第一週 組織に安心感を与え、次に進むためにリーダーがすべきこと

第一週 組織に安心感を与え、次に進むためにリーダーがすべきこと

7月テーマ「機会を掴む」
「ピンチはチャンス」という言葉があります。辛くて大変な境遇がむしろ人を成長させ、以前よりももっと良い状況になる原動力にもなり得るのです。今月は私たち各自が置かれている状況の中で得られる機会があるとしたら、それはどんな機会なのか、発見するヒントとなる記事をお届けすることを願い「機会を掴む」というテーマを設定しました。

はじめに

日本では、5月25日に緊急事態が終了した旨が宣言がされ、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げて来ました。少しずつ社会が動き始めてきた一方で、7月に入り東京では感染者が再び増加するなど、コロナウイルスの問題とは長く付き合っていかなければならないようです。

100年に1度とも言われる未曾有の事態に見舞われている今日、先が見えない状況の中で私たちはどのように行動していくべきなのかを一緒に考えていきます。

不安との戦いをどうするか

コロナウイルスの問題が起こる以前から、最近の社会ではSNSで安易に情報が拡散されるようになったことも含め、誰かの不安な思いが他の人の不安を誘い、一気にその不安が増大していくという傾向がありました。その結果、何でもない小さなことが大きな問題のようになってしまったり、小さな誤解が大きな誤りを生んだり、小さな憎しみが大きな争いを生んでしまうことが少なからずありました。

そういった流れの後にコロナウイルスの問題が発生し、この半年間で社会全体に「不安」が更に広がってしまったことが大きな問題ではないかと思います。

不安な状況の中では、落ち着いて判断をしたり、他者を思いやる心を持つことは難しいですから、今の時代のリーダーは「いかに人々が安心して前を向ける状態を作り出せるか」が求められます。

リーダーがすべきこと

「根拠がない大丈夫という言葉」では人々は安心しません。では、「安心」とはどのように生まれるのでしょうか?それは命が守られること、生存が脅かされないことではないでしょうか。リーダーはこのことを踏まえて、以下の2つを行わなければならないと思います。

現状をきちんと把握し、関係者に伝えること

組織全体にとって必要な「本当にすべきことをする」ということ

今できることは、この2つに尽きると思います。「本当にすべきこと」は置かれた位置、状況、役割によって違いますが、すべての人に当てはまることがあるならば、「命を守るためのことを最優先にする」ということです。

「人が全世界をもうけても、自分自身を失いまたは損したら、なんの得になろうか。」(ルカによる福音書9章25節)

世の中で一番価値があるものは、命です。生きてさえいれば悩むことはあれど何かができますが、死んでしまったら悩むことすらできません。法や科学技術が何のためにあるのか?それは、命を守り、生かすためです。

組織の経営や運営をする人が、大前提であるこのことに立ち返り、判断して行動する時、組織には安心感がもたらされるのではないでしょうか。

皆で「すべきことをする」努力

自分の命だけを守ろうとする人は、結局は生きることはできません。自宅の庭に木が生えていても生きていくために必要な分の酸素は生み出されず、行ったことがなく自分と関係がないと思えるような、国・世界の森があるから私たちが生きる上で必要な酸素が生み出されます。だからこそ、皆で国や世界の森を守らなければならないように、私たちは自分の命を守ることだけではなく、身の回りの大切な命、関係がないと思う命も一緒に守っていかなければなりません。

誰もが平和に楽しく生きることを望むと思うのですが、「仲良くやろうぜ」と皆が言えば平和な世界が来るほど、単純なものではありません。大切な命を守り、維持するために「必要なものは何か」「どうすれば守ることができるのか」を悩み、研究することが、実力者・責任者には求められますし、そのためのルールや制度、技術、アイディアなど様々なものを生み出していく必要があります。各分野のリーダーとして期待される人にこそ、「命を守り、安心できる環境作りのために、すべきことをしっかりする」ことが求められるのではないでしょうか。

今は皆が大変な時なので、誰もが「もう少し自由にやりたい、楽しく過ごしたい」と思うのですが、一番必要なことは、一部の人が元気になるよりも、すべての人を守るように判断し努力することです。社会全体がそのように考える必要があり、リーダーならばしっかりとその判断と行動をしなければなりません。

判断に判断を重ねる

私の教会でも、コロナウイルス感染防止のため、2月から集まりを中止し、すべての集まりをオンラインで行なうようにしてきました。

緊急事態宣言が解除され少し感染拡大が落ち着いた5月末、いつも仲良くさせていただいている近くの飲食店のオーナーさんから、街を盛り上げるために「無料炊き出し」のイベントをやらないかというご提案をいただきました。近隣の地域も実際にコロナウイルスの問題で活気がなくなっていて、困っている方も多くいらっしゃるので、「困っている人を食べさせてあげたい」「地域を元気にしたい」という、心あるオーナーのご提案でした。

私もいつもお世話になっている近隣の方々に対し、何かして差し上げたいと思っていましたので、6月末から7月の初めに無料炊き出しボランティアのイベントをやろうと意気投合し、開催こそが「今すべきことだ」と思って、実施する方向で調整していました。

しかし、その後の状況をみて、教会の他のメンバーやオーナーと相談し、何度も立ち止まって考慮した結果、6月の初めにイベントを中止する判断をしました。「皆を元気にしたい、力になりたい」という良かれと思っての行動が、かえって地域の人々や多くの人に迷惑を掛ける可能性があったためです。

判断に迷う中、オーナーの一言が私の判断を後押ししてくれました。「不安な状況の中でいくら美味いものを食べても、味が分からんし、力は出ないよなあ。」難しい状況の中で、飲食店を経営されてきたオーナーの言葉には説得力がありました。
その後、6月末以降に東京でも再び感染が拡大していますから、その時中止の判断をしておいて本当に良かったと思います。

まとめ

今はすべての人が将来を予想することが難しい状況に直面しており、不安な中で生きています。リーダーももちろんその一人です。自分の行動がこれから先振り返っても「正しかった」と言われるようにするためには、私欲を捨て、現状を冷静に分析してきちんと説明し、多くの命を守ることを最優先にした行動を取るべきではないでしょうか。このような行動を私たちが心がければ、きっとまた安心、平和が満ちる社会がやってくると信じています。