役割の理解、職場の秩序、なぜ重要?~組織におけるストーリーと役割~

役割の理解、職場の秩序、なぜ重要?~組織におけるストーリーと役割~

Vol 6 自己理解と役割の認識

シリーズ「ここに神経を使う人が逸材になる」の第6のテーマは、「自己理解と役割の認識」です。自分を理解できる分、他者のこともよく理解できるようになると言います。また、自分の適性、長所短所、能力、実力、個性、才能などを詳しく把握してこそ、組織・社会の中でより有益な貢献ができるようになります。今後、今以上に自分で自分自身のキャリアを開発していく必要があるこの時、より深く自分を知り自分を作るために必要な観点を、数回に亘ってお伝えします。

はじめに

私たちは生活の中で様々な役割を担っています。

職場では一人ひとりが採用され登用された目的があり、期待された役割を果たすことが求められます。

私たちは自らの役割を責任を持って果たしていくことが求められますが、ともすると所属する組織から期待される役割と自分が考える役割にギャップが生まれる場合があります。

自分は「○○のためにこの会社に入社した!」と考えても、組織からは「まずは○○を覚えて、いずれは○○ができるようになったら、組織のバランスを見て希望の役割にアサインを考えよう」と言った具合に、すべて自分が思う通りの役割を最初から担える訳ではなく組織の必要性と適性によって、役割を与えられます。

そのような時、希望が叶わないことを嘆いて、役割を果たす努力をする前に仕事に身が入らなくなってしまう人やすぐに転職を考えてしまう人もいる現実もあります。

「思い通りにならない」状況は組織にいる以上、必ず経験することだと思いますが、「思い通りにならない」からと言って、好き勝手に自分の好きなように仕事をすることは組織である以上、あまり好まれることではないのが現実だと思います。

なぜなら、あなたが採用されたのは「その組織が果たすべき目的を叶えるために、あなたを採用した」という前提があるからです。

どのように経営目標を達成するのか、そのためのシナリオやストーリーに沿って、組織という舞台で各人はどんなパフォーマンスをするのか、組織の側から言えばどんなパフォーマンスを求めるのか―それを明らかにしたのが役割になります。

今回はその役割と組織の目的を達成させるために必要な組織の『秩序』について考えたいと思います。

役割と秩序を『映画製作』で考えてみると

役割と秩序を考える上で『映画の製作』を例に考えてみたいと思います。

演者である役者は台本(ストーリー)を読み込み自分に与えられた『役』を研究します。

役に対して学習しながら、映画のストーリーに沿って目標の通り、映画全体がより良い作品となるため、役を作り、演技をしていきます。

その役は「自分を中心」にしてだけでは考えることができず、『映画の伝えたいこと伝える(目的・結末)』ことを目指し、全体の中で他の役との関係や求められる立場をシナリオに沿って作っていく必要があります。

2人の役者で比較してみましょう。

① 『自分が演じたいと思っている役』を体現することを優先する人
② 『その映画の伝えたいこと伝えるために必要な役』を体現することを優先する人

どちらが優れた役者と言えるでしょうか。

あなたが監督で、伝えたいメッセージがある場合、献身的に役割を果たす②の役者に役を与えたいと思うのではないでしょうか。

映画にはその目的となるストーリーがあり、役者が好き勝手に変えることは許されません。その映画を作製する意図からずれてしまうためです。

そのストーリーを映画化し完成させるために必要なものが組織の場合、「秩序」になります。

秩序とは

秩序の意味を辞書で調べると、「物事を行う場合の正しい順序。また、集団などが、望ましい状態を保つための順序やきまり。」という意味があります。

つまり、先ほどの映画の例えの中で言う、ストーリーに該当します。

組織に所属する以上、その組織が目的を成し遂げるために作られたルールや求められる期待役割から大きく逸れることは映画の例えで考えると、役者が勝手にストーリーを書き換えてしまうことと同じことになってしまいます。

「やりたい」「やりたくない」よりも重要なこと

「やりたい」「やりたくない」で勝手にストーリーを書き換える役者がいたとすると、映画を完成させることができず、結末が別のものになってしまいます。自分勝手な役者は映画の世界では存在できないと言えます。

映画の役者に例えると当たり前のこととして誰しもが理解できるかもしれませんが、社会や組織の中では、「自分の思い込み」でストーリーを自分に合わせて書き換えたがる人が案外多くいます。

① 組織の目的を果たすために作られ、自分に与えられた役割に感謝し、研究しながらストーリーに沿って(秩序を保ち)役割と果たす人
② 組織の目的には興味がなく、自分に与えられた役割に不満を持ち、真摯に仕事に向き合わず、いい加減な仕事しかせず(秩序を無視し)役割を果たさない人

社会や組織から求められるのは明らかに①の人だと言えます。

また、高い可能性として、いずれ「やりたいこと」ができる機会を提供される人も①の人だといえると考えられます。

なぜなら、役割を果たし、秩序を守る過程において与えられた役割を全うするために『実力』が鍛えられ身に付いているからです。

真摯に役に挑戦する役者は見ている観客を感動させ、また別の映画への出演依頼が来ます。

組織に所属する私たちも同じと言えるのではないでしょうか。組織の目的を叶えるために真摯にそのストーリーつまり秩序を守り、役割を果たす人にはより大きなチャンスを任せるだけの信頼と実績が備わってくるからです。

まずは組織の目的を理解し、その秩序を守り、与えられた役割を全うすることがとても大切であり、「やりたいこと」をやれるようになる近道だと考えます。

そのためには最初から「やりたい」「やりたくない」の自らの主観で判断するのではなく、求められる役割を理解し、全うすることが一番大切なことと言えます。

「自分中心」に考えすぎると自分と他者の強みを殺してしまう

人の強みは磨き、鍛えてこそ、より一層強みとして輝きます。

一人で行なうことは限界があり、一定以上のレベルのことを成し遂げようとすると必ず「他者との連携」が必要となります。他者との連携の中で強みは鍛えられていきます。

組織の目的を定め成し遂げるためにはそのためのストーリーがとても重要であり、「自分中心」のメンバーによってストーリーが崩れた時点で目的の実現可能性は低下し、組織のメンバーや自分自身の強みは出し切ることができません。

自分自身とメンバーの強みを最大限引き出すために作られ守るべきものがストーリー、つまり秩序になります。

先の役者の例えの通り、この秩序を壊してしまうものが「自分中心」という考え方になります。

最後に

自分を活かすためには一旦、「やりたい」「やりたくない」といった自分中心の考え方を据え置いてみて、組織の目的を理解する努力をし、秩序を守り、自分に与えられた役割を全うすることを最優先にして実践し続けてみてください。

目的や意味、そのストーリーを理解するには一定の実践が必要になります。理解でき、全うできた時、与えられた役割に対しての感謝やさらに大きな挑戦が見えてきます。あなたの強みはさらに輝くものとなり、「やりたい」ことが向こうから寄ってくるような自分になっているかもしれません。