第二週 「自分株式会社」のCEOとして必要なこと

第二週 「自分株式会社」のCEOとして必要なこと

9月のテーマ「自己成長」
「With コロナ」生活が定着しつつあります。自分一人で過ごせるこの時期は、自分成長に投資できる機会でもあります。今月は「自己成長」をテーマにして記事をお届けします。

はじめに

社会システムが変わろうが、国や世界のルールが変わろうが、誰もが変わらずに目指していくものが「自分の幸せ」です。不幸になりたい人は誰もいませんが、幸せに生きることはなかなか難しいことです。幸福満足度が低いと言われている日本で「幸せに生きる」ために、絶対に必要なことが「人任せにしないこと」「他者批判をしないこと」だと私は思います。

・国の政策が良くないから、一向に生活が良くならない
・うちの上司のせいで仕事が進まない
・今日は急に雨も降ってきて、車も事故渋滞で最悪だった

不平不満は、いくらでも簡単に出てきます。思考の中で一番簡単なことが、他者や環境のせいにすることで、脳のエンジンはストップします。しかし、そこから一歩進んで「自分がどうすれば良かったのか」「その環境から得たものは何か」を考えると、不平不満を言っていた口が閉じ、脳のエンジンが回り始めます。

誰かが楽しませてくれたり、幸せにしてくれることをずっと待つことより、「私は幸せになる」と思って行動する方がずっと速くて楽に生きることができます。

「自分という企業」のCEO(最高経営責任者)が自分だ

少し前の書籍ですが、現代経営学の父とも言われるP・F・ドラッカーは「ネクスト・ソサイエティ」の中でこのように述べています。

「ネクスト・ソサイエティにおける企業とその他の組織の最大の課題は、社会的な正統性の確立である。すなわち、価値、使命、ビジョンの確立である。ネクスト・ソサイエティにおいては、まさにトップマネジメントが組織そのものである。他のものは、すべてアウトソーシングの対象となりうる。」

当たり前ですが、自分を企業に置き換える時、CEOは自分です。このCEOには退任がなく、任期は自分の生が終わるまでです。「自分の価値、使命、ビジョンの確立」こそが自分の課題であり、一生取り組んでいくべきテーマとも言えるのではないでしょうか。この3つの確立について考えていきます。

「価値の確立」は「考えの転換」から

自分の価値を確立する上で、「2つの考えの転換」が必要だと思います。

他者との繋がりの中で生まれる自分の価値

まず、「自分が生きている」という考えから「自分が生かされている」という考えに転換することが大事だと思います。「自分が生きている」と考える時、大変な中を自分が切り抜けて生きてきたという思考になり、良くない境遇にある時は自分が「悲劇のヒロイン」のようになってしまいます。

自分の価値を知るためには、「自分」だけでは分かりません。我が家にはまだ手がかかる子供が3人おり、妻だけでこの3人の面倒を見ることは本当に難しいため「とりあえずいるだけで価値がある」と感謝されることがあります(笑)。「自分がいなくても変わらないんじゃないか」と思ったりするのですが、いてくれるだけでありがたいという事実が実際にあるのです。

自分の周囲の人々や環境を含めて「自分の価値」というものが存在しますから、いろいろな繋がりの中で「自分が生かされている」と考えることが大切です。これまでの人生で自分を助けてくれた人、時間や労力を投資をしてくれた人、環境や機会を作ってくれた人、色んな人の顔や状況が思い浮かび、「自分が生きているためにこれだけの投資があるんだ」と確認することができます。

今の価値を知り、更なる付加価値を付ける努力

次に大切なことが、「そんなに投資してもらったのに今の自分は…」と落ち込むのではなく、「だからこそ大切にしなくちゃ」と考えを転換することです。たとえ今の自分に価値がないように思えても(本当はものすごい価値があるのですが)、未来の自分へ投資してくれたのだと思い、前を向くことが大切です。

現在の自分にものすごい価値があるということを認識し、自分への再投資によって更なる価値を生み出していく行動がCEOには求められます。そのように随時確認しながら行動していけば、歳月が過ぎるほど自分の価値は高まり、他者とは比較ができないものとして確立されていくでしょう。

「使命の確立」は「信じる」こと

使命の確立で大切なことは、「偶然はなく、必然なのだ」と運命を信じることだと思います。自分の計画通りに進まないことが、機会や人と出会うことです。その時に「偶然だ」と思うのではなく、すべてのことには「縁」や「運命」のようなものがあって、何か意味があるのではないかと思う時、その出会いを大切にすることができます。

今の仕事、今の境遇にも必ず意味があり、その先に神様が与えてくれるものが、自分にも他者にもあると信じる時に、自分の行なっていることに必要性を見出すことができます。

私の尊敬する牧師が、60歳を超えたある方から「この年齢になったけれども、神様が自分に下さった使命が分からない。人間として生まれてやることは何なのか」という質問を受けたそうです。それに対し彼は、「今やっていることがあなたの使命だ。あなたが今生活をしていることが、あなたの使命だ。」と答えました。私はその話を聞いた時、「使命」という認識が変わりました。

「使命」というと、何か大きなことや多義名分のようなものを考えがちですが、使命というのは実は「自分が本当にするべきこと」です。毎日食べて、寝て、洗ってこそ生きられるように、それぞれが置かれた状況でしなければならないことを、創意工夫して「より良く」行なうことが重要です。どんなに自分が気に入らないものだとしても、その時は面白くないように思えても、しなければならないことならば「これには意味がある」と思って実践していけば、必ず自分の大きな使命の確立に繋がることでしょう。

「また天国は、ある人が旅に出るとき、その僕どもを呼んで、自分の財産を預けるようなものである。すなわち、それぞれの能力に応じて、ある者には五タラント、ある者には二タラント、ある者には一タラントを与えて、旅に出た。五タラントを渡された者は、すぐに行って、それで商売をして、ほかに五タラントをもうけた。二タラントの者も同様にして、ほかに二タラントをもうけた。しかし、一タラントを渡された者は、行って地を掘り、主人の金を隠しておいた。だいぶ時がたってから、これらの僕の主人が帰ってきて、彼らと計算をしはじめた。すると五タラントを渡された者が進み出て、ほかの五タラントをさし出して言った、『ご主人様、あなたはわたしに五タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。(マタイによる福音書25章14〜21節)

「ビジョンの確立」はビジョンを見ようとすること

人間なら生きることが大変ではない人はいませんから、各自が自分の生活でいっぱいいっぱいになってしまい、余裕がない時は、更に他者のために生きようとすることは難しいです。その時に必要なものがビジョンです。リーダーならば、フォロワーに対しビジョンを見出して示してこそ、従ってくる人たちの気持ちを奮い立たせ、今いっぱいいっぱいになっていること以上のものを引き出すことができます。

これは自分に対しても同じです。自分がビジョンを見出し、力や希望がない現在の自分に明るい未来のビジョンを示せなければなりません。そのためには、当たり前ですが「自分でビジョンを見よう」とすることです。もちろん見えない時もありますが、子供が成長すれば行動範囲が広がって、新しい世界に出会うように、焦らずにしっかりやるべきことをやって成長すればビジョンは見えていきます。しかしその際のポイントが「ビジョンを見ようとし続けること」であり、しっかりと自分で考えていくことです。他者のせいにせず、自分というCEOが自分の人生に責任を果たす時、自分の人生のビジョンは見えてくるしか有りません。

まとめ

人生100年時代となり、75歳まで働くということが私たちの現実になってきました。さらには非正規雇用や、副業の増加など、雇用形態も多様になり「働く」という意味も変わってきています。長寿になって子供が親元を離れてからの時間も長くなり、いつ1人になるかも分からない人生の旅路です。会社のためでも、パートナーのためでも、子供のためでもなく、「自分のため」にどう生きるのかを問われる時代になりました。何も悲観的なことだけではありません。健康長寿の時代が来たということは、学び、創りさえすれば、人生はいつでもやり直せるし、リスタートができるという可能性もあるわけです。これまでのすべてを肯定し、常に自分を新しく創り続けるようになっていくため、今から自分の価値、使命、ビジョンを考え、進んでいくことが必要ではないでしょうか。