世界」

5月は今私たちが直面している最も大きな問題である「コロナ後の世界」についての記事をお届けしています。第三週目は「日本の営業」のコロナ後を予測します。

はじめに

コロナの時期、日本の多くの営業担当者は、過去に経験したことのない「顧客に会えない」という苦境に立たされたことと思います。今も「顧客に会えない状況にも関わらず、予算(ノルマ)は達成しなければならない」という難しい状況を何とか切り抜けようと、もがかれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、コロナが明けた後「日本の営業」という仕事がどのように変わっていくのか、営業担当者は何を変えるべきなのか、予測していきたいと思います。

「日本の営業」の特徴

まず、私たちが当たり前に「これが営業の仕事」と思っている「日本の営業」が一体どんな仕事なのかマーケティング先進国のアメリカと比較しながら考えてみたいと思います。

日本で「営業」というと会社の業績を担う花形部門・重要部署というイメージが多かれ少なかれあると思いますが、マーケティング先進国のアメリカでは、セールス(人的営業)はマーケティング活動の一環であり、営業担当者(Salers rep)がより専門的に狭い範囲の業務を行なっているケースが多いです。

「マーケティングミックス」という言葉を一度は耳にされたことがあると思いますが、マーケティングミックスとは、次の4つの戦略が原型と言われています。

・製品戦略:どんな製品を作るか?
・価格戦略:どれくらいの価格で販売するか?
・流通戦略:どういうチャネルを使うか?
・販売促進戦略:どんな風に商品をお勧めするか?

これらを組み合わせて全社的に業績の向上を狙うのがマーケティング活動ですが、セールス(人的営業)はこの販売促進戦略の中の一戦略、一戦術として位置づけられています。

アメリカは国土が広く直接顧客に会ってプレゼンテーションを行なうセールスには限界があるため、 メディアを通じた販売方法が早くから発達してきました。

マーケティングの研究が早くから進んだのもこのためです。今でもWebマーケティング、データベースを活用したマーケティング等、最先端のマーケティング 研究ではアメリカは群を抜いています。したがって、セールス(人的営業)への依存度が日本ほど大きくありません。

一方、日本では、「御用聞き営業」「情による営業」という営業スタイルが確立されている程、営業担当者が顧客と直接対面することで関係性を築き上げ、長期的な取引きを続ける商習慣が続いてきました。営業担当者の人柄や仕事ぶりが、そのまま「全社的な販売促進活動」のような重要な意味を持つこともあり、営業担当者や営業部門への期待度や依存度が大きかったことが特徴です。つまり、日本においては「営業」はマーケティング理論で説明されるセールス以上に大きな役割を果たしてきたのです。

コロナ後の「日本の営業」

ところが、コロナショックによって、この「日本の営業」を根本から見直す必要が生じてきました。対面で顧客に会うことが難しくなったことで、ある意味、国土が広い故に対面販売できないアメリカと営業担当者を取り巻く環境が近くなったとも言えます。コロナが明けてもリモートワークが拡大するなど、以前に比べて営業担当者が顧客と「直接会う」ことの難しさ、ハードルは上がっていくことが予想されます。

よって、企業・組織としては、営業担当者の営業力を強化することよりも、マーケティング戦略を重視した営業体制作りに注力することが重要になってくるでしょう。

具体的には、直接対面で顧客に合う前のリード(見込み客)の発見や育成に力を入れるマーケティングがさらに発展していくと思われますし、SNSやオンライン会議等を駆使した営業活動に転換できる企業がより有利になっていくでしょう。

営業担当者の人柄や人脈など「属人的な強み」に頼る営業組織は、今後苦戦を強いられていくはずです。

営業タイプ別の予測

営業のタイプ別に今後の趨勢を考えてみると、各種マーケティング活動に代替え可能なセールスは需要が減ってくると思われます。

コロナ後も需要が減らないセールスタイプ

・コンサルティングセールス・・・顧客の問題解決を伴うセールス
・テレセールス・・・一定のニーズがある顧客への電話、オンライン通話でのセールス

コロナ後徐々に需要が減っていくセールスタイプ

・ルートセールス・・・既存顧客への再注文セールス、もしくはメーカーや商社による代理店セールス
・訪問型セールス・・・新規開拓を中心とした未認知客へのセールス

今後は、買い替え需要を狙う再注文狙いの営業や、いわゆる「足で稼ぐ営業」への需要は縮小していくことが予想されます。

営業担当者として何を備えるべきか?

コロナ後の市場の変化に合わせて、営業担当者も変わっていかなければなりません。

まず、今後は「熱心だから」「足繁く通ってくれたから」という理由での受注は以前ほど期待できないことが予想されるので、「商談が上手くできるようになること」が至上命題になるでしょう。オンラインでの商談の頻度が増えることを想定して、ポイントを列挙いたします。

会話が洗練されていること

オンラインでの会話は、通信の状況によっては会話が途切れてしまうこともありますし、長時間続けると疲れてしまいます。回りくどい表現やとりとめのない話は極力避け、端的に必要な情報を伝える努力が必要でしょう。また滑舌が悪いこと、「あー」「えー」「うー」などの無駄の言葉、「チッ」という舌打ちなどは、オフラインではさほど気にならなくてもオンライン上での会話では耳障りになりやすいです。

分かりやすく説明できること

オンライン画面共有機能などを使って視覚に訴える資料を作り、分かりやすく伝えることです。資料の見やすさ分かり易さが以前に増して大切になってきます。最近はプレゼンテーション資料のテンプレートも充実していますので、研究されることをお勧めします。

相手のメリットを明確に提示すること

関係性や情に頼る営業スタイルが衰退していくことは、つまり顧客がメリットが大きい業者、営業担当者を今以上にドライに選ぶようになるということです。今以上に、顧客目線で自社と自分自身を見直し、「自社(自分)と取引することで相手は何が良いのか?」を検討することが不可欠です。自社の商品やサービスの中で「この点は他社に比べて有利」というポイントを中心に商談を組み立てることも有益です。

圧倒的に商品知識、業界知識に精通していること

営業担当者は、ネットに出ている情報より詳しい情報を持っていなければなりません。そしてそれらの情報を整理した状態で顧客に説明できてこそ、「オンラインでも会って話を聞きたい」と認めてもらいやすいです。最初は営業担当者が売りやすい商品・サービスを限定して深堀りしていく形でも構いませんので、「あの人に聞けばこの商品については海外も含めて何でも分かる」と専門家として認めてもらえる研究が必要だと思います。

いくつかのポイントを列挙いたしましたが、セールスのプロ化、専門家が進む中で、生き残れる自分を作ること、このことに尽きると思います。

各自が研究し、アフターコロナも活躍される皆さんになることを願っております。